離婚

財産分与が難問になる会社経営者の離婚。弁護士で解決。


会社経営者の離婚においては、個人と会社の資産の線引きが明確でなければないと、財産分与ではトラブルが起こりやすいものです。また、不動産や動産、預金のみではなく、有価証券や退職金なども分与の対象となるため、弁護士に早く相談して泥沼にならないうちに、適切な財産分与を行いたいものです。

1 会社経営者の離婚で発生する問題とは?


会社経営者は日々の仕事が忙しく、24時間体制で仕事をする人が多く、交友関係が広いので、そうした社交も大切にしなければならず、家族と過ごす時間を確保しにくくなることもおおいようですね。そうしたライフスタイルが原因となり、仕事の重圧が理解されない孤独や親族などの介入などで、最終的に夫婦関係が終焉してしまうケースも多いようです。

 

1-1 どんな問題が起こりやすいのか?

会社経営者は、一般的なサラリーマン家庭と比較すると収入が多く、多種の資産を所有しているケースが多いですので、財産分与・慰謝料といったお金がらみのトラブルが起こりやすいといえます。

  

子供がいる場合には、親権の問題や養育費に関する問題も深刻になります。

  

中でも特に財産分与では複雑な問題が多く、どこまでを夫婦共有の財産といえるのか、相続した事業である場合には特に、線引きが難しいという問題があるので、注意が必要です。

  

1-2 会社経営社の財産分与は、必ずしも半分を分与とはなりません。

会社経営者の離婚では、財産分与に関して夫婦で合意できないので、離婚訴訟になるケースが少なくありません。多くの場合、少なくとも、調停は必要になります。

  

夫婦が離婚する時の財産分与は、基本的には「2分の1ルール」が適用されます。これは、夫婦の財産は夫婦が協力して財産を築いたのだから、財産分与は平等に半分ずつ、1:1にするべきだという考え方に基づいています。サラリーマンの場合には、ほとんどがこのルールで財産分与はなされています。

  

しかし、会社経営者の場合には、経営者ではない配偶者が会社財産の増加・形成や維持にどのぐらい寄与したのかという点も、考慮されます。そのため、2分の1ルールが適用されないケースは珍しくないのです。

  

裁判においては、婚姻関係がどのような原因で破綻したのか、原因はどちらにあるのかという点は剤再分与では、しかし考慮はされません。また、子供がいる場合には子に関する費用は養育費においてのみ配慮されます。

  

過去の裁判では、会社を上場させた会社経営者である夫とその妻の財産分与が95:5となったケースもあります。上場による収入について、妻の関与や協力関係を吟味した結果です。もっとも、このような例はまれです。

  

1-3 どんな要素が影響する?

裁判においては、経営者の資産が大きい場合、婚姻前からその事業を営んでいたのか、個人の能力や才覚がどのように寄与したのか、夫婦の協力関係がどのようなものであったのかが、財産分与の割合決定に大きく影響します。

  

例えば、高額所得の医師や会社経営者の本人の資格・能力や才覚によって、会社を大きく成長させたり、財産が大きく増えたと考えられる場合には、訴訟で財産分与が1:1となる可能性は低くなります。

  

一方、経営者ではない配偶者も会社の経営に貢献したと見られる場合には、1:1の割合に近い分与率となる可能性も大いにあります。

  

また、株の増資時期とかその原資というような情報も、意味があることがあります。保有する株が譲渡制限があり、市場に売り出せないというようなことも重要な情報です。

  

2 会社経営者の財産分与について

会社経営者の場合、個人が所有している資産と、会社名義で所有している資産とに分けられます。会社そのものは親から相続しているような場合、会社名義での資産も会社の株式も、離婚の際には財産分与の対象にはならないものです。

  

会社の設立が、婚姻した後であれば、会社の株式は財産分与の対象ですが、会社の名義となっている不動産を含めた資産は、法律的には会社に帰属すると考えられて分与の対象ではありません。。

  

2-1 個人事業主や中小企業は注意が必要

個人名義の資産と会社名義の資産が明確に線引きされている場合、会社名義の資産管理を会社の従業員が行っている場合には、離婚で会社名義の資産が財産分与の対象となる可能性は低いといえましょう。

  

しかし、個人事業主や中小企業の場合には、個人所有の資産と会社の資産の線引きが明確ではないケースもあるでしょう。その場合には、実質的に夫婦の共有財産だと見なされ、財産分与の対象となることもあります。

  

3 注意が必要な資産は?

個人名義と会社名義の資産とで線引きがとかく不明瞭となりやすく、会社名義でも夫婦共有の個人財産と見なされる資産にはどんなものがあるのでしょうか?

  

3-1 動産

財産分与で揉めやすい資産の一つに、動産があります。自動車や貴金属、時計や骨とう品などが挙げられるでしょう。これらの動産に関しては、婚姻期間中に購入したものかどうか、それとも結婚前から経営者が保有していたものかどうかという点が吟味されますが、それ以外に、どの資金を使って購入したかという点も判断材料となります。

  

例えば、婚姻期間中に夫婦共同名義の預貯金から購入した車や絵画というような動産に関しては、夫婦共有財産と見なされ、財産分与の対象となります。

  

動産は、預貯金のように明確に価値が数字で客観的に示されているわけではありません。そのため、財産分与する際には、時価額がいくらになるのかを第三者に鑑定してもらった上で分与する作業が必要となります。

  

3-2 有価証券(経営する会社の株など)

有価証券もまた、婚姻中に取得したものは夫婦共有の財産となり、離婚の際には財産分与の対象となります。

  

よって、経営する会社の株が分与の対象になるのです。会社の株を半分妻に渡すようなことになったら大変だということはあるでしょうから、会社経営者が離婚する場合、弁護士に早く相談をする必要があります。会社の株式を分与せずに、不動産を分与するとか、会社の報酬から今後分割して払っていくなどの工夫が可能です。

  

株式など有価証券に関しては、夫名義のものと妻名義のものとがあるのが通常で、どちらが経営者でも、経営者名義であろうと、その配偶者名義であろうと、購入したのが婚姻後なら、財産分与の対象となるので注意が必要です。

  

有価証券には、株式や国債などが含まれます。非上場企業の株式を保有している場合には、市場で取引されていないため、評価額の判断が難しいかもしれません。評価額の計算方法はいくつかあり、どのメソッドを採用するかによって価額が変わります。そのため、採用するメソッドをめぐって合意ができないということは少なくありません。

  

経営する会社の株式を財産分与して配偶者に渡してしまう場合、持ち株比率が3分の1以上になった場合、株式総会の特別決議を阻止できる権利が配偶者に発生してしまいます。他の経営者が株をもっているような場合には、譲渡の承認が必要になってきますので、簡単に分与はできません。このように、経営する会社の株を持っている場合には、経営に悪影響がないような工夫が必要なのです。

  

そうした点を踏まえ、有価証券が財産分与の対象となっている場合には、評価額に相当する現金や別の不動産とか動産を分与するという方法が一般的です。訴訟では、経営する会社の株式を分与することがないような方向で現金払いの判決がでるのが通常です。

  

もっとも、その場合でも現金の用意が困難であることが多いので、なるべく和解的解決をして分割で払うなどの工夫をするのがよく、経験値の高い弁護士に相談しましょう。

  

なお、有価証券には、所有しているゴルフ会員権も含まれます。会社経営者の場合、趣味や付き合いでゴルフ会員権を持っているケースが少なくありませんが、ビジネス目的で購入した会員権でも、ゴルフは個人の趣味だと見なされるため、離婚の財産分与対象資産となります。

  

3-3 退職金

退職金は、婚姻期間中に受け取った場合だけでなく、将来支給が予定されているものに関しても、財産分与の対象となります。会社経営者の場合には退職慰労金が支給される可能性があり、これは一般的なサラリーマンにとっての退職金と同等の位置づけです。多くの場合には、会社が長期平準定期保険や逓増定期保険などに加入しており、この解約払戻金を使って会社経営者の退職金に当てるケースがあります。こうした資金も、離婚の際には財産分与の対象となる点を理解しておきましょう。

  

別居時の解約返戻金が分与の対象となるのが、通常です。

  

3-4 自宅はどうなる?

夫婦が婚姻期間中に生活していた自宅は共有財産と見なされるため、財産分与の対象となります。その他、会社経営者が個人名義で所有していたマンションやアパートなどの不動産も、名義が経営者個人で婚姻期間中に購入した物件なら共同財産となります。そのためのローンはマイナス資産として控除されますが、含み益がある場合、その含み益のある価格が基礎になります。

  

3-5 その他にはどんな共有財産がある?

財産分与の対象となる資産には他に、預貯金や保険などが挙げられます。預貯金に関しては、洗い出しやすく、客観的な数値で評価できるため、それほど揉めることはないでしょう。保険に関しては、生命保険や学資保険のように貯蓄タイプのものは資産と見なされて、別居時の解約判返戻金の額が財産分与の対象となります。

  

4 会社経営者の慰謝料はどのように決定される?

会社経営者だからといって、離婚の際に発生する慰謝料が高額になったり、割高になったりするわけではありません。配偶者との社会的地位や経済的な格差が慰謝料の決定に影響を与えることはあるものの、経営者だからこのぐらい払えるだろうといった判断をされることはありません。

  

慰謝料を含めた金銭的な不合意で離婚裁判となった場合には、裁判所が複数の要素を客観的に判断した上で、慰謝料が払われるべきか、どのぐらいの慰謝料が妥当かを決定します。考慮される要素には、婚姻期間の長さや子供の有無、また不法行為があったかどうか、その回数や程度など、それによって相手がどのぐらいの精神的苦痛を強いられたかといった、多方向から判断されます。

  

もしも婚姻期間が長くて子供も複数おり、婚姻が破綻した原因が会社経営者側の度重なる不貞行為や不法行為にあるとすれば、慰謝料はある程度高額になる可能性が高いでしょう。しかし、婚姻期間が短く、子供もおらず、経営者ではない配偶者の不法行為が原因で離婚となった場合には、慰謝料金額はゼロになるかと思われます。

  

5 親権と養育費はどう決まる?

会社経営者の離婚で子供がいる場合には、養育費の計算でもトラブルが起こりやすいものです。

  

5-1 親権は母親が有利

親権に関しては、母親が親権を希望すれば、母親が主に子育てをしてきたのであれば母が有利ですが、法改正によって離婚後の共同親権も可能となる予定ですので、今後は、いろいろな選択ができるようになっております。

  

また、親権は離婚時にどの親と住んでいるのかが、判決による場合には、重要です。ですので、子供が幼い場合であっても、離婚時に一緒に住んでいる親は親権決定には有利です。

  

ですから、父親が親権を獲得できないというわけではありません。

  

しかし、そもそも、親が子を奪い合うことそのものを回避するのがベストです。離婚の話し合いの初期であればそういった子供の問題を冷静に話し合うことも可能ですので、共同養育の可能性を含めてそういうことに経験と理解のある弁護士にそうだんをすることをおすすめします。当事務所では、国際離婚の方々や共働きであった方々、なるべく子供に悪影響を与えたくない方のご希望で、別居中や離婚後の共同養育のアレンジをしておりますので、ご興味があればご連絡ください。

  

裁判所に判断をゆだねる場合、家庭の事情やライフスタイルなども含めて、父親と母親とでどちらが子どもと暮らす親権者としてふさわしいかを、家庭裁判所の調査を経て判断してもらうこととなります。

  

これまでどちらがより多く子供の世話をしてきたのか、子供と一緒に暮らして面倒をみてきたのはどちらか、子どもとの関係性、子の意向、離婚後に子供が置かれる生活環境など、子供にとってより良い環境を提供できるのはどちらかという点が、総合的に吟味されます。ちなみに、その判断基準の一つに経済力も含まれています。

  

経済力を持たない配偶者が親権を獲得できる場合、育児にかかる費用を養育費で賄うことが前提となっているケースは少なくありません。経済力のある会社経営者が必ずしも親権を獲得できないのは、そうした理由があるのです。

  

5-2. 養育費はどのようにして決まる?

養育費とは、離婚して子供と一緒に暮らさない親が、子供の面倒を見ている親に対して支払う育児費用を指します。具体的な金額は、養育費算定表を基準に計算されることが多いです。

  

どんな要素が養育費の算定に影響するかというと、例えば子供の年齢や人数、そして両親それぞれの年収が大きくかかわります。養育費算定表では、この基準に基づいて、どのぐらいの養育費が相場かを数値化したものですが、収入が多い高額所得者の場合には、必ずしもこの算定表だけで金額が決まるわけではありません。収入が年収2000万円を超える場合、5000万円程度まではそのまま算定表の計算方法が使われることが多いものの、現実の生活レベルも加味される傾向があります。

  

高収入の場合の婚姻費用や養育費は、弁護士の立証活動にも影響されるので、弁護士に相談されることが大切です。

  

5-3  養育費はどこまでの範囲?

養育費とは、ざっくり言えば育児にかかる費用のことですが、どこからどこまでが必要な費用と見なされるのかという線引きに関しては、世帯ごと、もしくは個人ごとに考え方が違うでしょう。

  

裁判所における養育費の算定では、基本的には子供にかかる教育費や食費、医療費、そして被服費などが養育費に含まれます。このうち、教育費は公立の学校に通学することを前提としています。それ以外の特別の費用(バレエレッスン、習い事代、塾費用等)は特別費用として年収に応じた上乗せがされるのが通常です。もっとも、父母が合意していない高額習い事などは養育費で加味されないこともあります。

   

6 夫婦で会社の役員になっている場合にはどうする?

個人事業主や小規模な企業の場合には、夫婦がそろって会社の役員となっているケースが少なくありません。もしも会社経営者の配偶者が、配偶者という理由だけで役員になった場合でも、離婚したからという理由だけで解任したり解雇したりはできません。この点は、注意が必要です。夫婦の離婚という個人的な手続きと、会社役員の解任や解雇は、まったく性質が異なります。もしも離婚によって、配偶者を会社役員から解任もしくは解雇するなら、法的な手続きを踏まなければいけません。弁護士を介して合意で退職をしてもらうなどする必要があります。

  

最も困るケースは会社の株を50%ずつ持っているケースです。たとえば、あなたが代表取締役でも、株主総会の決議事項では配偶者が拒否権を持ってしまっています。

  

6-1  どんな法的手続きが必要?

配偶者が会社役員の場合には、選択死は三つあります。

  

1) 役員任期が満了するのを待つ、2)株式総会を開催して解任決議を行う、3)配偶者に辞任届を提出してもらう。
  
3つの選択肢のどれにするかは、弁護士に相談して手続きを進めるべきでしょう;・?ん被弁護?氏にが挙げられます。離婚という個人の都合を会社経営と混同したくない場合には、辞任届を提出するという方法が最もスムーズで最短と言えるかもしれません。

  

配偶者が会社役員ではなく、従業員の場合でも、離婚したという理由で解雇することはできません。社長が妻(夫)を解雇してしまっている事案を散見しますが、労働紛争になりえます。

  

この場合は、よく話し合った上で退職届を提出してもらうのがスムーズでしょうが、弁護士の介在が必要でしょう。その際には、会社の規定にのっとった退職金を支払う必要があります。

  

なお、配偶者の退職に伴う退職金の支払いは、個人の離婚による財産分与や慰謝料とは別のものです。あくまでも、会社を退職することに対して、会社が支払う費用です。

  

7 離婚における財産分与トラブルを防ぐことは可能?

会社経営者の場合、高額所得者であることが多く、保有している資産が一般的なサラリーマン世帯と比較して多く、評価額も高いものです。そのため、婚姻生活が離婚という結末を迎えると、財産分与に関しては考えるべきことが多く、事件は複雑になりやすいです。

  

長引かせず、可能な限り円滑に離婚にするには、どんな工夫や対策をすれば良いのでしょうか?

  

7-1  専門性のある弁護士に相談

会社経営者の離婚は、個人と会社とで資産の線引きが難しかったり、慰謝料や養育費、また財産分与の相場を知らずに必要以上に配偶者へ支払おうとしたり、逆に受け取るべき金額よりもずっと低い金額しか分与してもらっていなかったり、というような事案が少なくありません。

  

自身が会社経営者の立場でも、配偶者の立場でも、離婚する際には必ず法律のプロである弁護士に相談しましょう。

  

適切な財産分与で、自身にとっても相手にとっても公平な分与をするためのアドバイスがもらえます。

  

7-2  財産隠しは犯罪

会社経営者の個人名義の資産は、婚姻期間中に取得したものなら大半は財産分与の対象となってしまいます。経営者の中には、配偶者に財産を分与したくないという気持ちから、資産の名義を会社名義に変更するケースがあります。しかし、離婚のために財産の名義を会社へ変更することは、詐欺罪や窃盗罪という犯罪となる可能性があるだけでなく、配偶者から損害賠償請求を受ける可能性もあります。

  

ちなみに、刑法には親族相盗例という特例が設けられおり、窃盗や詐欺は親族間においては免除されるという特別なルールです。つまり、財産隠しをしても、被害者が親族なら刑罰に処されることはありません。

  

しかし、刑法では免除になっても、離婚訴訟上はそういうわけにはいきません。財産隠しをしても、名義変更の日付を見ればすぐにわかりますし、そうなれば配偶者との離婚は高葛藤から手続きが長引きます。

  

7-3  自社株の財産分与を、拒否することはできる?

会社経営者の財産分与の中でも、全力で阻止したいのは自社株の移行ではないでしょうか。上記の通り、財産分与によって自社株を一定数配偶者に分与してしまうと、その後の会社経営に関して、離婚後に相手が大きな影響力を持ってしまうことが懸念されます。

  

よって、自社株が共有財産であるのかについては、最大の注意を払って戦うべきですし、分与では金銭で交付する方向で調整が必要です。

  

8. 会社経営者の離婚の場合の注意

会社経営者の離婚では、個人資産と会社の資産の線引きが難しいために離婚事件が複雑になります。

  

財産を分与する際には、ただ分与するだけでなく会社の将来や経営に与える影響も考えたうえで、何をどのように分与するかを決めたいものですし、不安な場合には、早く弁護士へ相談することをおすすめします。