不動産を相続したとき、名義を被相続人から相続人へ変更する手続きが「相続登記」です。2024年4月からは義務化され、期限内に行わないと過料の対象にもなります。この記事では、相続登記の基本的な流れから、必要書類、費用、そして弁護士が関わる意味まで、まとめて解説します。
1. 相続登記とは
相続登記(正式には「相続による所有権移転登記」)とは、亡くなった方(被相続人)が所有していた不動産の名義を、相続人の名義に変更する手続きです。法務局に対して申請し、登記が完了すると、不動産登記簿上の所有者が正式に相続人へと切り替わります。
相続登記をしないまま放置すると、不動産を売却できない、担保に入れられない、といった実務上の支障が出るだけでなく、世代を重ねるごとに相続人がねずみ算式に増え、後々の手続きがさらに複雑になっていきます。

2. 相続登記の種類は、遺言と話し合いの状況で決まる
相続登記の申請内容は、自由に選べるものではなく、「遺言書があるか」「遺産分割協議がまとまっているか」という状況によって、次のいずれかに自動的に決まります。
| 区分 | 内容 |
| 遺言による相続登記 | 遺言書がある場合、遺言書で指定された相続人(受遺者)の名義にする。選択の余地はない |
| 遺産分割協議による相続登記 | 遺言書がなく、相続人全員の話し合いがまとまった場合、その内容どおりの名義にする |
| 法定相続分による相続登記 | 遺言書がなく、話し合いもまとまっていない場合に、民法で決められた相続分どおりに相続人全員の共有名義にする |
このうち「法定相続分による相続登記」は、相続人のうち1人だけで(他の相続人の実印・印鑑証明書がなくても)申請できるという特徴があります(民法252条5項の「保存行為」にあたるためです)。ただし、この方法で登記すると不動産は自動的に共有名義になり、共有不動産特有の制約(売却や大規模な変更に共有者全員の同意が必要になることなど)を抱えることになる点に注意が必要です。単独名義での登記や、共有名義のリスクについては、関連記事(「相続登記は相続人1人でもできる?」)もあわせてご覧ください。
3. 手続きの流れ
1. 相続人の確定:戸籍謄本を収集し、法定相続人を確定させます(被相続人の出生から死亡までの戸籍が必要です)
2. 相続財産(不動産)の確認:固定資産税の納税通知書や名寄帳から、対象となる不動産を確認します
3. 遺産分割協議(遺言がない場合):相続人全員で、誰がどの不動産を取得するかを話し合い、遺産分割協議書を作成します
4. 必要書類の収集:下記の必要書類一覧を参照してください
5. 登記申請書の作成・提出:対象不動産を管轄する法務局に申請します
6. 登記完了・登記識別情報の受領:審査が完了すると、新しい名義人に「登記識別情報」(従来の権利証にあたるもの)が発行されます
申請から完了までは、法務局の混雑状況にもよりますが、おおむね1〜2週間程度が目安です。
4. 必要書類(遺産分割協議による場合)
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式
- 被相続人の住民票除票(または戸籍附票)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 相続人全員の住民票
- 遺産分割協議書(相続人全員の実印を押印したもの)
- 相続人全員の印鑑証明書
- 対象不動産の固定資産評価証明書
遺言がある場合や、法定相続分どおりに登記する場合は、必要書類が一部異なります。事前に法務局または専門家に確認することをお勧めします。
5. 費用はどのくらいかかるか
相続登記には「登録免許税」という税金がかかります。
登録免許税 = 不動産の固定資産評価額 × 0.4%
具体例:固定資産評価額2,000万円の土地を、被相続人の単独所有から相続人が相続する場合、登録免許税は2,000万円×0.4%=8万円です。共有持分のみを相続する場合は、その持分に相当する評価額を基準に計算します。
このほか、必要書類の取得費用(戸籍謄本1通450円程度など)や、司法書士に依頼する場合の報酬(数万円〜十数万円程度が目安)がかかります。
6. 2024年4月からの相続登記義務化について
これまで相続登記には申請期限がなく、放置されるケースが社会問題になっていました。これを受けて、2024年4月1日から相続登記が義務化されています。
- 相続の開始及び所有権の取得を知った日から3年以内に、相続登記の申請をしなければなりません
- 正当な理由なくこの期限を過ぎると、10万円以下の過料の対象になります
- 2024年4月1日より前に発生していた相続についても義務化の対象となりますが、経過措置として令和9年(2027年)3月31日までの猶予期間が設けられています
- すぐに遺産分割協議がまとまらない場合の救済策として、「相続人申告登記」という簡易な報告制度も新設されています(後日、正式な相続登記への切り替えが必要です)
「まだ売る予定がないから」「相続人同士でまだ話し合いがついていないから」といった理由で先延ばしにしていると、意図せずこの期限を超えてしまうことがあります。売却の予定の有無にかかわらず、期限は必ず意識しておく必要があります。
7. 実務上のポイント
遺産分割協議がまとまらないと、相続登記も足踏みする
遺産分割協議による相続登記を選ぶ場合、話し合いがまとまらない限り、この方法では登記を進められません。義務化の期限が迫っているのに協議が難航している場合は、ひとまず法定相続分による共有名義で登記を済ませておき、後日、遺産分割が整った時点で改めて登記し直す、という進め方もあります。ただし、この場合は登記手続きを2回行うことになり、費用も二重にかかる点は理解しておく必要があります。
売却を予定している場合、登記のタイミングは司法書士と要相談
前述の「換価分割」の記事でも触れましたが、売却を予定している場合、相続登記を早めに済ませておくべきか、決済のタイミングに合わせて進めるべきかは、必要書類の有効期限や、売却のスケジュールによって変わります。この判断は司法書士の実務的な知見が欠かせない部分です。
弁護士と司法書士、それぞれの役割
相続登記そのものは司法書士の専門領域ですが、そもそも「誰の名義で登記すべきか」を決める遺産分割協議自体が紛争になっているケースでは、弁護士による交渉・調停対応が必要になります。当事務所には司法書士も在籍しているため、遺産分割の交渉から相続登記の実行まで、窓口を一本化してご依頼いただけます。
8. よくある質問
Q. 相続登記をしないまま放置すると、具体的にどんな不都合がありますか?
A. 不動産を売却・担保設定できないことに加え、相続登記をしないまま次の相続が発生すると、相続人の数がさらに増えて手続きが複雑化します。数世代にわたって放置された結果、相続人が数十人規模になってしまうケースも実際にあります。
Q. 遺産分割協議がまとまる前に、義務化の期限が来てしまいそうです。どうすればいいですか?
A. 「相続人申告登記」という簡易な制度を利用すれば、ひとまず義務は果たしたことになります。ただし、これは正式な相続登記ではないため、協議がまとまり次第、改めて相続登記を行う必要があります。
Q. 相続登記は自分でもできますか?
A. 制度上は可能ですが、戸籍の収集や書類作成には専門知識が必要です。特に相続人が多い場合や、遺産分割協議が難航している場合は、早めに専門家に相談することをお勧めします。
9. まとめ
相続登記は、2024年の義務化により「いつかやればいい」ものではなくなりました。特に遺産分割協議が難航しているケースでは、登記の期限と話し合いの進み具合の両方を意識しながら進める必要があります。司法書士による登記実務と、弁護士による交渉・調停対応を組み合わせることで、期限内にスムーズな解決を目指すことができます。











