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1. 対象審判:東京家庭裁判所 令和元年12月6日審判
これは、海外で共同親権として離婚が成立していた事案で、海外の離婚について、民事訴訟法118条の要件を満たすと認めた審判例です。
家裁は、外国での父母の共同親権とする定めは日本でも有効とし、て、そのうえで、民法819条6項に基づき,父母の一方の単独親権とすることができるとして、申立人の単独親権へ変更することが子らの利益のために必要があるので単独親権への変更を認めました。
海外で共同親権となって離婚したが。日本で再婚をしたい方には、日本で単独親権に変更をしたい方には、興味深い審判です。
2. 事案の概要
事案はこんなものでした。
・この夫婦は、平成16年8月25日に婚姻。
・平成16年に長女が、平成18年に二女が生まれ、平成25年1月21日に子どもの親権を共同親権として離婚手続を開始し、海外の地方裁判所において離婚の裁判が登録され,離婚が成立していました。
・申立人は子どもを連れて,平成25年3月末頃に日本に帰国して相手方(父)は、帰国後すぐに申立人と1回電話で話した以降音信不通となってしまって養育費の支払もしていない状態となりました。
・この母(申立人)は,婚姻を予定しており交際相手との婚姻に当たって養子縁組することを希望したのですが、親権が共同親権となっていることから養子縁組を代諾することができないで困っていました。
・そこで、単独親権となることを母が望んで申し立てをしたのです。
3. 国際裁判管轄の判断
相手方はE国籍を有するが子らの住所が日本国内にあることから,家事事件手続法3条の8により,我が国の裁判所に国際裁判管轄が認められました。
4. 準拠法の判断
子らの本国法が母である申立人の本国法と同一であるから、子らの本国法である日本法による(法の適用に関する通則法32条)としました。
5. 争点の判断:共同親権の定めの有効性とその変更について
「子らの親権を申立人と相手方が共同して有することを内容とするEにおける離婚は,民事訴訟法118条の要件を満たし,我が国においても効力を有するものといえる。」「外国において子の親権を父母の共同親権とする定めが我が国において有効とされる場合において,国際裁判管轄を有する日本の裁判所は,日本法が準拠法とされるときは,民法819条6項に基づき,父母の共同親権から父母の一方の単独親権とすることができると解される。」と判断しています。
つまり、海外で離婚した場合には多くの場合、離婚時に共同親権となっていますが、日本法では、民法819条6項で共同親権から単独親権の変更ができるとしました。
6. 親権者変更の相当性があるかについて
「申立人は,相手方との離婚以降,6年以上にわたって子らの監護をしており,その監護状況について問題は認められない。他方,相手方は,離婚以来,具体的に子らの親権を行使したり,監護を担ったりしたことはなく,子らとの交流もしていない。このことに加え,申立人がGとの婚姻にあたって,子らとGとの養子縁組を望んでいるところ,子らが既にGと同居しており,Gと養子縁組することが,生活環境の安定にも資することになり,子らの利益となるといえることに照らすと,子らの親権を申立人と相手方の共同親権から申立人の単独親権へと変更することが子らの利益のために必要であるといえる。」と判断しました。
この事案では海外の父親が子に連絡をとらず、無責任にも養育も払っておらず親権を行使していないこと、再婚が予定されてその再婚相手とすでに子らが良い関係を持ち安定的な暮らしが期待できることから、子の利益となることが確認されて、親権変更が認められたのです。
もし海外の父親がきちんと養育費を払い、子との関係を維持していたら、再婚を理由には単独親権への変更は認めなかったでしょう。
今後、日本でも離婚時の共同親権となる父母が増えるものと予想されますが、別居親がこのように行方不明であれば、単独親権への変更は容易となるでしょう。