近親者に公平に遺産を分割できるように定められている遺留分に関係して、2種類の時効が存在します。これを知らないと、請求ができなくなってしまうこともあります。相続に詳しい弁護士の助けを得ながら、確実に相続問題を解決することが大事です。
1. 遺留分の請求は早くしましょう。時効に注意。
相続というのは、配偶者や子どもを筆頭に、家族に対して資産を遺すという非常に重要な行為です。そのため、法律でしっかりと近親者の権利が定められています。
特に、遺留分というルールがあります。これは、遺言書や遺贈によって、家族以外の人や特定の近親者だけにたくさんの資産を遺そうとしても、近親者全員にある程度公平に分配をしないといけないという法律です。たとえ遺言で配偶者や子どもの取り分の指定が少ないとしても、遺留分を請求することで、自分の取り分をある程度しっかりと確保できるわけです。
しかし、法的に遺留分が認められているからと安心しきっていると、問題が生じることもあります。というのも、遺留分には時効が存在するからです。時効が成立してしまうと遺留分は消滅して、下手をすると相続分に預かれない可能性も出てきます。遺留分の請求に関係する時効は2種類存在します。
一つは、除斥と呼ばれるタイプの時効です。これは、相続が開始した時から、つまり資産を遺した方が亡くなった時からカウントされるものです。その時から10年が経過すると、自動的に遺留分の請求権は消滅してしまいます。この除斥は、相続人が何をしていようと成立してしまうもので、期間のカウントを中断させる手段はありません。また、相続人が被相続人が亡くなったことを知っていたかどうかに関わらずに消滅する権利でもあります。そのため、最悪のケースとして、自分の知らない間に親が亡くなっていて、しかも10年間が経過していて相続をすることができない、ということもあり得るのです。除斥の成立を覆すことはできませんので、裁判所に訴えたとしても無駄ということになります。
もう一つのタイプの時効は、遺留分侵害額請求をすることができる期間となります。これは、相続が開始したこと、つまり被相続人が亡くなったことを知った時、そして自分の遺留分が確保されていないということを知った時から始まります。これは除斥とはかなり考え方が異なります。
まず、単に被相続人が亡くなったということではなく、当人がそれを知った時からのカウントです。そのため、遠方で暮らしていてコンタクトを取っていなかったなどの理由で、死亡について知らなかった場合は、ずっと先延ばしされることになります。そして、死亡について知っただけでなく、遺留分が侵害されていたことを知った時というのも、同時に満たす必要があります。具体的には、近親者以外に多額の遺贈がなされていたことが判明した場合や、遺言書が発見されてその内容を知った時ということになります。
こうした二つの事実について知ってから、1年間のうちに遺留分侵害額請求をしないと、請求権はなくなってしまいます。こちらに関する注意点は、被相続人が亡くなったことを知ったのはいつか、ということを証明するのが難しいという点です。死亡時からかなりの時間が経過してから請求をした場合、相手や相手方の弁護士から、この点を突かれてしまうことがあります。事実の認識についてはかなり主観的なものとなりますので、問題になる可能性が高いです。そのため、現実的な考えとしては、やはり被相続人が亡くなってから1年間程度の猶予があるという認識でいた方が確実です。
この1年間の請求権の時効というのは、中断できるという点で、除斥とは違いがあります。実際に相手に対して請求をすれば、遺留分に関する請求権が失われることはありません。そのため、相手がそれに応じてくれるかどうかは分からないとしても、とりあえず遺留分侵害額の請求をしましょう。
この場合の注意点は、いつ請求をしたかは、確かな証拠が残る形で行うということです。具体的には、内容証明郵便を送るのがベストです。文書の形で、しかも文書を相手に送ったという記録が残ります。たとえ相手が受け取りを拒否したとしても、文書送付という証拠は残り、請求をしたという法的な効果を持ちます。特に、相手が遺留分の請求について拒否反応を示しそうだと感じる場合は、この方法を採った方が良いでしょう。
2. 相続に関するトラブルを避けるため、弁護士に頼ろう!
このように、遺留分が確保されていない場合には、時効が成立する前に請求をすることが非常に重要です。特に、遺留分侵害額請求の権利は1年間と短いので、できるだけ早く行動に移った方が良いでしょう。他にも、相続に関係するルールというのは複雑なものが存在しますので、注意しなければならない点があります。
遺留分侵害だと遺族が感じる理由としては、遺言書の内容が不公平と見られるというケースが多いです。たとえば、親族でない知り合いや愛人に、近親者以上の財産を遺すとしている場合です。もしくは、近親者であっても一人の子どもだけにほとんどの財産を渡し、他の子どもや配偶者にはほとんど譲らないとしているケースもあります。
こうした遺言の場合は、近親者が遺言自体を無効だと申し立てることも可能です。これを遺言無効確認調停と呼びます。いわば遺言書の中身を破棄して、相続人同士で協議して決めることができるようになります。
たとえば、遺贈や贈与の無効を訴える場合です。故人が第三者などに対して行った遺贈が有効ではないとして、行為を取り消してもらうということも、相続に関係する動きとして行われることがあります。
この遺言無効確認調停を申し立てることで、遺留分侵害額請求の時効について忘れてしまうこともあり得ます。遺贈を無効とする申し立てをすることに気を取られ、遺留分侵害額の請求について忘れてしまった場合、遺留分侵害額請求権については時効までのカウントが進んでしまうのです。たとえ遺贈の無効についての主張をしたとしても、併せて遺留分侵害額請求権の時効が中断されることはありません。そのため、遺贈の無効についての主張をするのと同時に、内容証明郵便などで遺留分侵害額請求も行っておきましょう。
結果的に遺贈の無効が認められなくても、この請求をしておけば、万が一のトラブルを避けられます。万が一、遺言無効確認調停が成立しなかった時のことも考えて、同時に遺留分についての請求もしておくべきなのです。こうすれば、どちらに転んでも問題となりません。大事なのは、一つの点に気を取られることなく、あらゆる事態を想定して行動するということです。
こうしたバランスの取れた見方をするためにも、相続に強い弁護士に付いてもらうのはとても良いことです。今まで見てきたように、相続に関係したルールというのは複雑なものもあり、素人だとつい忘れてしまったり、理解不足だったりすることがあります。弁護士がいれば、あらゆるケースに合わせて、事前に万全の備えをしておくことができます。
また、どの手続きをするにしても、書類を作成したり相手方と交渉したりと、面倒な作業が出てきます。場合によっては、正しい方法で行わないとやり直しとなってしまうこともあります。その点、相続問題に精通した弁護士であれば、的確に必要な手続きをこなしてくれます。スムーズに問題を解決して、相続を完了させるまでの時間を短縮できます。第三者が入ることで、お互いに冷静に考えることができ、無用な親族内や知り合いとの軋轢を回避できるというメリットもあります。上手にこうしたプロの手を借りて、相続問題をストレスフリーで解決できるようにしたいものです。
当事務所では、遺留分の支払いを受けたい方の無料相談をお受けしています。どうぞ、ご予約ください。また、着手金については柔軟な設定が可能です。