国際離婚

国際結婚した方、国際離婚をしたい方が知っておくべき法律問題

夫婦であれば離婚したいと思うことは、誰でもあることですが、夫婦の片方が外国人であったり、夫婦が海外に住んでいる場合の国際離婚では、考えないといけないことは通常の離婚よりずっとたくさんあります。どこでどうやって手続きをすればよいのか、海外で外国人夫に離婚を迫られているがどうしたらよいのかなどなど。専門的な弁護士が多様な事案についてこちらではご説明しています。メールでのご相談にも応じております。

よくあるご相談内容例

  • 外国に住んでいて、離婚を切り出されたのですが、どうしたらよいのでしょう?
  • 外国人の夫(妻)との関係がよくなくて、離婚したいのですが。
  • 子どもがいるのですが、国際離婚では親権はどうなるのでしょう?

Advantage | 国際離婚における東京ジェイ法律事務所の強み

Advantage.01

国際離婚について考えているなら、関連する法制度を知る必要があります。

結婚も離婚も制度ですので離婚についても法の定めがあります。しかし、国際離婚ではその法律がどの国の法律なのかわからないとか、海外で離婚する手続きがわからないとか、海外で離婚して子どもを連れて日本に戻りたいがどうしたらよいかわからない、などの複雑な問題があります。そういった複雑な状況についてきちんとご説明します。

Advantage.02

どうやって離婚の問題と向き合ったらよいのか、ステップのアドバイスをします。

離婚についての法制度を正確に知ろうとしても、国際離婚では手続きが複雑でどうしてよいかわからなかったり、準拠法がわからなかったり、そもそも現地の言語がわからなくてどうしてよいかわからかなったり、相手が外国人でうまく協議ができなかったり、といろいろな問題があります。ひとりひとり、異なる問題を抱えているのは当然です。子どもがいればますます複雑です。どういうステップで進むのがよいかご説明します。

依頼者様との5つのお約束
  • Promise.01 ご意向に沿ったアドバイス
  • Promise.02 不利なこともきちんと説明
  • Promise.03 国際離婚の実務を説明
  • Promise.04 次のステップへのサポート
  • Promise.05 お子さんの問題を大事にします

1 国際離婚とは、何でしょうか?

国際離婚とは?

① 夫婦の双方かどちらかが、日本人以外の場合の夫婦が、離婚すること
② 海外にいる日本人の夫婦が離婚すること

この2つの種類の離婚が、渉外的な要素を有することから、国際離婚になります。渉外的要素というのは、日本法だけでは問題がすまないというような意味です。

国際離婚だとどういう問題があるのか?

国際離婚では、日本以外の国の法律が関連することがあり、また、日本の裁判所が利用できないという問題があります。海外の法律が関連することを、準拠法の問題といいます。日本の裁判所が使えないという問題は国際裁判管轄の問題といいます。

そのため、日本の弁護士だけではなくて海外の弁護士も解決に必要となることもあり、非常に複雑な問題が起きる場合もあります。また、間違った手段をとることで不利になったり、海外で離婚ができなくなったりすることもあります。

2 国際離婚における準拠法の問題(どこの国の法律が適用されるのか)

準拠法とは?

国際離婚では、適用される法律(それを「準拠法」といいます。)がなにかが問題になります。もしも、あなたが日本人で夫がフランス人なら、フランス法が適用されるのかどうかという問題です。

これについては、各国で準拠法を決める法律があり日本では、「法の適用に関する通則法」という法律で決まっています。準拠法をきめるルールを抵触法とか国際私法ともいいます。

国際私法はPrivate International Law、抵触法はConflict of Lawsと呼ばれる原則によって、どの法律を適用するかが決まります。

国際私法は、国や地域ごとに異なる法があることから、問題となるある法律関係(法律的な問題のまとまりというようなものです)に、どの国又は地域の法を適用するべきなのかを決める規範(ルール)です。

このルールによって、ある国の国内での法の適用範囲が決まり、外国の法の適用範囲も決まってくるのです。上の例では、日本法はどういう問題について適用されて、フランス法はどういう問題について適用されるのか、というルールです。

上記の例で仮に、アメリカ人の養子をもらってくるという場合、養子縁組の法律は日本、フランス、アメリカのどの法律なのか?というように、関連する国や地域が多くなるとそれだけ複雑になります。

日本で離婚する場合の準拠法は?

上記の通り、法の適用に関する通則法が日本の裁判所での準拠法のルールを決めています。

国際離婚についてはどうなるかというと、まず通則法の27条が25条を準用していて、以下のルールになります。

① 夫婦の一方が日本に常居所地を有する日本人であれば ⇒ 日本法が準拠法
② 夫婦の本国法が同じとき、⇒ その本国法が準拠法
 *本国法というのは国籍をもっている国とか地域(アメリカの州)のことです
③ ①ではない場合で夫婦がおなじ国に住んでいるとき(同じ国に常居所地があるとき)  ⇒その夫婦が住む国(または地域)の法が準拠法(共通常居所地法が準拠法)
④ 夫婦がおなじ国に住んでいない(常居所地がない)とき ⇒ 夫婦に最も密接な関係のある国(または地域)の法律

このようなことになります。

よって、日本に住んでいる夫婦で夫か妻が日本人なら、離婚における準拠法は日本法になります。

日本に住んでいるドイツ人の夫と妻の夫婦では、離婚の準拠法はドイツ法となります。②のルールによります。

ウルグアイ人とアメリカ人が東京に住んでいる場合、東京で離婚をするのなら、日本法が準拠法となります。

3 準拠法をきめる「常居所地」とは?

常居所地という考え方は、国際私法では重要でありますが、統一的な考えが決まっているものではありません。

たとえば、スイス国際私法20条は「あらかじめ期間が限定されていても、相当程度長期にわたる滞在」の事実があるところとしています。

ハーグ国際私法会議では、定義されたことがなく、子の奪取に関するハーグ条約でも、定義はされていないので、不明確です。

長く滞在する「意思」がなくても認められるもののどのくらい滞在期間があればよいのかは事案によります。

日本においては、戸籍実務では認定基準がある程度あります。

法務省民事局長通達「法例の一部を改正する法律の施行に伴う戸籍事務の取扱いについて」(平成元年10月2日付民二第3900号)に従って、常居所地を認定する場合は以下のルールとなっております。

日本人については、日本に住民登録があれば、日本に常居所がある。出国後1年以内でも同様とする。出国後1年から5年の場合、原則として日本に常居所があるものとする。ただし、重国籍者が日本以外の国籍国に滞在している場合などはその国に常居所があるものとする。

外国人については、日本で出生後、出国していない者や、日本人の子として出生した者は日本に常居所があるとされています。

「特別永住者」の在留資格がある外国人は、日本に引き続いて1年または5年以上在留している場合に、日本に常居所があるものとされています。永住目的又はこれらに類する目的がある場合は、1年の滞在と登録でよいとされています。

これは市区町村長が戸籍事務を取り扱うときの基準ですので、裁判においては別に解釈されますが、一応、参考にはなります。

4 海外に住んでいる日本人の離婚の場合には、準拠法は日本法となるのか?

夫婦ともに日本人ですので、上の②の場合に該当して、離婚の準拠法は日本法になります。

でも、「日本の裁判所で離婚手続きができるか」という別の問題があります。それがあとでご説明する国際裁判管轄の問題です。

たとえば、あなたがドイツに住んでいる日本人女性で、夫がドイツ人となると、まずどこで離婚の手続きをするのかで、準拠法は異なってくるのです。

国際私法はその国の裁判所で手続きをする場合のその国がもっているルールのことですので、その国がどのような事案を裁判所で扱うかはその国の民事訴訟法ルールによるのです。

同じ日本人夫婦でも、転勤で東京に移転してきたとき東京の家庭裁判所で離婚するのか、ベルリンに住んでいてベルリンで離婚手続きをするのか、によって準拠法は異なります。

ベルリンに住んでいる夫婦がベルリンで裁判をするのなら、夫婦の一方が日本人で他方がそうでない場合、おそらくドイツ法が適用され(日本人同士ならおそらく日本法が適用され)、仮に、その夫婦が東京に住むようになってから東京で離婚の裁判などをするのなら日本法が適用されるでしょう。

5 国際離婚の場合、日本の裁判所で離婚ができるのか(国際裁判管轄の問題)

日本に住む日本人の夫婦の離婚の場合、通常、最初に当人同士の話し合いによる協議離婚が行われ、話し合いがつかなければ日本の家庭裁判所へ離婚調停を申し立てることができます。

海外に住んでいる日本人夫婦でも、日本の協議離婚はできますし、調停の利用も双方が希望すれば可能です。

しかし、夫婦ふたりともが日本に住んでいないケースの国際離婚の場合、常に日本の家庭裁判所へ調停や訴訟を申し立てるということができるわけではありません。

この国際離婚の手続をどこの国の裁判所で行うべきかという問題(これを「国際裁判管轄」といいます。)については、法律上明確ではありませんでした。

もっとも、最高裁判所の裁判例(昭39年3月25日)等から、一応の基準が確立されていました。これをまず、ご紹介致します。しかし、現在では立法により日本で裁判ができる場合がある程度明らかになっています。これについては、後述します。

① 相手の住所が日本にある場合
離婚をお考えの方が日本人でも外国人でも、相手の住所が日本にあれば、原則として、日本の家庭裁判所で手続を進めることができます。
したがって、例えば、相手の住所地が福岡市の場合、福岡家庭裁判所で、相手の住所地が東京都の場合は、東京の家庭裁判所で手続をすすめることが可能です。

② 相手が外国にいる場合
この場合は、原則として、相手の国に国際裁判管轄権が認められます。
もっとも、以下の場合には、例外的に、日本の家庭裁判所に管轄が認められるとされてきました。

・相手から遺棄された場合
・相手が行方不明の場合
・その他これに準ずる場合

実際の裁判例では、「遺棄」や「行方不明」だけではなく、原告救済の必要性が高いような場合には「その他これに準ずる場合」に該当するとしています。

日本の国際裁判管轄を認めた判例の事例①

東京地裁 平成11年11月4日判決は、「日本に居住する日本人とアメリカ合衆国に居住する日本人に対する離婚請求訴訟につき日本の国際裁判管轄を肯定」した事例です。
当該判決においては、いずれの実母も日本に居住していること、準拠法が日本法であること、被告の来日回数や期間、未成年の子が日本に居住していることなど我が国との実質的関連性が考慮されています。

日本の国際裁判管轄を認めた判例の事例②

福岡地裁 平成8年3月12日判決は、「日本在住の日本人妻から韓国在住の同国人夫に対する婚姻無効確認訴訟につき、我が国の裁判所に国際裁判管轄を認める」とした事例です。

当該判決は、いわゆる合同結婚式についての事案ですが、本件の場合、被告が韓国において未だ婚姻届を出しておらず、同居した事もなく、被告が本件訴状に対し何らの応答もしていないことから、条理上例外的に日本の管轄を認めました。

日本の国際裁判管轄を認めた判例の事例③

名古屋高裁 平成7年5月30日判決は「当事者間の便宜公平、判断の適正確保等の訴訟手続上の観点から、当該離婚事件の被告の住所が日本にあることを原則とすべきであるが、他面、国際私法生活における正義公平の見地から、原告が遺棄された場合、被告が行方不明である場合、その他これに準ずる場合等特別の事情の存する場合においては、被告の住所が日本になくても、原告の住所が日本にあれば、補充的に日本に裁判管轄権を認める」とした事例です。

当該判決は、カナダに居住する同国人夫と婚姻していた日本に居住する日本人妻が、日本において、協議離婚届出を行ったところ、夫が日本の裁判所に離婚無効の訴えを提起し、これに対し、妻が予備的反訴として、離婚の訴えを提起した事案です。

当該判決は、夫について行方不明とまではいえないまでも、少なくとも常住居所が明らかでなく、本訴が原裁判所に継続中であることから、訴訟当事者間の公平という基本理念から、被告住所地主義の例外にあたる特別の事情が存すると判示しました。

6 最近の立法による国際離婚の国際裁判管轄(2019年4月から施行の法律です)

2019年4月1日から、国際離婚に関しての管轄についての法律ができています。

国際裁判管轄というのは「どのような国際的な離婚事件が日本の裁判所で裁判などができるのか」を決めたルールです。

このルールは日本の裁判所がどういう事件を扱えるかのルールなので、アメリカで訴訟ができるかは、ここでは定めていません。

外国の裁判所で離婚の裁判ができるかについては。その国の法律によるのです。そういった法律を国際私法と言います。抵触法のルールとも言います。

2019年まで、外国人との結婚をした人や、外国に居住する日本人の離婚について、日本の裁判所で扱えるかについては、判例に従って判断されてきました。

そのため、弁護士は判例を検討しつつ各事案において、管轄が認められるのかを判断する必要がありました。それについては、すでにご説明しています。

2019年4月1日に施行された人事訴訟法では、これまでの判例の集積を基礎にルールが明確にされました。

日本の裁判所で扱われる国際離婚は以下のようなものです。具体的には人事訴訟法という法律の3条の2です。

人事訴訟法3条の2のご紹介

1) 被告の住所、それが知れないときは居所が日本国内にあるとき(1号)

2) 被告が死亡時に日本国内に住所を有していたとき(3号)

3) 夫婦の双方が日本国籍を有するとき(5号)

4) 夫婦の最後の共通の住所が日本国内にあったとき(6号)

5) その他(7号)
例:外国の裁判所での離婚判決が確定したが日本国内で効力を有しないとき
例:日本の裁判所が審理及び裁判をすることが衡平であるとき
例:そのような審理が適正かつ迅速な審理の実現を確保することとなる特別の事情があると認められるとき

夫婦の双方が日本国籍の場合に、どこに夫婦が住んでいても日本の裁判所が管轄を有するとしたことは重要な意義があります。

一方で、ドイツに住んでいるのにいきなり東京で離婚訴訟を起こされることもあるので、事案によってはリスクでもあります。海外に住む日本人にとって日本の弁護士を雇うことは簡単ではないですから。

しかも海外にいる日本国籍者が日本に居住したこともないということもありえます。

あまりに、権利の濫用といえるような場合には、特別の事情があるとして訴えの却下を求められることもあるでしょうが、一旦開始された訴訟は放置すると欠席判決と言って一方の言い分だけを聞いた判決が出ますので、注意が必要です。

提訴されたら放置するのは、決して望ましいことではありません。

上記の解説でわかるように、夫婦が「日本で離婚訴訟をやりたい」と合意しても、合意管轄は認められていないのでそれでは管轄は認められません。

また、すでに海外で離婚訴訟が開始されていても、日本でも離婚訴訟が開始できるので、二つの訴訟対応が必要となることもあります。

当事者の中には、敢えて、戦略的にふたつの訴訟を進行させる場合もあります。それは、各国で確定判決を得ると執行ができるから・・・などいろいろな理由があるでしょう。親権制度が有利であるという理由もあえります。

海外先進国では、離婚後も別居中も子どもに対して共同で親権を行使するので、日本法が適用されて片親にしか単独親権が認めないことを嫌う当事者もかなりいます。

例えば、アメリカで離婚をする場合には共同親権になり、その確定判決が日本でも効力を有するので、敢えて海外で離婚手続きをすることが夫婦の解決にとって有意義であることもあります。

海外に住んでいるけれど、親権については共同親権にしたいのであれば、財産については日本の調停を利用して親権についてはその海外で解決するというような柔軟な解決もありえますが、その場合日本の弁護士と海外の弁護士への費用が必要となります。

7 国際離婚の場合、離婚調停は利用できますか?

日本で裁判離婚のためには離婚訴訟を提起する必要がありますが、その前に必ず離婚調停をしなければならないというルールがあります。調停前置主義といいます。

国際離婚の場合には、日本の調停が利用できるのは、まず夫婦でそのような合意をした場合です。

それ以外には、相手方の住所、それが知れないときは居所が日本国内にあるときと、離婚訴訟の国際裁判管轄が日本にあるときに認められます。

もっとも、離婚訴訟では合意管轄が認められないので、合意しても国際裁判管轄が認められないと離婚訴訟はできないという関係にあるので、注意しましょう。

調停で話し合いをしようと合意管轄で日本で離婚調停を行ったが、財産が複雑などの理由で調停が成立しなかったときに離婚訴訟に移行するときには管轄が認められないという可能性があります。

このときには、適正かつ迅速な審理の実現を確保することとなる特別の事情があるということを主張して裁判管轄を認めてもらう方法などを、検討するべきしょう。

また、裁判所が職権で離婚調停の管轄があった裁判所が離婚訴訟を扱うこととすることもありえます。

上記の国際離婚の離婚調停についての管轄は、人事訴訟法とともに家事事件手続法が改正され、家事調停事件について、訴訟事件または家事審判事件について日本の裁判所が国際裁判管轄を持つときだけでなく、合意管轄の場合も明文で認められたことによります(家事事件手続法3条の13)。

2019年の新法により以前より明確にかつ多くの場合に日本の裁判所に離婚の国際裁判管轄が認められるようになったので、日本で離婚できるかということは、よく検討をしてみるとよいでしょう。もっとも、裁判ができるからといって、それが有利だとは限りません。たとえば、財産がある場所で判決をもらうほうがスムーズであることも多いからです。

手続をどう進めるかは、よく考えて決めましょう。

8 日本での離婚の効果が外国にも及ぶのか?

日本では協議離婚、調停離婚、審判離婚、裁判離婚という方法で離婚ができます。協議離婚は届にサインをして届をだすだけなので簡単であり、その手続きを選びたい方も多いでしょう。

しかし、協議離婚での離婚を離婚と認めてくれない国もあるので、関連する国の制度をよく確認してから離婚手続きをしましょう。

たとえば、自分はアメリカ国籍であるのに、日本で協議離婚をしてしまうと、アメリカの州(離婚手続をしている州のことです)ではそれを離婚として認めませんので、いつまでもアメリカのその州では婚姻している人と認識されて再婚できないということがありえます。

日本での協議離婚の効果が、海外の自分の本国においても有効かどうかについては、調査が不可欠なのです。

9 国際離婚の場合で、日本で離婚手続をする場合

準拠法が日本法である場合

本法に従い、協議離婚をすることができます。ただし、協議離婚を認めている国は少ないため、外国人配偶者の本国法における協議離婚の可否を判断する必要があります。そのため、できるだけ裁判所を介した離婚手続き(調停離婚、審判離婚、裁判離婚)をとっておくことがのぞましいでしょう。

準拠法が外国法である場合

1) 準拠法が離婚を禁止している場合(フィリピンのような場合)

日本で離婚訴訟を提起しても、原則として離婚は認められません。例外として、その結論が日本の公序良俗に著しく反する場合には、外国法の適用を排除し、日本法が適用されます。ただし、日本法により離婚が認められても、配偶者の国では離婚が認められないという結果が生じ得ます。

2) 準拠法が協議離婚を認めている場合
準拠法もしくは離婚をする地の法に定められた手続きに従い、協議離婚の届出をすることになります。日本で協議離婚の届出をする場合には、以下のものが必要です。

☆ 国籍証明書
☆ 外国人登録証明書
☆ 婚姻証明書
☆ 当該本国の関係法令(準拠法の該当部分)
(夫婦の本国法により協議離婚を日本の方式に従ってすることができる旨の証明書)

3) 準拠法が裁判離婚のみを認めている場合

日本では調停離婚、審判離婚と裁判離婚が裁判所での手続きですが、外国法において、本国での裁判離婚と同様の効果が認められないこともあります。その点は、十分な調査が必要となります。

よく使われる方法としては、離婚調停を利用して調停離婚し、その調停条項において合意内容を記載して、これが確定判決と同一の効力が与えられることも追加で明記することが、利用されています。多数の海外の国でこの方法であれば、日本の離婚が効力を有するとされているからです。

注意:上記の調停前置主義がありますので、離婚訴訟提起の場合にはその前に離婚調停を行っておく必要があります。もっとも、国際離婚の場合に相手が海外にいるのであれば出頭を求める調停を行うのは困難と考えられており、直接に離婚訴訟を提起できるとされることが、通常です。

10 外国で離婚してきた場合(日本での外国判決の効力)

国際離婚の場合、海外で提起された離婚裁判で判決がすでにある場合もあります。

その判決ですでに離婚していて、子どもの親権者は共同親権となっているとか、かなりの頻度の面会交流が命じられているということがよくあります。

こういった海外の判決は日本でも効力があるのか、日本で生活する人にも効果があるのか、これは「外国判決の効力」の問題です。

外国判決については、民事訴訟法118条があります。この条文で記載されたとおり一定の条件が満たされれば、日本でも効力があります。

つまり、離婚判決は日本での判決と同じような効力があって、海外の判決での共同親権は日本でもそのまま効力があるのです。離婚判決に民事訴訟法118条が適用されるかという論点はありますが、家裁の実務では、全面適用されています。

よって、条件を満たせばそのまま日本の離婚判決を同一の効力があると考えるべきでしょう。参考に民事訴訟法118条を引用します。

民事訴訟法118条<外国裁判所の確定判決の効力>
外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する。
①  法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。
②  敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。
③  判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。
④  相互の保証があること。

上記①の「法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められる」という要件は日本からみてその海外の裁判所の国際裁判管轄権行使が許容できるという意味です。

② は、外国裁判所から訴状や呼出状の送達が公示送達ではなくてきちんとなされたことが要件となります。裁判が起こされたのを知らないでいるうちに判決が出たということでは、その当事者の手続保障が充足されていないという考え方からです。

たとえば海外から通常の郵便で訴状等が直接郵送されているようなとき、司法共助に関する所定の手続きをとらないで翻訳文も添付しない単なる郵送による送達がなされたような場合、この要件は満たされません。

しかし、実際には訴状が郵送で送られたときにはその国での裁判は進んでしまうことが通常ですから、(その結果の判決が日本で効力を有さないことがあるとしても)無視することはかなりのリスクとなります。専門的な弁護士に対応を相談しましょう。

③の要件は、離婚判決を承認されても、その結果がわが国の公序を害するような場合、その効力を認めないということを言っているのです。現実にはあまり、使われることは考えにくい条項です。

④は、同種類の日本の判決があったときその外国でも日本でも「重要な点で異ならない」条件の下で判決が承認されることを意味しています。

先進国であればこの要件は通常、満たしています。海外の判決で問題になるのは、例えばアメリカで離婚判決が出ており、非常に長く頻度が高い面会交流(養育プラン)の定めがあり、子の生活スタイルに合わないのでそのまま従うことができない、というような面会交流の事案です。

しかし、そういった海外の判決も合意で作られた同意判決であっても、判決には違いがないので、裁判で出た確定判決と同様の価値があり、従う必要があります。よって、相手方とよく話し合ってお子さんの利益の観点から変更するか、日本の家裁調停などで話し合って内容を変更するということが、考えられます。

11 外国の離婚判決が日本で認められないことがありますか?

外国の裁判所で下された離婚判決でも、日本における効力がない場合はあります。

東京家庭裁判所の平成19年9月11日の判例では、海外で下された外国人夫と日本人妻の離婚判決が無効であるとしました。

これは、民事訴訟法118条の1の外国裁判所に裁判管轄権があるために必要な要件を満たしていないのではないかが争点でありました。

この夫婦は当該外国に一度も住んでいない夫婦でその国の裁判所が離婚を言い渡す権限があると日本法で認められるのか、が争点になりました。

判決では、夫婦一方が自国民でさえあれば当然のこととして離婚の管轄権を肯定するというのは、離婚事件との関連では、過剰な管轄というべきとしていますので、無効とされました。

日本の国際裁判管轄のルールでは、住んでいない国では離婚の裁判管轄が認められるには双方が日本人でないといけません。同様の事案では日本法では裁判権はないと判断される事案なのです。

それが無効とされた理由です。

米国やイギリス、オーストラリアなどでは、一方がその国や週に一定期間居住すると離婚の裁判管轄が認める傾向があります。ですので、知らないうちに判決が出ていることもあります。

なお、上記で出てきた国際私法という法律ですが、一つの法律ではありません。日本の国際私法は、準拠法については「法の適用に関する通則法」があり、国際裁判管轄については「民事訴訟法3条」、外国判決の承認の要件については「民事訴訟法118条」があるということになります。

また、執行をする場合には「民事執行法24条」が外国判決にも適用されます。財産分与があるような場合は、執行ができないと実現ができないことが多いので、資産がある国で離婚判決をもらうことが有効となります。

よって、海外に住んでいる方でも、日本に資産がある夫婦なら日本での調停や訴訟が有効であることが多いのです。

12 国際離婚と子ども(国際離婚における親権)

国際結婚・国際離婚では、親子の問題がより複雑になります。「親子」に関する準拠法はどうなるかというと、日本の国際私法で決まることになります。

法の適用に関する通則法では親子間の法律関係については、子どもを中心にして決定されています(通則法第32条)。子の利益を守るためです。

子と親の本国法(国籍)が同じ場合は、子の本国法の国の準拠法となります。ドイツ国籍の子の父母のいずれかがドイツ国籍であればドイツ法が準拠法です。

父母の一方が死亡しているときや法律上の父・母が分からない場合、他の一方の親の本国法と子の本国法が同じときは、それが準拠法です。

子が二重国籍の場合には、それでは決まりませんよね。父がアメリカ国籍、母が日本国籍、子は二重国籍というようなときです。二重国籍では、通則法の38条1項本文によって、まず、その国のいずれかに当事者が常居所を有するときは、その国の法が本国法とされます。どこにも常居所がない場合には、その者に最も密接に関係する国の法令(最密接関係地法)が本国法となります。

カナダとイギリスの二重国籍で子が東京に住んでいるような場合、子の本国法は密接に関連する法が本国法となるのです。

もっともその複数の国籍国の中に日本が含まれれば、日本法が本国法となるとされています(第38条第1項但書)。これは、内国法優先主義といわれています。

13 国際離婚における養育費の決まり方はどうなっているのか?

通常は、離婚の手続の中で養育費も決まります。日本では離婚調停や離婚訴訟で、となります。

海外で離婚した場合、例えば、アメリカで同意による離婚判決を得て、養育費を2000ドルと合意して判決でもそれが明記されているような場合、養育費はアメリカのその州の法律を準拠法として決めています。このような裁判所の判決で養育費が決められていれば、離婚判決が外国判決として承認されていれば、日本でも効力を有します。

離婚判決で養育費が決まっていないような場合、日本の裁判所で養育費が決められるでしょうか? これは国際裁判管轄の問題です。

養育費や面会交流などの子の監護に関する事項について、離婚訴訟とは別に申し立てをしたいとき、子の住所が日本国内にあれば、日本の裁判所が管轄を有します。これは家事事件手続法3条の8で明記されました。

扶養義務者である相手方と扶養権利者の住所・居所が日本にあるときも、日本の裁判所が管轄権を有することが規定されました(家事事件手続法3の10)。

養育費の準拠法はどうなるかというと、日本の国際私法では扶養義務の準拠法に関する法律により決まり、扶養権利者である「子ども」の常居所地法が準拠法になりますので、日本の離婚訴訟・調停では子が海外に留学などしている場合には、その国の法律が養育費の準拠法となるのです。

しかし、子どもが住んでいるところ(常居所地)の法律では養育費が受けることができない場合、当事者の共通本国法が養育費の支払いを認めていれば、請求ができるとされています。それでも養育費が請求できない場合も、日本法の民法が養育費の支払いを認める場合、日本の裁判所では日本法により、請求ができます。

このように養育費は子の保護のためになるべく認められる工夫がされています。

14 海外の離婚判決で決定された養育費を、変更できますか?

海外の離婚判決で養育費が決まっているが、子どもが大学に行くので増額したいというようなとき、増額は可能です。しかし、それは子が日本に住んでいる場合にのみ、日本の裁判所で手続が出来ます。

変更ができるのは事情変更の原則によるものです。この事情変更の準拠法がもとの養育費の準拠法によるのか、裁判所の属する国の国際私法によるのかは、争いがあり明確ではありません。

父母の話し合いで増額を決めることもできます(家事事件手続法3条の10)。

海外で暮らしていますが、日本人夫婦です。日本で離婚手続ができますか?

調停や協議離婚で、離婚できます。

海外の日本人夫婦が離婚したいとき、日本の手続を使いたいということはありますよね。海外にいる方でも「協議離婚」は可能です。条件があわないようなら双方が弁護士を立てて調停で条件を協議する調停離婚も可能です。

海外で暮らしていて離婚訴訟を起こされたのですがどうしたら・・・

海外の離婚訴訟は提起されたらきちんと対応しましょう。

あなたが海外に住んでいてそこで離婚訴訟が提起されたなら、対応しないと不利な結果になる可能性が高いです。弁護士をたててきちんと応訴しましょう。通常は、話し合いの手続もあるはずです。

海外に住んでいるのですが、夫(妻)にカストディ(親権)を取られてしまいますか?

共同親権の選択が可能であることが多いので冷静に選択肢を考えてください。

日本では離婚すると親権者は一人になりますが、海外では離婚しても共同親権が普通ということもあります。その国で制度が異なるのできちんと制度を理解して、子どもとあなたにとってベストな結論になるようにしましょう。

日本で外国人の夫と離婚したいのですが、親権紛争にならないか不安です。

子のために話し合いをして、なるべく紛争が激化しないようにしましょう。

日本では子が連れ去られることもあり、外国人の配偶者は親権について不安をもっていることが多いので、疑心暗鬼になりやすいです。しかし、子が父母いずれとも良い関係を持っているのであればそれを維持することは子どもの利益になりますし、離婚での心の傷をそれによって最小にできます。

外国人の夫と離婚したいのですが、財産分与はもらえますか?

財産開示の制度を使いましょう。

外国人の離婚というのは文化的な違いから難航することもありますが、反対に、日本人よりも合理的に条件が決められることもあります。財産分与については、代理人弁護士を互いが立てて調停などで互いの財産を開示するなどすれば、合理的な財産分与ができることが通常です。