1. 養育費とは
養育費とは未成年の子の監護や教育のために必要な費用のことで、一般的には、子どもが経済的・社会的に自立するまでに要する費用を意味します。衣食住に必要な経費,教育費,医療費などがこれに当たります。よって、成年であっても経済的に自立していないような場合に養育費を支払う義務が続きます。子どもを監護している親が他方の親から養育費を受け取ることができるという制度は一般的に海外にもあり、その国の法で義務が定められています。
日本の法律では、離婚によって親権者でなくなった親でも、子どもの親であることから親として養育費の支払義務を負っています。
2. 国際裁判管轄とは
国際裁判管轄というのは、ある事件がどこの国で裁判ができるのかという問題です。
日本の裁判所に養育費についての裁判を求めたいのであれば、日本にその子供の養育費に関する国際裁判管轄があるかということが、問題になります。
国際裁判管轄については以下に詳しい説明があります。
3. 養育費の国際裁判管轄(どこの裁判所で養育費の命令を出してもらえるか?)
相手方の住所地国に国際裁判管轄があるという考えがとられていますが、子の利益保護の見地から、子の住所地国にも国際裁判管轄を認める見解が有力です。
外国人の元夫婦であれば、双方がいずれも日本に住所を有している場合には、日本に国際裁判管轄を認めることが多いので、日本に当事者の全員が住んでいる場合には、外国人の夫でも日本の裁判所に管轄があります(東京高判平成18年10月30日)。
海外に母子がいるような場合、相手方である父親が日本の居住しているのであれば、日本の裁判所の家事審判で養育費について決定をしてもらうことができるでしょう。
母子が日本に住んでいて海外に父がいるような場合も、子が日本に住んでいることから裁判管轄は認められるでしょう。しかし、海外でその最終の決定が意味を持つかという点では疑問があります。その国で執行ができないのであれば、日本の裁判結果は、絵餅となることもあるからです。
4. 養育費の準拠法
養育費についての準拠法は、「扶養義務の準拠法に関する法律2条」によって決まります。同条によると、準拠法は、原則として扶養権利者の常居所地法によりますので、養育費をもらう親が住んでいる国の法律によります。準拠法とは、管轄のある裁判所においてどの国の法律を使って養育費を決めるかという問題です。日本では、「扶養義務の準拠法に関する法律」という法律があって、それを規定しているのでその法律で決まった国の法律が準拠法となります。
アメリカに母子が住んでいる場合、アメリカのその州法が準拠法となって、養育費金額が決まり、それを日本の家庭裁判所が適用して判断することになります。
仮に、養育費をもらう親が住んでいる国の法では、扶養義務者から扶養を受けることができない場合は、当事者の共通本国法(父母がおなじ国籍ならその国の法のことです。)によるとされて、それでも扶養義務者から扶養を受けることができない場合は、日本法によるとなっています。そうやって、子の扶養される権利を守っているのです。
また、未成年者が何歳までかは各国の法できまるのですが、それについては子の本国法によります(法の適用に関する通則法第4条)。