不動産を相続した時には、名義の変更をするために相続登記を行います。どのように申請をすればいいのでしょうか。また、現在のところ義務付けられてはいないものの、相続登記を行わないとどのようなデメリットがあるのかを説明します。
1. 相続登記の申請と種類について
相続登記の申請の手順では、まず、不動産の登記事項証明を取得して所有者などを確認します。次に、戸籍、住民票、固定資産評価証明書などを揃えて、相続人を確定し、相続登記申請書類を作成して、郵送等で申請します。
不動産の登記事項証明書は、法務局で確認可能です。取得するには、法務局まで出向くか、ネット上の登記情報提供サービスを利用することもできます。取得には手数料がかかります。
戸籍謄本は戸籍のある自治体で取得しますが、仮に現在住んでいるところから非常に遠く、取りに行くのが難しければ、郵送で取り寄せることもできます。その際には、申請書・返信用封筒・手数料・本人確認書類のコピーを同封します。手数料は郵便局で定額小為替を購入し、同封します。郵送以外に、電子申請ができる場合もあります。
固定資産評価証明書は、固定資産の所有者や固定資産評価額、課税標準額などが記載されている書類で、市区町村の役所で入手可能です。手続きに必要なものは、戸籍謄本等や故人の除籍謄本などです。相続登記はいつまでに完了しなければならないといった期限はありませ。ただ、不動産を売却したり、担保に入れるという予定がある場合は、相続登記を早めにしておくのがベストです。
相続登記の申請は、登記権利者と登記義務者で行いますが、権利者だけで申請が可能な場合もあります。権利を失う者がない場合は、取得する者が単独で申請します。相続登記の申請には固定資産税評価額の1,000分の4の割合の税金がかかります。支払いは現金ではなく収入印紙で行います。
相続登記の種類は3つあります。1つ目は、法定相続分どおりの相続登記です。この場合は通常、共同相続人全員が申請しますが、共同相続人の中の1人が代表して申請することも可能で、遺産分割協議を終えてから、被相続人名義から直接、取得した相続人に相続登記をするという流れになります。遺産分割協議で話し合いがつかない場合や、遺言執行に不服がある場合は、共同相続登記になります。
2つ目は、遺産分割協議による相続登記です。遺産分割によって相続人一人の単独所有になる場合は、所有権移転登記で単独申請、遺産分割による持分移転登記は共同申請になります。
3つ目は遺言書による相続登記で、被相続人の遺言の内容に基づいて、相続登記か遺贈登記を行います。遺言書に「○○に相続させる」とあれば相続登記、「○○に遺贈する(与える)」とあれば遺贈登記になります。遺言書が公正証書遺言でない場合は、家庭裁判所での検認の手続きも必要になります。
相続登記は自分でもできますが、時間がないとか、やり方がよくわからない場合は、司法書士か弁護士に相談するのがいいでしょう。書類の作成だけなら、司法書士にお願いすると費用が安くて済みます。もし、相続登記をしていなかったために身内の間でトラブルが起きてしまった場合は、弁護士に依頼するとよいでしょう。
相続登記の具体的な手続については、以下のWEBページ(外部サイト)もご参照ください。
【相続登記】亡くなった方から不動産を相続する際の名義変更(不動産名義変更手続センター)
2. 相続登記をしないデメリットと弁護士からのアドバイス
相続登記は現在のところ義務化されていませんが、2024年から義務化されており、相続発生後3年以内に登記と名義変更を行わなければならなくなっています。
所有者不明の空き家が増えていることを受けて、このように改正されることになりました。登記しないことのメリットは手数料や税金がかからないだけで、デメリットのほうが多いです。
その1つは、相続登記が済まないうちに他の相続人が亡くなった場合に、手続きに手間がかかるということです。登記をしていない間は相続人全員が法定相続分に従って不動産を共有しいますが、相続人の中の誰かが亡くなると、その権利を配偶者や子供などが引き継ぐことになります。例えば、亡くなった方に子供が3人いた場合、相続人がそれだけ増えることになります。遺産分割協議書で相続登記をする際は、相続人全員の同意と印鑑証明が必要になるので、相続人が増えるとそれだけ手間も増えることになります。
登記を放置していてかなりの年月が流れていると、相続人同志の関係性も薄れ、遺産分割についての同意を得るのも難しくなります。ほとんど面識がない親戚が相続人になるという場合もあります。近い親族なら話がすんなりまとまっていたかもしれませんが、あまり面識のない人、もともと仲が悪い親族が相続人になってしまった場合は、遺産分割協議での相続登記が難しくなるので、早めに登記をしておくのが最善です。
また、相続登記をしていないと、不動産を売却したり担保にしたりできないというデメリットもあります。不動産を相続した場合、それを登記することによって初めて、自分が所有者であることを証明できますが、相続登記していないとそれを証明できないので、売ることも担保にすることもできません。登記手続きには時間がかかるので、買い手が見つかったのに登記が間に合わず、売買が成立しないというリスクもあります。
相続登記をしていないことの別のデメリットは、不動産の相続持ち分を差し押さえられてしまうことがあるということです。仮に相続人AとBがいて、Aに借金があるとします。遺産分割協議をしてBがすべての不動産を相続することになった場合、相続登記も済ませていれば、Aの債権者はその不動産の差し押さえはできません。ところが、登記をしていないと、Aの債権者はAの相続持ち分を差し押さえられるので、Bがすべての不動産を相続することになっていても、Aの債権者が差し押さえた不動産の持ち分は競売にかけられてしまいます。Bがすべての不動産を取得したいのであれば、債務を全額弁済して、差し押さえを解いてもらう必要があります。
相続登記をしていないと、相続人の中の誰かが勝手に法定相続分で登記をして、自分の持ち分を売却してしまうこともあります。法定相続分による相続登記は、他の相続人の同意がなくても行えるからです。例えば、ABCという3名の相続人がいて、法定相続分がそれぞれ3分の1というケースでは、遺産分割協議をしていなくても、相続人中の1名が自分の持ち分に関して相続登記をすることができます。
ただし、Aだけがすべて継承するといった内容だと遺産分割協議書が必要なので、遺産分割協議の前にAだけがすべてを相続するといった登記は行えません。もし、相続人の誰かが勝手に相続登記をしていたことがわかって、勝手にされた相続登記の内容に納得できないのであれば、遺産分割協議を行って、遺産分割協議書に基づく相続登記をすることができます。
相続登記をやり直す場合は、相続登記を全部抹消することもあれば、一部だけの更生で足りることもあるので、どうすべきかは弁護士に相談するのがいいでしょう。とは言え、最初から速やかに相続登記をすることで、このようなトラブルは避けることができます。
被相続人名義での火災保険・地震保険の契約をそのまま引き継いだ後、保険が適用される火災や地震があった場合に、相続登記をしていないと保険料がスムーズに支払われないことがあります。保険会社によって対応は異なりますが、その不動産に相続人の中の1人が住んでいてその人が保険料を払っていたとしても、保険金は法定相続人全員に分割して支払われるという可能性もあります。速やかに保険金を受け取るためにも、相続登記を済ませておくのがベストと言えるでしょう。





