カリフォルニア州の「養育計画」とは?州裁判所の公式書式から見る共同親権下の取り決め

監修:弁護士 松野絵里子(東京ジェイ法律事務所)/ 最終更新:2026年9月29日

1. はじめに

2026年4月1日、日本でも離婚後の共同親権が選べるようになりました。ただ、共同親権を選んだ後、子に関することを具体的にどう決めていくのかについては、日本にはまだ定まった型がありません。

一方、離婚後の共同養育が長く行われてきた国では、父母が取り決めるべき事項が制度として整理されています。中でもアメリカのカリフォルニア州は、州の司法評議会が公式の書式を用意し、裁判所の自助サイトで作成の手引きを公開しています。

この記事では、カリフォルニア州の裁判所が公開している資料をもとに、同州で「養育計画(parenting plan)」と呼ばれるものが何を定めているのかを紹介します。日本の制度とは前提が異なりますので、そのまま持ち込めるものではありませんが、何を決めておくべきかを考えるうえで参考になる点が多くあります。

2. 前提となる用語

カリフォルニア州では、日本の「親権」にあたるものが2つに分かれています。

  • legal custody(法的監護):子の健康、教育、福祉に関する重要な決定を行う権限です。日本の親権のうち、重要事項の決定に関する部分に近いものです。父母が共同で持つ場合(joint legal custody)と、一方が持つ場合(sole legal custody)があります。
  • physical custody(身上監護):子と生活を共にし、日常の世話をすることです。日本の監護権に近い概念です。

この2つは別々に定められます。共同法的監護としながら、子と主に暮らすのは一方の親、という組み合わせが一般的です。日本の改正民法が、親権者の定め(819条)と監護者の定め(766条・824条の3)を分けて規定しているのと、構造は似ています。

なお、同州では従来「visitation(面会)」と呼ばれていたものが、近年の書式では「parenting time(養育時間)」と併記されています。日本の改正民法が「面会交流」を「親子交流」に改めたのと、同じ方向の変化です。

3. 離婚手続の流れと、養育計画が決まるタイミング

カリフォルニア州には、日本の協議離婚にあたる制度がありません。離婚するには必ず裁判所に申し立てる必要があり、裁判官が判決に署名するまで婚姻は終了しません。しかも、相手方に書類が送達された日から6か月が経過しなければ、離婚を成立させることができません(カリフォルニア州家族法2339条)。合意ができていても短縮はされません。

州裁判所の自助ガイドは、この手続を4つの段階に分けて説明しています。

第1段階 申立てと応答

一方の配偶者が、申立書(FL-100)と呼出状(FL-110)を裁判所に提出します。未成年の子がいる場合は、子の居住歴などを記載した宣誓書(FL-105)もあわせて提出します。これらを相手方に送達し、送達されたことを裁判所に届け出ます。相手方は30日以内に答弁書(FL-120)を提出できます。

第2段階 財産情報の開示

双方が、収入、資産、負債の一覧を相手方に開示します。開示書類そのものは裁判所には提出せず、当事者間で交換し、「開示しました」という届出(FL-141)だけを裁判所に出します。この開示を済ませなければ、離婚を成立させることはできません。

第3段階 取り決めをする

ここで、子の監護と養育時間、養育費、配偶者の扶養、財産の分け方を決めます。養育計画が作られるのは、この段階です。

父母が合意できれば、その内容を書面にします。合意できない場合は、裁判所に命令を求める申立て(FL-300)をします。監護や養育時間に争いがあるときは、裁判官が判断する前に、必ず調停または児童監護勧告カウンセリングに付されます(同州家族法3170条)。そこで合意できれば、その内容が裁判所の命令になります。合意できなければ、裁判官が判断します。

なお、手続の途中で、離婚が成立するまでの間の監護や養育時間を暫定的に定めてもらうこともできます。6か月以上かかる手続ですので、その間の子の生活を宙ぶらりんにしないための仕組みです。

第4段階 離婚の確定

すべての事項が決まったら、判決書(FL-180)に必要な添付書式をつけて裁判所に提出します。子の監護と養育時間について定めた FL-341 は、この判決書の添付書式のひとつです。 裁判官が署名し、裁判所が処理すると、判決の登録の通知(FL-190)が双方に送られます。

つまり、養育計画は離婚成立の前段階で作られ、離婚の判決に添付されて裁判所の命令になります。取り決めの内容を誰も確認しないまま離婚が成立する、ということが起こらない仕組みです。

4. 養育計画は、まず父母が作るものとされている

カリフォルニア州では、監護や養育時間について父母の間で争いがある場合、裁判官が判断する前に、必ず調停(mediation)または児童監護勧告カウンセリング(child custody recommending counseling)に付されます。カリフォルニア州家族法3170条が定めるもので、どの郡でも必ず通る手続です。

裁判所の自助サイトでは、この手続に進む前に父母が自分たちで養育計画を作ることが推奨されており、そのための資料が公開されています。

  • 各郡の上位裁判所が公開する作成の手引き(たとえばロサンゼルス郡上位裁判所の「Creating a parenting plan」)
  • 州が運営するオンライン講座「Families Change」(親向け、子ども向け、ティーン向けの3種類があります)
  • 調停の進み方や準備を説明した情報シート(FL-313-INFO、FL-314-INFO)と、30分の解説動画

父母が合意に至れば、その内容を裁判官が確認し、承認すれば裁判所の命令となります。合意できなければ、裁判官が判断します。

弁護士 松野絵里子のコメント

注目したいのは、裁判所自身が「父母が自分たちで作ること」を前提に資料を用意して親をサポートしている点です。また、オンライン講座が子どものための者もあることです。日本では、養育計画という言葉自体がまだ一般的ではなく、調停の場で初めて「では面会交流(親子交流)はどうしますか」と問われることが少なくありません。また、親子交流もカリフォルニアのように毎週のように宿泊するような頻度のものがまだ一般的ではありません。改正民法の下では、離婚の時点で具体的な取り決めをしておくべきであるという条項が新設されているので、今後は子供が親の別離と共に別居親と会えなくなるということが少なくなることを、期待したいです。

5. 公式書式 FL-341 とその付属書式

カリフォルニア州司法評議会は、監護と養育時間に関する命令の書式として FL-341「Child Custody and Visitation (Parenting Time) Order Attachment」を定めています。これが本体で、必要に応じて次の付属書式を添付します。

  • FL-341 本体:法的監護・身上監護をどちらに(または双方に)与えるか、養育時間のスケジュール、休暇、受け渡しなど
  • FL-341(A) 監督付きの交流と受け渡しに関する命令
  • FL-341(B) 子の連れ去り防止に関する命令
  • FL-341(C) 祝日のスケジュール
  • FL-341(D) 身上監護に関する追加条項
  • FL-341(E) 共同法的監護に関する条項

必要な条項だけを選んで組み合わせる設計になっており、すべての家庭に同じ書式を書かせる作りにはなっていません。父母の関係や子の状況によって、必要な取り決めが違うという前提に立っています。

6. 共同で決めることを、どこまで具体的に書くか(FL-341(E))

共同親権の運用を考えるうえで最も参考になるのが、共同法的監護の付属書式 FL-341(E) です。根拠条文は同州家族法3003条、3025条、3083条とされています。

この書式は、共同法的監護であっても、原則として各親は単独で行動できるという注意書きから始まります。そのうえで、「相手方の同意が必要な事項」と「同意を得なかった場合の効果」を裁判所の命令として定めたい場合に、この書式を使うと説明されています。

双方の同意が必要な事項

書式には、次の事項がチェックボックスとして並んでいます。父母は、このうち必要なものを選びます。

  • 特定の公立・私立学校や保育施設への入学、またはそこからの転出
  • 州外・国外への渡航
  • 課外活動への参加
  • 精神科・心理カウンセリング等の開始または終了
  • 医師、歯科医その他の医療専門職の選択(緊急の場合を除く)
  • 特定の宗教活動・宗教団体への参加
  • その他(自由記載)

日本の改正民法824条の2が想定する「共同で決める事項」と、かなり重なります。とくに、進学、渡航、医療、宗教が並んでいる点は共通しています。

同意を得ずに決めた場合の効果

この書式の特徴は、同意を得なかった場合どうなるかまで書かせるところです。

  • 民事上または刑事上の制裁を受ける可能性があること
  • 裁判所が法的監護・身上監護の定めを変更しうること
  • その他(自由記載)

特定の事項について一方に決定権を与える

父母の一方に、特定の事項についての決定権を与える定め方も用意されています。すべてを共同で決めるのではなく、争いになりやすい分野だけ決定権者をあらかじめ決めておく、という考え方です。

日本の改正民法824条の2第3項も、特定の事項について家庭裁判所が父母の一方を親権行使者と定める手続を新設しました。発想としては近いものですが、カリフォルニア州では父母の合意の段階でこれを定めておける点が異なります。

医療に関する通知

  • 各親は、子を診察・治療した医療者の氏名と所在地を相手方に通知しなければならない。通知は初回の診察・治療から何日以内か、日数を記入する欄があります
  • 各親は、緊急手術や緊急治療への同意を含め、子の健康と福祉を守るために必要な一切の行為をする権限を持つ。ただし、緊急の処置をした親は、できる限り速やかに相手方に状況と処置の内容を通知しなければならない
  • 処方された薬を子に与えること

学校・記録・氏名

  • 学校が緊急時に連絡する相手として、父母の双方を登録すること
  • 監護している親もしていない親も、子の医療、歯科、学校の記録にアクセスし、子にサービスを提供している専門職と相談する権利を持つこと
  • 相手方の書面による同意なく、子の姓を変更したり、医療・学校その他の記録で別の氏名を使わせたりしないこと

弁護士 松野絵里子のコメント

日本のひな形でここまで書かれているものは、ないでしょう。とくに「初回の受診から何日以内に相手に知らせるか」を日数で決めておく発想や、「同意を得ずに決めた場合にどうなるか」をあらかじめ書いておく発想は、日本でも取り入れる価値があるでしょう。共同親権で揉めるのは、多くの場合、離婚してからのトラブルで「相手が勝手に決めた」「知らされなかった」という点だからです。先にルールがある場合、トラブルは減らせます。

7. 安全への配慮が組み込まれている

カリフォルニア州の資料は、父母の協力を前提としつつ、安全面の懸念がある場合の手当ても用意しています。裁判所の自助サイトには、第三者の立会いのもとでのみ交流を行う監督付き交流、裁判所が専門家に調査を命じる監護評価(child custody evaluation)、家庭内暴力の経緯がある場合に適用される特別の規定についての説明があります。

書式の側でも、FL-341(A)(監督付きの交流と受け渡し)、FL-341(B)(連れ去り防止)が用意されており、必要な場合にはこれらを付けて申し立てます。

養育計画という枠組みは、父母が協力できる家庭のためだけのものではなく、協力が難しい場合にこそ、何をどう決めるかを細かく書いておくためのものだ、という位置づけになっています。

8. 日本との違い

最後に、日本の制度との違いを3点挙げておきます。

第一に、カリフォルニア州では監護や養育時間に争いがあれば必ず調停に付されるのに対し、日本では協議離婚が可能で、父母が合意すれば裁判所が関与しないまま離婚が成立します。取り決めの内容を誰も確認しない、という点が大きく異なります。

第二に、カリフォルニア州では養育計画が裁判所の命令となり、従わない場合の効果が予定されています。日本では、協議離婚の際の取り決めは私的な合意にとどまることが多く、公正証書や調停調書にしなければ執行力がありません。

第三に、書式の作りが違います。カリフォルニア州は必要な条項を選んで組み合わせる設計ですが、日本ではまだ、どのような条項を用意すべきかという整理が進んでいません。改正民法824条の2が定める共同行使と単独行使の線引きを、家庭ごとにどう具体化するかは、これからの実務で形づくられていく部分です。

弁護士 松野絵里子のコメント

日本でも養育計画が広範に作られるようになってくると、カリフォルニア州のようなサポートを日本全国ですることが必要となってくるかもしれません。残念ながらそういったものは、まだありませんが、父母が離婚後も子の養育に関わり続けるという前提に立てば、決めておくべき事項はある程度共通であるので、カリフォルニアの資料はとても参考になります。すでに数十年にわたって運用されてきた書式ですし、そこで実際に紛争を経験したという結果の蓄積があります。日本で養育計画を作るときに、カリフォルニアの実務は参照する価値が十分にあるので、今後もご紹介をしていきたいと思っております。

9. 養育計画の作成をお考えの方へ

共同親権を選ぶ場合も、単独親権とする場合も、子に関する取り決めをどこまで具体的に決めておくかで、その後の負担は大きく変わります。何を決めるべきか、どのような書き方をしておけば後で困らないかは、ご家庭の状況によって異なります。

当事務所では、日本全国の方を対象に、初回のご相談を無料でお受けしています。オンラインでのご相談も可能です。

【 ご相談のご予約はこちら 】
(オンライン予約・24時間受付)

お電話: 03-6380-9593
(24時間受付。ご用件をうかがい、翌営業日までに折り返しご連絡いたします)
メール: info@ben5.jp
(24時間受付)お急ぎの場合や、ご都合のよい日時が決まっている場合は、オンラインのご予約が確実です。

ご相談をお受けする前に、ご相談内容をうかがっています。相談票へのご記入をお願いすることが多いので、あらかじめご了承ください。

▶ 共同親権に関する記事の一覧は〔共同親権〕カテゴリページからご覧いただけます。

参照した資料:カリフォルニア州司法評議会 FL-341、FL-341(A)〜(E)/カリフォルニア州裁判所 自助ガイド「Resources to develop a parenting plan」「What to expect from family court mediation」/カリフォルニア州裁判所 自助ガイド「The divorce process」/カリフォルニア州家族法2339条、3003条、3025条、3083条、3170条

📝 監修者(最終更新日:2026年8月)

松野絵里子 弁護士|東京ジェイ法律事務所
国内最大手の渉外法律事務所にて20年以上経験を積み、離婚・財産分与・国際離婚・富裕層の資産分割など複雑案件を多数手がける。現在はオンライン対応・全国対応で離婚専門の法律相談を提供。費用の透明性にもこだわり、複雑な財産分与事案の和解的解決も得意な弁護士。共同親権の推進でも経験が多く、知名度がある。

記事監修者: 弁護士 松野 絵里子

プロフィールはこちら >>

◆ 海外案件の経験が豊富
━━━━━━━━━━━━
国内最大手での経験を生かし、得意な語学力で複雑な家事事件から英文契約の確認などの企業法務まで経験豊富です。

◆身近で高品質な法律事務所
━━━━━━━━━━━━
高水準の品質の法律サービスを、リーズナブルに提供いたします。

◆依頼者の立場にたち共に最適な解決の道
━━━━━━━━━━━━
依頼者の立場にたち、共に最適な解決を目指して日々研鑽しております。

関連記事
Home
Mail
相談予約
Search
💬 よくある
相続のご相談