離婚しても子どもの子育ては分担したい 「監護の分掌」という選択肢

※本記事は法務省Q&A形式解説資料(民法編)、裁判所ウェブサイトの解説等をもとに、当事務所の弁護士松野絵里子が独自にかみ砕いて解説したり、意見や感想を加えたものです。個別の問題について意見を明らかにするものではありません。個別の事案については、ご自身の弁護士に確認してください。当事務所では、親権や監護権に関しての法律相談をお受けしております。

1. 「共同親権にはしたいが、実際の子育てはどう分担すればいいのか分からない」

離婚を考える中で、「親権は共同にしたいけれど、実際の子育てをどう分けたらいいのか分からない」というご相談をよくいただきます。共同親権というと、「全部を一緒に決める」か、あるいは事実上「片方に任せきりになる」かのどちらかをイメージされる方が多いのですが、実はその中間に、もっと柔軟な選択肢があります。それが今回取り上げる「監護の分掌」という制度です。

離婚後も父母それぞれが子育てに関わり続けたい、しかしすべてを一緒に決めるのは現実的ではない、そう感じている方にとって、監護の分掌は具体的な設計図を描くための道具になります。

2. 前提知識:「親権」と「監護」は別物

まず基本的な整理から始めます。「親権」は、子の財産管理や身分行為の代理も含む、法律上の包括的な地位です。一方「監護」は、その中でも、実際に子と生活し、日々の世話や教育を行う部分を指します。離婚後に父母双方が親権者(共同親権)になった場合でも、実際に子がどちらの家で、誰の判断のもとで日々を過ごすのかは、別途取り決める必要があります。

監護の分掌は、この「監護」の部分を、父母でどう分け合うかを取り決める制度です。共同親権という大きな枠組みの中に、日々の子育ての具体的な役割分担を書き込んでいくイメージだと考えると分かりやすいと思えます。

3. 「監護の分掌」とは何か

監護の分掌は、民法766条1項を根拠とする制度です。同項は、離婚時に父母の協議によって作成できる「養育計画」の内容の一つとして、監護の分掌を明記しています。法務省Q&Aでも、監護の分掌とは「子の監護を父母が分担すること」と説明されており、例えば監護を担当する期間の分担や、監護に関する事項の一部(教育に関する事項など)を父母の一方に委ねることがこれに当たるとされています。

離婚時に取り決めることが想定されていますが、離婚前の別居中の父母の間でも利用できます。共同親権を選んだものの、日々の生活の細部まで毎回すり合わせるのは非現実的だと感じている方にとって、これは非常に実践的な制度です。

4. 具体的にどう分担できるか 2つの型

裁判所ウェブサイトの解説によれば、監護の分掌には大きく分けて2つの型があります。

①期間の分担

子の監護を担当する期間を、父母の間で分担する形です。曜日単位(平日は父、週末は母、など)、週単位、月単位など、取り決め方は様々です。いわゆる「交互監護」に近い形を選ぶ場合、この期間の分担という形式で取り決めることになります。

②事項の一部の分担

期間で区切るのではなく、監護に関する事項の一部を、父母の一方に委ねる形です。裁判所ウェブサイトには、「教育に関する事項」を同居親が分掌する場合の具体的な図解が掲載されています。これは、居所や日々の生活は同居親が担いつつ、進学先の選定など教育に関する重い決定については、その同居親があらかじめ単独で担当できるように取り決めておく、というイメージです。教育以外にも、医療に関する事項、習い事に関する事項など、生活の領域ごとに担当を分けることが考えられます。

実際には、①と②を組み合わせる形(例えば、平日は父が担当しつつ、教育に関する決定は母が担う、など)も可能です。ご家庭の状況に応じて、柔軟に設計できるのがこの制度の特徴です。

4. 決め方:協議でできること、調停・審判が必要なとき

監護の分掌は、まず父母の協議によって定めることができます。合意ができた場合は、後日の紛争予防のためにも、離婚協議書や合意書を公正証書化しておくことを強くお勧めします。口頭の約束だけでは、後になって「そんな約束はしていない」という水掛け論になりかねません。

協議が調わない場合、または協議ができない場合は、家庭裁判所の「監護の分掌調停」を利用できます。裁判所ウェブサイトの案内によれば、申立人は父または母、申立先は相手方の住所地の家庭裁判所(または当事者が合意で定める家庭裁判所)です。申立てに必要な費用は、子1人につき収入印紙1200円分と連絡用の郵便切手です。必要書類は、未成年者の戸籍謄本、子についての事情説明書、進行に関する照会回答書などです。

調停手続では、申立人が監護の分掌を希望する事情や他方当事者の意向、父母間の協議の状況、これまでの養育状況、家庭環境のほか、子の年齢、就学の有無、発達特性、心身の状況、父母と子との関係性など、幅広い事情が聴取されます。子の健全な成長を助けるものであることが求められるため、子の利益を優先した取り決めができるよう話し合いが進められます。話し合いがまとまらず調停が不成立になった場合は、審判手続が開始され、裁判官が一切の事情を考慮して判断します。

なお、委ねたい事項が具体的な一つの事項に限定される場合(例えば「今回の進学先の決定だけを一方に任せたい」といったケース)は、監護の分掌という継続的な取り決めよりも、後述する「親権行使者の指定」の手続きの方が適している場合もある、と裁判所ウェブサイトでも案内されています。

6. 似ている制度との違いを整理する

監護の分掌と混同されやすい、関連する2つの家事調停・審判があります。ここで整理しておきます。

制度対象範囲特徴
監護の分掌(今回)監護に関する事項の一部、または期間役割・期間で柔軟に分担する、継続的な取り決め
監護者の指定身上監護全般(重大な行為を含む)決定権を一人に包括的に集中させる。財産管理・身分行為は対象外
親権行使者の指定個別の一つの特定事項一件だけをピンポイントで解決する

監護者の指定が「決定権を一人に集める」制度であるのに対し、監護の分掌は「役割を父母で分ける」制度である点が大きな違いです。「一人にすべて任せるほどではないが、ある程度は役割分担をはっきりさせたい」という場合には、監護の分掌の方が実情に合っていることが多いように思います。どちらが適しているかは、父母の関係性や、実際にどこまで協力し合えるかによって変わってきますので、迷った場合は弁護士に相談することをお勧めします。

7. 「監護の分掌」と親子交流・養育費との関係

監護の分掌は、親子交流(面会交流)とは異なる概念です。親子交流が「離れて暮らす親が子と会う」ことを取り決めるものであるのに対し、監護の分掌は、より具体的な監護の内容そのものについて話し合い、定めるものです。例えば「月2回、土日に子と過ごす」という取り決めが期間の分担としての監護の分掌なのか、単なる親子交流なのかは、実質的にどこまで監護の権限(子の日常の判断を含む)が伴うかによって評価が変わってきます。

養育費については、監護の分掌を定めたからといって、算定基準そのものが変わるわけではありません。もっとも、実際に子と過ごす時間の配分が大きく変わる場合(交互監護に近い形になる場合など)には、養育費の算定において考慮される個別の事情が変わってくることは十分にあり得ます。「制度としての算定基準は変わらないが、個別の算定要素は変わり得る」という整理で理解しておくとよいでしょう。

8. 決めるときに考えておきたいポイント

  • 子の年齢や生活リズムへの影響:期間の分担を選ぶ場合、頻繁な行き来が子にとって負担にならないか
  • 通学・送り迎えとの兼ね合い:学校や習い事のスケジュールと、分担の形が無理なく両立できるか
  • 父母間の協力の実現可能性:事項ごとの分担は、ある程度の情報共有や協力関係が前提になります。対立が激しい場合には、かえって混乱を招くこともあります
  • 将来の変化への備え:子の成長に伴い、分担の内容を見直す必要が出てくることもあります。定期的な見直しの機会を、あらかじめ合意書に盛り込んでおくことも一つの工夫です

9. まとめ

監護の分掌は、「全部を一緒に決める」でも「片方に任せきり」でもない、柔軟な子育ての分担方法を実現する制度です。期間で分ける形、事項で分ける形、その組み合わせなど、ご家庭の状況に応じた設計が可能です。協議で決められない場合は、家庭裁判所の調停・審判という手続きも用意されています。離婚後・別居後の子育ての分担についてお悩みの場合は、お早めに無料相談をご利用ください。

参考文献

📝 監修者(最終更新日:2026年7月)

松野絵里子 弁護士|東京ジェイ法律事務所
国内最大手の渉外法律事務所にて20年以上経験を積み、離婚・財産分与・国際離婚・富裕層の資産分割など複雑案件を多数手がける。現在はオンライン対応・全国対応で離婚専門の法律相談を提供。費用の透明性にもこだわり、複雑な財産分与事案の和解的解決も得意な弁護士。共同親権の推進でも経験が多く、知名度がある。

記事監修者: 弁護士 松野 絵里子

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