離婚時の「財産分与」は、婚姻中に二人で築いた財産を公平に分ける重要な手続きです。しかし「何が対象になるのか」「いくらもらえるのか」「相手が財産を隠していたらどうするのか」など、わからないことだらけという方がほとんどです。
このページでは、国内最大手の渉外法律事務所で10年以上経験を積んだ弁護士・松野絵里子が、財産分与の基本から応用まで、実務経験をもとに徹底的に解説します。
Contents
1. 財産分与とは何か?基本の「き」
1-1. 財産分与の定義
財産分与とは、離婚の際に、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産(共有財産)を公平に分け合う手続きです。民法768条に定められた法的権利であり、離婚が成立すれば、原則として誰でも請求することができます。
重要なのは、財産の名義は関係ないという点です。夫名義の預金でも、夫名義の不動産でも、婚姻中に形成された財産であれば、妻にも分与を請求する権利があります。専業主婦・専業主夫であっても、家事や育児による貢献が認められるため、原則として2分の1の財産を受け取ることができます。
1-2. 財産分与の3つの種類
| 種類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 清算的財産分与 | 婚姻中に形成した共有財産の清算。最も一般的。 | 預貯金・不動産・退職金の分割 |
| 扶養的財産分与 | 離婚後の生活が困難な一方を経済的に援助するもの | 収入の少ない配偶者への生活費的な分与 |
| 慰謝料的財産分与 | 有責配偶者(不倫・DVをした側)から精神的損害を補う分与 | 不貞行為があった場合の上乗せ分与 |
💡弁護士からのひとこと
「財産分与」と「慰謝料」は全く別のものです。メディアなどでセレブが多額の慰謝料をもらって離婚したかのように報じられることがありますが、実際には「解決金」という名目で高額な財産分与が支払われているケースがほとんどと思われます。不倫があったような場合でも、被害者側であっても、財産分与は基本的に2分の1ルールで行われなければなりません。慰謝料は不法行為を根拠とするものであり、財産分与とは全く性質が異なります。
2. 財産分与の対象になるもの・ならないもの
2-1. 対象になる財産(共有財産)
- 婚姻中に貯めた預貯金(名義を問わない)
- 婚姻中に購入した不動産・マンション
- 婚姻中に積み立てた退職金(将来分も一定割合で対象)
- 年金(婚姻期間中の厚生年金)→年金分割制度で対応
- 婚姻中に購入した自動車・家財・貴金属
- 婚姻中に増加した株式・投資信託・仮想通貨
- 婚姻中に積み立てた生命保険の解約返戻金
2-2. 対象にならない財産(特有財産)
- 結婚前から持っていた預貯金・不動産
- 婚姻中に相続・贈与で受け取った財産
- 親からの援助・結婚祝い金(ただし使い込んでいると証明困難)
- 婚姻前に取得した株式・積立
💡実務上の注意点
「親からもらったお金だから特有財産であり、財産分与の対象外」と思っていても、それが他の共有財産に混入してしまうと、どの部分が特有財産か証明が難しくなります。親からの援助は通帳を分けて管理したり、それで有価証券を買うなら別の証券口座で売買するとか、頻繁な売買をしないなどして明確に分けるとよいでしょう。
3. 財産分与の計算方法
3-1. 基本は「2分の1ルール」
日本の裁判実務では、共有財産は原則として夫婦それぞれ2分の1ずつ分けるとされています。これは、夫が外で働き、妻が専業主婦として家庭を支えていた場合でも同様です。家事・育児・内助の功による貢献が、外で働くことと同等に評価されているからです。
3-2. 計算の基本式
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① 財産の洗い出し | 夫婦双方の全ての共有財産をリストアップ |
| ② 評価額の確定 | 不動産は不動産鑑定・査定、株式は時価など |
| ③ 負債の控除 | 住宅ローン等の負債を差し引く |
| ④ 2分の1で分割 | 残った純資産を原則2等分 |
3-3. 2分の1ルールの例外
以下のような場合、2分の1ルールが適用されないかもしれません。
- 富裕層・高収入の夫(妻)の場合:一方の特別な才能・努力による財産形成が認められると、2分の1を下回ることも
- 同居をしていない場合:形成された共有財産がないという判断もあり得る
- 財産への寄与が片方においてあまりに少ない場合:非常な浪費家であったような場合、立証次第で半分も分与しないですむことも!
💡 渉外事務所出身弁護士からの視点
富裕層・経営者の離婚では、2分の1ルールを巡る議論が複雑になります。会社の株式、役員報酬、海外資産、信託財産など、一般的な案件とは異なる財産構造への対応が必要です。当事務所では国際的・複合的な財産分与案件を多数手がけてきた経験があります。
4. ケース別:こんなときどうする?
4-1. 不動産・マイホームがある場合
住宅ローンが残っているマイホームは、財産分与の中でも最も複雑なケースのひとつです。不動産の時価評価額からローン残高を差し引いた「純資産」を分与します。住み続ける側がローンを引き継ぐのか、売却して現金を分けるのかを決める必要があります。
- オーバーローン(ローン>時価)の場合:財産分与の対象となる資産はゼロとなる(負債の半分を請求されることはない)
- 売却か、一方が住み続けるか、賃貸に出すかを慎重に検討する必要あり
4-2. 退職金がある場合
退職金は「将来支払われる賃金の後払い」という性質を持つため、婚姻期間中に対応する部分は財産分与の対象となります。すでに受け取っている退職金はもちろん、将来の退職金も一定割合で分与対象になり得ます。
計算式の例:退職金見込み額 × (婚姻期間 ÷ 勤続年数) × 1/2
4-3. 年金分割の場合
厚生年金については、年金分割制度があり、婚姻期間中の夫婦の年金記録を分割することができます。合意分割(双方の合意)と3号分割(専業主婦・主夫が自動的に2分の1を請求できる)の2種類があります。
4-4. 共働きの場合
共働き夫婦でも、財産分与は必要です。それぞれが形成した財産が「共有財産」と「特有財産」のどちらにあたるかを丁寧に整理する必要があります。
4-5. 熟年離婚の場合
婚姻期間が長い熟年離婚では、分与対象の財産が大きくなる傾向があります。退職金・年金・不動産など複数の財産を同時に整理する必要があり、専門家のサポートが特に重要です。
5. 財産分与の手続きの流れ
5-1. 協議(話し合い)
まず夫婦間で話し合い、財産の範囲・評価額・分割方法を決めます。合意できれば「離婚協議書」を作成し、公正証書にすることをお勧めします。
5-2. 調停(家庭裁判所)
協議がまとまらない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申立てます。調停委員を交えた話し合いで解決を目指します。
5-3. 審判・訴訟
調停でも解決しない場合、裁判官が判断を下す「訴訟」に移行します。離婚だけ先にしてある場合には、財産分与調停を申し立てておき、それがまとまらないと審判に移行します。
6. 財産分与の請求期限(時効)
ただし、この改正が適用されるのは2026年4月1日以降に離婚した場合に限られます。2026年3月31日以前に離婚している場合は、従来通り
2年以内
財産分与の請求には期間制限があります。2026年4月1日施行の改正民法により、離婚が成立した日から家庭裁判所に協議に代わる処分を請求できる期間が、従来の2年から5年に延長されました(改正民法768条2項)。という期間制限が適用されます。
いずれにせよ、「財産分与は後でいい」と放置していると請求できなくなりますので、早めに動くことが重要です。また、期間内に調停を申し立てれば、その後話し合いが長引いて期間を超過しても問題ありません。
⚠️ 注意:
2026年4月1日以降に離婚した場合、期間内(5年以内)に家庭裁判所へ調停を申し立てることが重要です。2026年3月31日以前に離婚している場合は従来通り2年以内の申立てが必要です。「離婚を急ぎたい」場合でも、財産分与についての取り決めは必ず離婚前・離婚と同時に行うことを強くお勧めします。
7. 財産分与と税金
財産分与を受け取った場合、原則として贈与税はかかりません。ただし、財産分与として受け取った不動産を後日売却する場合は譲渡所得税の問題が生じることがあります。また、分与する側(渡す側)には、不動産の含み益に対して譲渡所得税が課税される場合があります。
8. 弁護士に依頼するメリットと費用
8-1. 弁護士に依頼すべき理由
- 財産の隠匿を防ぐ・発見できる:弁護士を通じた照会・調査で、相手が隠している財産を明らかにできることがある
- 適正な評価額で交渉できる:不動産・株式・退職金など複雑な財産を適切に評価・主張できる
- 精神的負担を軽減できる:感情的になりがちな相手との交渉を代理してもらえる
- 見落としを防げる:財産分与の落とし穴(時効・課税・公正証書化)を弁護士がフォローしてくれる
8-2. 当事務所の弁護士費用(目安)
当事務所では、費用の透明性を大切にしています。財産分与案件の費用目安は以下の通りです(詳細は報酬規程ページまたは離婚相談費用ページをご確認ください)。
| サービス | 内容 |
|---|---|
| 初回相談 | オンライン無料相談(全国対応) |
| 協議代理 | 財産分与交渉の代理・離婚協議書作成サポート |
| 調停・審判 | 家庭裁判所での手続きを全面サポート |
📞 財産分与について無料でご相談ください
オンライン対応・全国対応|渉外法律事務所出身の弁護士が直接対応
「自分の場合はいくらもらえる?」「相手が財産を隠しているかも」
そんなご不安も、まずはお気軽にご相談ください。
9. よくある質問(FAQ)
はい、もらえます。専業主婦・専業主夫であっても、家事・育児による貢献が認められるため、原則として共有財産の2分の1を請求できます。
弁護士に依頼することで、弁護士照会や調停手続きを通じて財産の開示を求めることが可能です。また、調停・審判では裁判所が財産開示を命じることもできます。早めに弁護士に相談することをお勧めします。
できますが、離婚成立から2年以内に限ります。2年を過ぎると原則として請求できなくなりますので、早めに動くことが重要です。
婚姻期間が短い場合、共有財産の形成期間も短いため、分与対象の財産は少なくなります。ただし、婚姻中に形成した財産については当然請求する権利があります。
離婚が成立することが財産分与の前提となります。ただし、離婚訴訟の中で財産分与を同時に求めることができます。
国際離婚・国際的な財産分与は準拠法(どの国の法律が適用されるか)の問題が生じる複雑なケースです。当事務所は国際案件の経験が豊富ですので、お気軽にご相談ください。























































