相続人

相続人は誰なのか?(相続人の順位・法定相続分は?)


遺産分割の当事者は相続人ですが、「誰が相続人か」については民法で決まっています。

相続人以外の人に何か遺産を残したいなら、「遺贈」といいますが。遺言でこれをあげるという意思を示しておかないといけません。

遺産分割の争い、相続争いでは、だれが相続人なのかがまず明らかになっていないと解決ができません。そこで相続人が誰かをご説明します。

Contents

1 誰が民法で相続人とされているか:相続人の順位

民法では、相続に順位が決められています。

夫と妻は、生きていれば、いつでも相続人になります。その夫か妻と一緒に相続人になる人がいますが、それには順序があります。

① つぎに最初に相続人なるのは、子どもです。

子であれば、嫡出子でなくても同じです。

胎児でもかまいません。亡くなった人に子どもいなかった、もうすでに死亡していたとき、その人の子、つまり孫がいれば、代わりに孫が相続します。

ポイント
夫や妻は常に相続人
そのセットになる相続人の一番バッターは子ども
子どもがすでに死んでいたら、その子が相続人になる
これを代襲相続という。
その子がやはり死んでいたら、その子になる。
それが再代襲相続というもの。

② 2番目の相続人は?

直系尊属とよばれる、亡くなった人の親です。

これは、子とかその子など代襲者がいない時に相続人になる、二番バッターです(民法891条)。

③ 3番目の相続人は?

兄弟姉妹です。

つまり、兄弟姉妹は、お子さんも親もいないような場合にはじめて相続人になります。

この兄弟姉妹がすでに死亡していても、その子がいれば、その子が代襲して相続します。つまり、甥や姪です。しかし、この子は代襲しません(民法887、889条)。

二番バッターは親

三番バッターは兄弟姉妹

甥と姪までは代襲するが、その子はしない

もっとも、昭和55年12月31日以前に相続が開始したとき(亡くなった場合)、兄弟姉妹の子にも代襲があります。民法の改正の前だからです。

④ 養子がいるときはどうなる?

養子は、民法では嫡出子の身分を得るので、子と同じです。

養子となると、実方の父母からも相続はありますが、養親の遺産も相続します。

特別養子緑組の場合には(民817条)、実方の父母及び親族との親族関係は終了するので、養親のほうの相続

だけになります。

昔の相続の時は法改正に注意が必要!
なお、改正前の民法が適用される場合は、別の扱いになるのでかなり昔の場合には、いつ亡くなったのかで相続人が異なります。

昭和22年5月2日 までに亡くなった方の場合、家督相続が適用されることがあります。戸主が死亡すると、家督相続人が選定されているとすべての相続財産はその家督相続人に帰属してしますのです。この場合、戸籍に家督相続の記載がされているのでわかります。

2 それぞれの相続人は、どのくらいもらえるのか (法定相続分)

民法で相続人が誰かが決まっていますが、その相続割合もまた決まっています。

これを変えたいなら遺言を残すしかありません。

① 配偶者と子が相続人の時

それぞれ50%(民法900条)で、

子の間で50%を分けあいます。

非嫡出子も相続人になれるのか?

非嫡出子(ひちゃくしゅつし)とは、法律上で婚姻関係のない男女の間に生まれた子供のことです。不倫の結果の子どもとか、不義の子などともいわれます。婚姻関係を結んでいる夫婦の間に生まれた子どもは嫡出子と法的には、言われます。

従前は、非嫡出子は差別されておりましたが、2013年9月5日の法改正で、相続分が平等になりました。

これは最高裁の判決が契機になった改正です。

改正の契機になった最高裁判例(最高裁判所大法廷平成25年9月4日決定)

この判例では、昭和22年民法改正時から現在に至るまでの間の社会の動向、家族形態の多様化や国民の意識の変化、諸外国の立法のすう勢などに鑑みて、家族という共同体での個人の尊重がより明確に認識されてきたとして、法律婚という制度自体は我が国に定着しているものの、父母が婚姻関係になかったという子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず子を個人として尊重し,その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているということを理由としてます。そして、この判例では、遅くとも平成13年7月において憲法14条1項に違反していたものだという判断をしました。

つまり、婚姻制度は重要だが、母親が父と結婚していなかったという子にはどうしようもな事実を理由に他の子と差別することは、個人の尊重という点からできない、憲法14条違反だということを明らかにしたのです。

もともと、法定相続分を定めた民法においては、嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1と定めた部分があった(900条4号ただし書前半部分)のですが、この判例の後、これは削除されました。そして、相続分は同等になりました。

この改正後の民法900条は、平成25年9月5日以後に開始した相続について適用されます。つまり亡くなった方がその日以後の場合に適用されるのです。

② 配偶者と孫が相続するような「代襲相続」のときの相続割合

代襲相続では、代わりに相続するのでその親または祖父母の法定相続分と同じ相続分になります(民法901条)。

代襲相続人が複数いたら、各相続人の親とか祖父母がもらえた相続分について平等にわける割合で相続します。

③ 夫または妻と親が相続するときの相続

配偶者の相続分が3分の2で、親の相続分は3分の1です。

その親の間では平等にわけます(相続分は同じになるようにわけます)

④ 夫または妻と兄弟姉妹で相続するとき

夫か妻は4分の3で、兄弟姉妹の相続分は4分の1です。

兄弟姉妹がこの25%を平等に分けます。

しかし、異母兄弟など父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹については、他の兄弟姉妹の半分になります。

3 相続したくないときどうするのか?相続放棄をします。

相続人が、相続をしたくない場合には、相続放棄をします。相続放棄がされるとその放棄した人は相続人ではなくなって、最初からまるでいなかったように扱われるのです(民法939条)。

たとえば、子どもが三人いて、二人が相続放棄をすれば、子のもらう分はすべて残りの一人がもらえることになります。このように、相続割合を調整することもできるわけです。

注意:借金をしらないうちに相続?

放棄されることで、次順位のひとが相続人になることがあるのです。そうすると、知らないうちに相続人になって、借金を相続する!という困ったことにも、なります。

配偶者と子が相続人であったとき、子が放棄をすると初めから子がいなかったのと同様となります。そうすると、死んだ人の親か兄弟姉妹が相続人になります。しかし、誰かが放棄した場合は借金が多いから放棄するのが通常です。だから、そんな相続で相続人になるのはとっても困りますよね。

ですから、相続放棄をする方は親族の方に連絡をしてあげるべきですね。

相続放棄には「申述」という比較的簡単な手続が必要です。当事務所でも代理人として手続きをすることをお受けしています。

4 相続できるはずなのに、できない人がいる・・・・それが、相続欠格です

家庭裁判所では相続放棄が受理されたとき、相続放棄申述受理証明書をもらえます。これが後で重要な資料となるので大事に保管しましょう。

相続人なのに相続人になれない人がいます。

民法891条で「欠格事由」が決められていて、一定の人は相続人となることができないとしているんですね。

条文は、こんな感じです。

相続欠格:民法891条で相続人になれない人がきまる

次に掲げる者は、相続人となることができない。

1 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者

2 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。

3 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者

4 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者

5 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

① 相続欠格891条の1号について

相続人が、被相続人を殺したり、殺そうとしていたような場合です。正当防衛のときは、刑に処せられないので該当しません。

また、被相続人だけでなく、自分より上の順位の相続人に対する殺人についても同様になります。

殺してしまって相続財産をもらうなんて当然認められないので、当然ですね。

② 相続欠格891条2号について

被相続人が殺害されたのに、犯人を知りながら告訴・告発しなかった場合にその知っていた人は、相続人になれないよという条文です。

殺害者した人が自分の配偶者や親や子供などの場合、告訴・告発が難しいので除かれています。これも当然ですよね。

③ 891条の3から5号について

それから、遺言に関する不当な干渉をすると同様に相続人になれません。3号から5号で決められているんですね。

被相続人が遺言作成をしようとしていたのに、不当に取消や変更をさせた場合とか、遺言書を偽造・変造したり、捨てたり隠した場合、これもまあ、当然でしょう。

こういう行為をした場合でも、自己の利益のためや不利益を避けるためというような意思がない場合、どうなるのかについては、最高裁判決があります。

<最高裁判例のご紹介>

「同条5号の趣旨は遺言に関し著しく不当な干渉行為をした相続人に対して相続人となる資格を失わせるという民事上の制裁を課そうとするところにある・・・・遺言書の破棄又は隠匿行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは、これを遺言に関する著しく不当な干渉行為ということはできず、このような行為をした者に相続人となる資格を失わせるという厳しい制裁を課することは、同条五号の趣旨に沿わないからである。」というものです(最高裁判決平成9年1月28日)。

つまり自分の不利益のために隠したり破ったのでないなら、この条文は適用されないというわけなのです。法の趣旨から考えた判例になっていますね。

相続欠格事由に該当した相続人は特に裁判手続きなどをなくても、当然に相続権を失ってますし、遺贈を受けることもできなくなります(民法965条)。

でも、それは戸籍に記載されることはないので、外部にはわからないことです。相続登記の手続きでは、相続欠格者の作成した書面(相続欠格事由の存在することを認める書面・印鑑証明書付)を添付して行わない限り、相続人として扱われてしまいます。

④ いつから相続欠格の効果があるの?

相続欠格の効果がいつからかというと、亡くなった人の死亡時(相続発生時)より前にすでに欠格事由に該当していれば、いてそのときから効果があります。

死亡後に欠格事由に当たる行為があった場合、死亡時に遡って効力が発生します。でも、欠格者の子は、代襲相続人になれます(民法887条2項・3項)。その子が何か悪いことをしたわけではないからですね。

5 相続人がから外すことができる!「廃除」という制度について

これは、ひどいことをした相続人については、被相続人が生きているときに、相続人から外すことができるという制度です。

被相続人に虐待したり、もしくは重大な侮辱を加えたとき、又はその他の著しい非行があったような場合です。

そういうことをした将来の相続人がいる場合に、被相続人が家庭裁判所に請求することで、「推定相続人廃除の審判」という裁判所の判断がされます。

そうすると、相続人ではないようにできるという制度です。

民法892条で定められています。

この息子は勘当したい!というようなときに使われますが、家庭裁判所が審判をださないといけないわけなので、単に「この子は嫌いだ」というだけでは、できません。たとえば、「若い時に前科があるので恥ずかしいから、勘当したい子ども」であっても、この審判はでません。それなりの客観的行為が必要ですね。

6 誰が共同相続人かの調査はどうやってするの?

誰が相続人か、はっきりわからないとき、弁護士が戸籍を調査すればわかります。

そうすると、依頼者が知らなかった相続人がいることもあります。

戸籍謄本は、亡くなった方の死亡の記載のある戸籍謄本や除藉謄本から、その方の出生の記載がある除籍又は改正原戸籍まで、さかのぼって取得する必要があり、かなりの量になることもあります。

また、各相続人の現在の戸籍にたどり着くまで調査も必要です。相続人が亡くなっていないかの、確認が必要だからです。これをもとに、弁護士が相続関係図を作成するのが通常です。登記のためであれば、司法書士も作成してくれるでしょう。

7 他の相続人の住所はどうやってわかるの?

各共同相続人の住所が分からない場合、弁護士が戸籍の附票を取って調べてくれます。

戸籍の附票を取り寄せても、届出をしない者は市町村長が職権で当該住民票を消除することができるので、転出予定住所地がわからないこともあります。

このような場合には、公的書類では現在の住所ないし居所を探すことができないわけなので、親族などに尋ね、それでも住居地が判明しないときは「不在者」として扱っていきます。

8 誰が相続人かについて、争いがあるときはどうする?

誰が相続人なのかについて、争いがあることがありますよね。それはまとめるとこんなときです。

これは、専門的には「前提問題に争いがある場合」と言われます。

まとめ : だれが相続人かについて争いがあるとき

① 相続欠格事由(民891)があるか争いがある
② 推定相続人廃除がなされたのか、争いがある
③ 婚姻や養子縁組、離婚、離縁、認知などの効力について争いがある

このとき「前提問題」が解決するまで、実際上、遺産分割協議は進められないのです!これは驚きですよね。

よくあるのは、養子縁組を死亡直前などにしていて、認知症によりすでに養子縁組ができなかったのではないかという点が争いになる場合です。

9 相続人が誰かという「前提問題」に争いがあるとき、遺産分割審判手続において、前提問題である相続人の地位について判断したうえで遣産分割の審判をできるか?

最高裁判例は、これは、「できる」としています(最高裁昭和41年3月2日)。

<最高裁昭和41年3月2日>

でも、「審判手続においてした右前提事項に関する判断には既判力が生じないから、これを争う当事者は、別に民事訴訟を提起して右前提たる権利関係の確定を求めることをなんら妨げられるものではなく、そして、その結果、判決によって右前提たる権利の存 在が否定されれば、分割の審判もその限度において効力を失うものと解される」といっています。

つまり、家庭裁判所で誰が相続人が判断しても、あとで、民事訴訟でそれがまた判断されたとき、判断が変わってしまって覆ってしまうということなんです。

これは、「既判力が審判にはない」という難しい法律上の問題によるのです。

そのため家庭裁判所は、前提問題に争いがある事案については、調停を取り下げ、訴訟をさせるよう対応します。最後に、遺産分割が無効となると困るので、訴訟での解決を先にしたほうよいでしょう?というわけです。

しかし、これは取り下げの勧告なのでそうしなければいけないわけではありません。

10 遺言で、廃除が意思表示されていたら、相続人は誰になるか?

遺言で、廃除の意思が表示されているときは、相続人の死亡の後に審判手続きが開始します。そこで、排除されるかどうかが決まってから、相続人が誰かが決まります。

そして、これが終了しないと遺産分割の調停申立ができないということになります。

11 後で亡くなった人(被相続人)の子供が認知されたら(死後認知)、相続人は誰になるか?

ある人が亡くなり相続開始した後、認知がされていたことがわかると、認知された子も相続人になります。ですから、その人も相続人として遺産分割協議にいれてあげないといけません。

遺産分割協議が成立したあとでも、「死後認知」によって子どもが相続人になることがあるんです。それは、死後認知といいますが、被相続人の死後に子どもが認知されるという場合です。死後認知されたら、認知された子どもは第1順位の相続人として相続権を取得することになります。

死後認知はどうやってされるかですが、認知してほしいという「認知の訴え」が、父親の生前のみではなく、父親の死後でも3年以内ならば提起することができるのです(民法787条ただし書)。ですから、その裁判で認知が認められると、父親の死んだときに相続人であったという扱いがされます(民法784条)。

でもそのときには、すでに遺産分割が終わっていた場合どうするのでしょう?え

このときには、認知された相続人は、価額のみによる支払の請求ができるとされています。つまり、お金でもらうというわけです。すでに不動産とかは分けてしまっているからです。

本当なら、遺産分割協議に加わるべき人であったので、可哀そうかもしれませんね。

でも、せっかく協議が成立しているので民法は、金銭で解決をするために特別な規定を用意しているんです。す。民法910条です。

第910条

相続の開始後認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払の請求権を有する。

現実には、これは他の相続人に対して金銭を請求することになります。通常、話し合いがなかなかまとまりませんし、証拠が任意ではでてこないこともありますので、民事訴訟で請求します。

12 相続人の行方不明のとき、誰が相続人になるのか?

行方不明となってしまって、調査をしてもその住所が判明しない人がいる場合、その者を不在者として相続の手続を進めることができます。

しかし、このとき、利害関係人として財産管理人の選任を家庭裁判所に求めなければなりません(民241条)。

そのためには、不在者の(日本での)最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。

そして、遺産分割協議はこの財産管理人を交えて行います。

そして、遺産分割調停の成立のためには、家庭裁判所の許可を得なければならないとされています。

これは面倒に思われるかもしれませんが、裁判所が財産管理人を選任すれば、そのあとはスムーズに進みます。管理人は弁護士がなることがおおく、その報酬も非常に高いということもないので、この手続きを使ってでも迅速に遺産分割をすすめることがよろしいとおもいます。

13 相続人が生死不明のとき、相続人は誰になるのか?

共同相続人中に生死が不明で失踪宣言の要件(民法30条)を備えている場合には、利害関係人が、不在者の住所地の家庭裁判所に失跡宣告の申立をすることができます。

失踪宜告がなされると、不在者は死亡したものとみなされますので、その不在者にも相続が開始しますが、相続人を確定させられるので手続きが前に進みます。

不在者に相続人がいればその人が相続人になり、それが明らかでないときは、家庭裁判所が選任した相続財産管理人が遺産分割協議の当事者となって参加します。

通常は弁護士が管理人になります。

相続財産管理人は、調停成立のときには、家庭裁判所の許可を得ますが、特に不当な遺産分割でなければ許可はでますので、調停が成立できます。

14 相続人が子ども(未成年者)のとき、相続の手続きは誰がするのか?

相続人のなかに未成年者がいる場合、その法定代理人、つまり親ですが、が、代わって遺産分割協議を行います(民法824条)。

しかし、利益相反行為となる場合が多く、そのときには特別代理人の選任が必要になります(826条)。

つまり、同じ遺産を親と子でもらうときは、親がたくさんもらうと子が不利益になるので、利益相反関係になります。

利益相反になるのはどんなときか?

①親権者と未成年者とがいずれも共同相続人で、親権者が未成年者の代理人としても遺産割協議を行う場合

②親権者を同じくする複数の未成年相続人がいて、親権者がそれぞれの未成年者の代理人として遣産分割協議を行う場合(最高裁判例 昭和48年4月24日によります)。

それから、長男と次男がいていずれも相続人で、親がこの二人の子の代理をする場合、やはり、子二人の間で不平等となることがありえるので、利益相反関係になります。

そういうときには、「特別代理人の選任」が必要です。

特別代理人の選任は特に難しい手続きではないですし、特別代理人が選任されれば、きちんと協議をして分割が進められます。

特別代理人は、①の場合、その子の代理人になります。②の場合、親権者は、の1人の代理はできるので、他の子については、特別代理人の選任を家庭裁判所に請求します。

子の特別代理人は、通常、弁護士で、子の代理人となるので子の意向を確認してその子の利益を保護します。

自分の子どものことを知らない弁護士が守るのかと思われるかもしれませんが、まれに、子どもの財産を自分がもらう親もいますし、ある子を可愛がってその子にたくさんもらわせるということをする親もいますので、子の保護のための制度なのですよね。

このような場合、面倒でも、速やかに選任の請求をして遺産をきちんと分けましょう。

15 相続人のひとりが胎児のとき、誰が相続人になるのか?

胎児は、相続については、既に生まれたものとみなされます(民法886条)。

ですので、まだ生まれていなくても、生まれたら、相続人として遣産分割の当事者となることになります。

ただし、胎児が死んで生まれた場合には、この条文は適用されませんので、そもそもいなかったことになります。

ですので、相続人に胎児がいる場合には出生を待ってから、遺産分割協議をすることになります。そうしないと、そのお腹の赤ちゃんを除いて協議をしても無効になってしまいます。

相続人がお腹の赤ちゃん(胎児)が相続人のとき、母が法定代理人となって、遺産分割協議を行うことが可能なのでしょうか?

この点は、判例はないようです。

民事訴訟では、胎児が生きて生まれるかわからないということから、損害賠償請求に関してですが、母親が代理人となって損害賠償請求はできないという判例があります(昭和7 年10月6日の古い判例ですが)。

ですので、やはり、赤ちゃんが生まれてきてから、遺産分割協議はするべきでしょうね。