「離婚後も子どもにとってよい環境を保ってあげたい」と願う親は多いです。日本でも2026年施行の改正民法で導入された「共同親権」。これは、父母が離婚後も協力して子育てを行う「共同養育」の実現を後押ししています。
そこで、共同親権と共同養育にご興味がある方に、その基礎知識をご説明し、子どもにとってのメリットを解説します。
専門弁護士と連携し、共同養育計画書を作成して円滑に離婚後の共同養育を進める具体的な方法もお伝えし、単独親権との違い、海外の状況も適宜ご紹介していきますね。子どもの幸せを最優先し、離婚後も父母で協力し続けることは、言うは易し・・・・で簡単ではありませんが、実践的なヒントやトラブル防止策もお伝えしていきます。
Contents
1. 共同親権と共同養育の基礎知識
離婚では夫婦の関係が終わるのですが、親と子の関係は永遠!共同親権と共同養育は、この親子の絆を離婚後も大切にし、子どもの成長を父母双方で支えていくための制度です。しかし、現実にはいがみ合って離婚する父母がうまくパートナーになることは簡単ではありません。
1-1. 共同親権が民法改正で採用された理由
2024年の民法改正により、日本では離婚後も父母が共同で親権を持つ「共同親権」の制度が導入されることになりました。この改正の背景には、時代の変化とともに高まる子どもと親との関係の維持が必要であるという意識と、国際的には離婚後の共同親権が可能ではない国はほとんどないという状況があったと思います。
これまでの単独親権の強制制度では、離婚後に一方の親のみが親権を行使することになるので子の奪い合いも激烈でした。他の親が子育てへの関与が難しくなってしまうケースも多くありました(今後も子育てに興味がない親についてはこの問題はもちろんありますが・・・・)。
しかし、子どもの健やかな成長には、父母双方からの愛情と継続的な関わりが不可欠である(少なくとも望ましい)ということは事実であろうと思いますし、家庭裁判所でもその認識が広まっています。法務省はこの法改正についてのパンフレットで「父母が離婚後も適切な形でこどもの養育に関わりその責任を果たすことは、子供の利益を確保するために重要です」とうたっています。子どもの利益を保障することを最大の目的として父母で離婚後もどう協力していけるかを、離婚時には冷静に考えていく必要があります。
法務省のパンフレットはこちらです。
1-2. 共同養育の理念:離婚後も父母が協力して子どもを育てる
共同養育とは、離婚後も父母が互いに協力し、子どもの養育に責任を分かち合うという考え方、そしてその実践を指しています。離婚は夫婦の関係の終わりですが、親子関係は終わらないという大前提に基づいています。そして、子どもにとってみれば、父母双方から愛され、支えられていると感じることは、その精神的な安定に大切なことであるからできるだけ共同養育が実現できることが好ましいのです。
しかし、共同養育の理念は、理念先行で実戦してもうまくいきません。親権が共同であるということ共同養育は別の問題で、本当に父母が協力体制を構築できるかが成功のキーです。共同親権は子供に関する重要な事項を共同で決定するというルールですが、共同養育は毎日、365日の子育てを親が分担するという日々の生活のルールなのです。共同親権を選択しても共同養育は選択しないということも可能ですが、ここでは共同養育を選択する場合についてご説明します。
1-3. 単独親権との違い:共同親権がもたらす子どもの利益
上記で書いたように共同親権というのは共同養育とは別のことで、子育てをどうするかというルールではなく、意思決定のルールです。単独親権が強制されていた従前の日本の民法制度では、離婚後、親権を持つ一方の親が子どもの養育に関する全ての法的権限と責任を負っていて、全て一人の親が決められました。これに対し、共同親権制度では、離婚後も父母双方が共同で親権を行使して、重要な事項を共同で決めます。
共同親権のもとでは、子どもの進学、医療行為、居住地の変更など、重要な事項については、父母双方の合意が必要となります。これにより、子どもの養育に関する意思決定に両親が関わる機会が増え、より多角的な視点から子どもの利益が考慮されるようになるというメリットがあります。また、子どもは、両親が協力して自分を育てているという実感を持つことで、父母から大事にされているという実感を感じやすくなります。単独親権では、別居する親は子の重要事項について意見を言うこともできないので、親権を持たない親と子の関係が希薄になりがちでしたが、共同親権では、両親との継続的な関係を維持することで、子どもの自己肯定感を高める効果が期待されます。しかし、一方で、共同で意思決定ができない場合には紛争が起きてしまって、子がそれに振り回されるという問題もあるのです。
1-4. 海外先進国での共同親権の状況
日本における共同親権の導入は、国際的な潮流に合致するものです。アメリカ、カナダ、イギリス、フランス、ドイツ、オーストラリアなど、多くの欧米先進国では、すでに共同親権が離婚後の子どもの養育の標準的な制度として広く採用されています。
これらの国々では、子どもの権利条約の精神あるいは憲法に基づき、「子どもの最善の利益」を追求する観点から、離婚後も父母双方との関係を維持することが子どもの健やかな成長に不可欠であると考えられています。共同親権の法的枠組みは各国で異なりますが、多くのケースで、父母が協力して子どもの養育計画を策定し、定期的な情報共有や親子交流を通じて、子どもが両親から継続的なサポートを受けられるよう法的に保障されています。日本の法改正も、このような国際社会の共通認識と経験を踏まえたものであり、子どもの福祉を向上させるための重要な一歩と言えるでしょう。
2. 子どもの幸せを最優先 共同親権と共同養育のメリットと成功の秘訣

2-1. 子どもの心理的安定と自己肯定感の向上
離婚という事件は、親にとっても子どもにとっても、大きな環境の変化となります。子どもにとっては何が起きているかわからないこともあって、大きな不安やストレスを伴ってしまいます。しかし、共同親権を選びかつ子育ても分担するという共同養育も選んで、双方の親がうまくそれを機能させられたら、子どもの不安はミニマムになります。父母が協力して子育てに関わることは、子どもが「自分は父母双方から愛されている」と感じる機会を増やすと考えられており、これにより子どもの自己肯定感が育まれることにつながると考えられます。父母の一方との関係が途絶えると子は精神的に不安定になりがちであるといわれているのです。また、父母が離婚後も協力し、一貫性のあるルールのもとで監護を分担できると、子どもは混乱することなく、健やかに成長できる環境が整います。安定した監護環境は、子どもの情緒的な発達に不可欠ですので、まずは親が努力してルール作りをしていくのがよいでしょう。反対に、ルールが不明確な共同養育は紛争を再燃させやすく、子どもにとってストレスになることも頭に入れておきましょう。
2-2. 子育てへの責任感の分担
共同親権・共同養育がうまく機能すると、父母双方が子育てへの責任感をもつことができます。単独親権の場合、親権を持たない親の多くは、子育てから距離を置く傾向が見られますが、共同親権下で共同養育を機能させられる場合、父母ともに子どもの養育に関する意思決定権を持ちつつ、養育の責任を分かち合うことになって、父母双方に「親としての役割」が明確に意識されますから、子どもの成長に対してより深く父母がコミットできるようになります。例えば、学校行事への参加、習い事の送迎、健康管理など、日々の具体的な子育てタスクを分担すれば一方の親に集中しがちな負担が軽減され、父母それぞれが仕事にまわせる時間も増えますし、ワンオペでないので、生活に余裕が出ます。そして、子育ての喜びや困難を共有していければ父母にとっても良い監護環境となっていくのです。子どもの健全な発達を支えるには、共同養育そのものが父母にとって、ストレスにならないということも大切ですから、あまり無理をしないで実戦をしましょう。
2-3. 共同養育における必要な親のコミュニケーション
共同養育を成功させるためには、父母間の円滑なコミュニケーションが不可欠です。離婚後も子どもの養育に関して協力し続けるためには、子どもの健康状態、学習状況、友人関係、精神的な変化など、あらゆる情報を定期的に共有し、共通の認識を持つことが求められるからです。例えば、メールやメッセージアプリ、あるいは定期的な面談を通じて、子どもの状況について共有して意見を言い合いつつ、養育に関する重要な決定は共同で行う必要があります。この際、互いの意見を尊重し、感情的にならず、常に子どもの最善の利益を最優先するという共通の目標を持つことが重要です。建設的な対話を通じて養育についての信頼関係を築くことで、養育計画の見直しや予期せぬトラブルが発生した際にも、協力して解決策を見出すことが可能となります。コミュニケーションは共同養育の土台であり、その質が子どもの幸福に直結するというわけです。
3. 専門弁護士と実現しよう 共同親権・共同養育の具体的な進め方

離婚後の共同親権や共同養育は、新たな法制度のもと、子どもの健やかな成長を支えるための重要な選択肢となりました。しかし、その実現には法的な知識だけではなく、協力関係を作って、子をさらなる紛争に巻き込まないという親の覚悟も必要ですので、経験値のある専門の弁護士のサポートが不可欠です。次には、弁護士と共同親権・共同養育を進める具体的なステップをご説明していきます。
3-1. 共同親権・共同養育を目指す離婚協議のポイント
共同養育の実現は、まず離婚協議の段階から始まります。夫婦間での合意形成が最も重要となるこの段階ですが、この段階でスムーズに話がまとまるのであれば、弁護士は限定的関与でもかまわないでしょう。
まず、父母で今後の養育について大まかな話し合いができたのであれば、弁護士は、法的な観点から片親の代理人として養育計画を確認して今後、トラブルなくできるないようかについて依頼者と検討します。この段階で片親は養育の分担まではしないという判断になれば、共同養育はあきらめましょう。その場合、共同親権を合意して面会交流だけをしていくか、単独親権で面会交流をしていくかになります。
養育も分担していくことにした場合でも、感情的になりがちな離婚協議においては父母がうまく細部について話し合えないこともあるので、そういう場合には、弁護士が、依頼者のために養育計画案を作って他の親にお見せして意見を聴くというような介入ができます。その場合、弁護士としては依頼者の利益のみでなく子どもの利益を最優先した建設的な議論へと導くことに努めることになるでしょう。
共同養育の具体的な内容について、親権者の役割分担が決められたら、続いて、養育費も決めていくことになります。将来的なトラブルを避けるための明確な合意形成を目指し、双方が納得した形で文書化をしていきます。
3-2. 家庭裁判所での調停における弁護士の役割
離婚協議が短期的にうまく細部までまとまらない場合は、家庭裁判所での調停を利用することになります。この調停の場でも、弁護士は依頼者のサポートをし、裁判所に出す書類を用意し、依頼者が考える共同養育計画(監護分掌の内容)を裁判所に説明して相手方にも理解を求めていってくれます。
弁護士は、依頼者とともに調停に出席しますので、貴方が調停委員に対して意向や主張を伝える必要はありません。裁判官にもしっかり検討をしてもらうためには、しっかりと主張を弁護士が書面として準備するのが通常です。共同親権に関する新たな民法の規定や一般的な考えに基づいた主張を展開したり依頼者が子の利益となると考える養育計画を説得的に説明していくことが、ここでは重要です。特に、最終的に調停合意ができなくて審判になる場合には調停期日に同席した調査官が調査官調査報告書を書くことになるので、依頼者が子の利益について具体的に考えていること、他の親についても思いやりのある対応ができていることをアピールすることが重要でしょう。今後の共同養育(監護の分掌)の実施は、長い道のりになります。親はいわばジョイントベンチャーの共同出資者同士のように、双方が距離を置きつつも、しっかりと親としての目標(子の健全な成長)を共有しておく必要があります。弁護士は、そのときには、依頼者にその視点を与えるという重要な責任があるといえます。
さらに、調停が成立した際には、その内容をまとめた調停調書が作成されます。これにより、その後の共同養育のルールが明確になり安定的な養育ができていきます。
3-3. まずは共同養育計画書の作成をしましょう
離婚しても、共同親権・共同養育をしていきたいと思っているのなら、実際に子どもを父母で育てていくため、具体的な監護の分担ルールをかいた「共同養育計画書」を作ってみましょう。父母でそれが作れるならベストですが、できそうもないなら、弁護士と計画書を作って他の親と話し合ってみましょう。調停を成立させる場合には、この計画書も監護の方法の合意として調停調書にします。
3-4. 子どもの未来を考えた具体的な計画作成を!
共同養育の計画では、子どもの生活全般に関わる具体的な事項を盛り込む必要があります。例えば、子どもの居住場所、教育方針、医療に関する決定、情報の共有方法といったことが挙げられます。
また、子どもの成長とともに必要となる計画の見直しについても、あらかじめ計画書に盛り込むことで、将来的な話し合いの指針とすることができます。
明確なルール作り(柔軟性とともに実現をするべきは明確なルールです)
共同養育計画書は、今後の父母の「ルールブック」となりますす。そのため、あいまいさを排除し、できる限り明確なルールを定めることが重要です。例えば、「面会交流は月に数回」ではなく、「毎月第1・第3週末の土曜日午前10時から日曜日午後6時まで」といった具体的な取り決めが必須です。
もっとも、子どもの成長や父母の状況変化は避けられないため、同時に柔軟性も持たせる必要があります。将来的な変更の可能性を考慮し、ルールの中に「3年後に見直しのために協議をする」といった条項を盛り込むなど、柔軟に対応できる仕組みも含めておくとよいでしょう。明確なルールと柔軟性のバランスを保ちながら、実効性のある共同養育計画書を作成することで、父母双方が安心して、ルールを守りつつ信頼関係を作って、双方が子育てに取り組めるようになるでしょう。
4. 離婚しても父母で子どもを育てる:共同養育(監護分掌)を継続するための秘策・ヒント

離婚後も父母が協力して子どもを育てる共同養育は、スムーズにできるのであれば子どもの健やかな成長にベストです。しかし、離婚という経験で感情的なしこりが残っていると、父母が葛藤を乗り越えるのが難しいこともあります。父母が、長期にわたって円滑な関係を維持することは簡単ではありませんので、ここでは、共同養育を継続し、子どもの幸せを守るための具体的な秘策とヒントをご紹介します。
4-1. 定期的な父母の話し合い(メール等で)で子どもの情報を共有する
共同養育を成功させる上で、最も重要な要素の一つが「父母間の定期的なコミュニケーション」です。子どもに関する情報は、一方の親だけが知っているのではなく、常に共有されるべきだと考えて一緒に成長を喜びましょう。子どもの学校での出来事、健康状態、習い事の進捗、友人関係など、日々の些細な情報であっても、父母が把握していることで、子どもも両方から一貫したサポートを受けられて安心します。
直接会うことが難しい場合や、感情的な対立を避けたい場合には、メール、SNSやメッセージアプリ、共同養育支援のアプリを活用することが有効です。これらのツールは、記録が残りやすく、冷静なやり取りを促してくれます。一方的な連絡ではなく、相手からの返信をもらいたい場合にはそれを明確にして返信期限を決めるなども双方が誠実に対応するために重要でしょう。情報共有は、父母間の信頼関係を築く基礎になります。
4-3. 子どもの成長に合わせた計画の見直し
子どもは日々成長し、その成長段階に応じて、必要な協力関係が変化していきます。乳幼児期、学童期、思春期と、それぞれの時期で子どものニーズは大きく異なっていくので親が分担するべきことも異なってきます。
進学先、習い事の変更、友人関係の変化、あるいは子どもの精神的な状態など、*見直しが必要な時には父母で話し合いの場を設け、養育についての再ルール作成を検討しましょう。そういうときには、子どもの意見や希望を尊重することも重要ですね。子ども自身が自分のしてほしいことについて意見を述べる機会を与えてあげることで親子の信頼も造成され、子の自己肯定感を高めることができるでしょう。父母が協力して子どもの成長に寄り添い、計画を適宜適応させていけると、共同養育の質は高まります。
4-4. トラブルを未然に防ぐための情報の共有とADRの利用
共同養育においては、どんなに努力しても意見の相違や小さなトラブルが生じる可能性があります。こうしたトラブルを未然に防ぐためには、日頃からのオープンな情報共有が重要ですが、なんでも早めに相手に伝えて誤解が深まるのを防ぐことがよいでしょう。
しかし、父母間の話し合いだけでは解決が難しい場合や、感情的な対立が避けられない状況に陥ることもあります。そのような際には、ADR(裁判外紛争解決手続)の利用を検討しましょう。ADRとは、裁判所を介さずに、第三者の専門家(臨床心理士など)が関与して紛争解決を図る手続きのことです。民間のADR機関が次第に増えているので調べてみましょう。
ADRを利用することで、感情的になりがちな話し合いに冷静な視点が加わり、最適な解決策を見出すことがより簡単になるでしょう。第三者が間に入ることで、父母間のコミュニケーションが円滑になり、子どもの利益を最優先とした合意形成ができます。ルールの見直しの際にADRの利用を検討することは、共同養育(監護分掌)を継続するためには良い選択になると思います。
5. まとめ
共同親権や共同養育は、離婚後も父母が子どもの幸せを最優先するための重要な制度であり、理念です。民法改正で共同親権が導入された背景には、子どもの健やかな成長を保障し、父母双方との継続的な関係維持の重要性があります。単独親権では得られにくい子どもの心理的安定や自己肯定感の向上は、共同親権・共同養育がもたらす大きなメリットですが、うまくいかないと子どもにストレスを与えることもあります。その実現には父母間の協力と明確なルールが不可欠です。父母だけではうまくルール化できない場合には専門弁護士と具体的な養育計画(監護分掌のルール)を作っていくことで、父母が子どもに関与することを絶え間なく続けることができるでしょう。






