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1. はじめに
日本では、当事者間で離婚する合意ができたら、協議離婚が最も簡単です。裁判所にいく必要がありません。しかし、国際離婚で気を付けることがあります!
それは何でしょうか?
1. 離婚の準拠法が日本法である場合
もし離婚の準拠法が日本法(日本に住んでいて片方が日本人であるような場合)であれば、協議離婚をすることができますから、日本国内において有効に離婚を成立させたいだけなら、これで充分であるという考えも可能です。外国人同士の離婚であっても、離婚の準拠法は夫婦の共通常居所地が日本であることから日本法になる場合が多いので、協議離婚は可能でしょう。
ただ、日本の役所に離婚の届出がなされた協議離婚は外国人の本国においては無効であることがあるので、注意が必要なのです。もっとも、日本においては協議離婚が有効なので、再婚の際に重婚者として日本では扱われないようです。
この点は、戸籍上の先例があります(平成18年6月20日民一128回答)。離婚準拠法が日本法となったペルー人(元)妻とブラジル人(元)夫による日本国内での協議離婚は、妻の母国であるペルー法が裁判離婚しか認めていないので、ペルー国内では日本の協議離婚が承認されず、前婚は継続している状態となるが日本では有効であることから、再婚は可能であるとされて、再婚時の婚姻届が受理されたというものです。
なお、協議離婚では、離婚届のほかに提出が必要な書類があります。外国人の場合には在留カードおよび旅券(常居所が日本であると認定するため)が必要とされています。
2. 外国においても離婚を通用させたい場合
2-1. 離婚の準拠法が外国法である場合
日本国内で離婚をしたい、という場合でも、外国人のカップルでは準拠法が日本法でないことが多いので、その国の法に従った手続が必要です。裁判離婚による離婚しか認めない外国法が準拠法となる場合には、そもそも日本でも協議離婚が利用できません。
たとえば、戸籍実務では、コロンビア法が準拠の事例では、協議離婚に公証機関の関与が必要であるので、日本での協議離婚の届出においても公証機関の関与が要件であるためにコロンビア国内での手続が必要であるとしたものがあります。
離婚の準拠法が外国法となり、その外国法では協議離婚を認めている場合があり、韓国、中国、中華民国〔台湾〕、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク等があります。北欧での協議離婚は行政機関の当事者への関与や熟慮期間があることから、単に戸籍に離婚届を提出するだけの日本の協議離婚とは異なる点があります。このような差については、方式の問題(通則法34条)として、行為地法(同条2項)である日本での協議離婚の方式で単に離婚届を提出するという方法によればいいのか、離婚の問題(通則法27条)であるから、準拠法となる外国法の規定に従った方式をとる必要があるのかは、見解が分かれているのでどうするべきか、明確ではありません。
準拠法となる外国法(A国法)が、A国以外の国でその国の法律に定められた方式での協議離婚ができるとされている場合には、日本の方式で協議離婚(離婚届の提出)はできるというのが実務です。これは、あくまでも日本の戸籍実務においてどうなっているかという問題です。戸籍実務では、合意による離婚が可能な証明書の提出を求めている場合もありますが、離婚準拠法が中国法、中華民国(台湾)法である場合には、不要としているようです。
しかし、協議離婚の届出が日本の役所で受け付けられたとしても、日本でのその協議離婚の効力が当該外国で有効とされるかどうかはまた別の問題です。外国人当事者の本国において日本での離婚を通用させたい場合(たとえば、今後外国でも再婚したいというような場合、本国法を確認しなくてはなりません。)協議離婚の制度がある国は少ないですし、協議離婚制度がある国の場合でも、協議離婚制各国によりその要件は異なります。日本の協議離婚をその国が認めるかは、国ごとに異なります。
2-2. 韓国人の場合
日本に住む韓国人では離婚準拠法が韓国法となりますがこの場合は、日本において協議離婚する場合には、夫婦が駐日韓国大使館や領事館に出向いて協議離婚の申請をし、その後、韓国家庭法院(家庭裁判所のこと)の離婚意思存否確認を受けなければ、韓国当局は離婚の成立を認めない取扱いとなっています。
2-3. ブラジル人の場合
ブラジルの高等裁判所で離婚が承認される必要があり、日本の手続きも裁判手続をしておいたほうがよいでしょう。これから離婚するのであれば、夫婦共にブラジル国籍所有者ならば、ブラジル本国で手続きを行うほうが容易かもしれません。
2-4. 米国人の場合
アメリカ合衆国国籍者との離婚の場合、1990年1月1日より、夫婦のうちどちらかが日本人であれば協議離婚を認めており、それで日本では合法となっていますが。その離婚手続(協議離婚)が米国でも合法的であるかどうかは、各州の法律によることになります。
アメリカ人との離婚では、片方が日本に住んでいて調停離婚をすれば州でも認められるでしょう。当事者が訴訟手続きのために出頭していて、2人のうちどちらかが訴訟を行っている国に居住していれば、その国で法律的に認められた離婚は米国でも認められるからです。こちらを、ご参照ください。
2-5. ドイツ人の場合
ドイツ連邦共和国では、国外での離婚、婚姻解消、または婚姻無効に関する決定は、ドイツ国内の管轄当局が承認してはじめて有効となる仕組みです。この承認を受けずに新たな婚姻が締結された場合、前の婚姻が外国の法律によって既に解消されていたとしても、ドイツ法上は重婚(Doppelehe)とされます。こちらをご参照ください。
元夫婦のいずれもドイツに常居所がなく、新たな婚姻が国外で締結される場合は、ベルリンの司法省(Senatsverwaltung für Justiz in Berlin)の管轄となり、ドイツの在外公館が、ドイツ国内での手続に必要となる認証(Beglaubigungen)を行っているようです。
2-6. ペルーの場合の判例(東京家庭裁判所昭和63年2月23日審判)
「ぺルー国法によると調停離婚は認められておらず,裁判離婚のみが認められている。したがつて,本件調停を成立させることはできないが,我が国家事審判法24条に基づく審判は,資格を有する裁判官が事実審理をしたうえで法律を適用して行なうものであり,ペルー国法による判決と同視しうると考えられるので,本件において,ぺルー法に基づき裁判離婚が成立する事情が存するならば,家事審判法24条に基づく審判を行なうことが可能と考えられる。」審判離婚は有効であるという判例があります。
もっとも、ペルーにおいて現実に審判離婚が認められたのかは明確ではありません。裁判離婚しか認めていないペルー、ブラジル人が当事者の場合、裁判離婚をしておくことがもっとも確実な方法かと思われます。
3. まとめ
多くの国は、離婚では裁判離婚しか認めていませんので、そういう外国において、日本での協議離婚が承認されない可能性があることは多いのです。 家裁では、そういう場合に備えて、双方離婚に争いがない場合であっても、調停手続では通常、調停調書に「確定判決と同一の効力を有する」との文言を記載してもらうことが慣例になっています。これによって、多くの場合、外国でも認められる離婚となるといえるでしょう。しかし、調停離婚がそもそも認められない国もあり、また別に承認手続きが必要な国もあるので、外国人との離婚では、