遺留分

遺留分侵害額を請求しても支払われないときの対処法

内容証明郵便を送ったのに、返事がない。話し合いには応じるが、いつまでも支払われない。遺留分侵害額請求では、よくある場面です。放っておいても解決しませんが、打てる手はあります。相手の状況の見極め方から、実際に取れる方法まで説明します。

1. まず、相手の状況を見極めます

支払われない理由は、大きく2つに分かれます。どちらなのかによって、取るべき方法が変わります。

払えない場合 不動産は受け継いだものの、手元に現金がないという状況です。この場合は、分割での支払いや、不動産を売却して支払う方法を話し合うことになります。時間をかければ解決に向かいます。

払いたくない場合 資力はあるのに支払わない。遺言で全部を託された側は、自分にすべての権利があると思っていることが多く、他の兄弟に支払う理由が理解できません。悪意というより、前提が違うのです。

後者の場合、交渉や調停をいくら重ねても、相手の前提は変わりません。早い段階で見切りをつけて、訴訟に移るほうが結果的に早く解決します。

相手が不動産を受け継いでいるか、それを売ることができるか。この見通しが、進め方を決めます。

2. 待たされた分は、遅延損害金として加算されます

支払われないまま時間が過ぎることを、不利益とだけ考える必要はありません。

遺留分侵害額請求をすると、金銭の支払を求める債権が発生します。この債権には支払期限の定めがありませんので、金額を示して支払を求めた時から、遅延損害金が発生します。

つまり、相手が支払いを拒んで長引かせた期間の分は、後から上乗せして請求できます。訴訟では、遺留分侵害額とあわせて遅延損害金の支払も求め、判決で認められます。

ここで注意点があります。1年の期間を確保するための請求と、遅延損害金を発生させる請求は別のものです。前者は金額を示す必要がありませんが、後者は金額を示して支払を求める必要があります。

金額を示さないまま交渉を続けていると、その間の遅延損害金は積み上がりません。財産の全体が固まっていなくても、分かっている範囲で概算の金額を示して請求しておくことが大切です。正確な金額は、その後の交渉で詰めれば足ります。

3. 相手が財産を処分しそうなときは、仮差押えを検討します

訴訟で請求が認められても、そのときに相手の手元に財産がなければ、支払いを受けられません。

相手が不動産を売却しようとしている、預貯金を移そうとしている。そうした動きがある場合には、訴訟を起こす前に仮差押えという手続を取ることができます。相手の不動産や預貯金を、仮に押さえておく手続です。

担保を立てる必要があり、申立てには判断を要しますが、これを打つかどうかで、最終的に回収できるかが変わることがあります。相手に財産を動かす気配があるときは、早めにご相談ください。

4. 手続の進め方

分割払いの交渉

相手に資力がなく、一括での支払いが難しい場合には、分割での支払いを話し合うことがあります。この場合、合意の内容を調停調書や公正証書などの形に残しておくと、支払いが止まったときに強制執行ができます。口約束では意味がありません。

なお、相手方から裁判所に対し、支払について期限の猶予を求めることが認められています(民法1047条5項)。相手がこの主張をしてくることもあります。

家庭裁判所の調停

話し合いで進まない場合、家庭裁判所に遺留分侵害額の請求調停を申し立てます。

調停には、交渉にはない利点があります。裁判所から求められる形になるため、相手方から資料が出てきます。財産の内容が分からないまま止まっている事案では、これが大きく効きます。

また、裁判官と調停委員が間に入ることで、根拠のない主張は整理されます。当事者だけで話し合うより、早く解決することが多くあります。

訴訟

調停でも合意ができなければ、訴訟を提起します。不動産の評価が争点であれば、裁判所の手続の中で不動産鑑定士による鑑定を行うことになります。

判決まで行くとは限らず、鑑定の結果が出た段階で和解が成立することも多くあります。

強制執行

判決や調停調書があるにもかかわらず支払われない場合には、相手方の預貯金、不動産、給与などを差し押さえることができます。

5. 避けたいのは、時間だけが過ぎることです

支払われない状況で最も避けたいのは、話し合いが進まないまま何年も経つことです。

相手が支払う意思を見せないのであれば、期日を重ねても結論は動きません。どこまでなら受け入れるか、これを超えるなら訴訟に移るかという線を決めて、相手方に明確に伝えることが必要です。

この線を引けるのは、判決になったときの結論が見通せるからです。見通しがないまま交渉を続けると、時間だけが過ぎていきます。

6. ご相談ください

当事務所では、遺留分侵害額を請求した後、支払いが滞っている案件のご相談もお受けしています。

  • 内容証明郵便を送ったが返事がない
  • 話し合いには応じるが、いつまでも支払われない
  • 相手が不動産を売却しそうで心配
  • 金額を示さないまま交渉が長引いている

こうした状況では、次にどの手続に進むかの判断が結果を左右します。無料相談を行っており、夜間のオンライン相談にも対応しています。

遺留分の事件では、着手金はご依頼をお受けするときに、報酬金は解決して金銭をお受け取りになった後にお支払いいただきます。相手方から回収して初めて支払の原資ができるという事件ですので、費用の立て方についても、ご相談の際にあわせてご説明しています。
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作成者: 弁護士 松野 絵里子

📝 監修者(最終更新日:2026年10月)

松野絵里子 弁護士|東京ジェイ法律事務所
国内最大手の渉外法律事務所にて20年以上経験を積み、離婚・財産分与・国際離婚・富裕層の資産分割など複雑案件を多数手がける。現在はオンライン対応・全国対応で離婚専門の法律相談を提供。費用の透明性にもこだわり、複雑な財産分与事案の和解的解決も得意な弁護士。共同親権の推進でも経験が多く、知名度がある。

記事監修者: 弁護士 松野 絵里子

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