ご家族の相続が発生した場合に、しなければならないことは「遺産分割」です。その手続きは複雑で、誤解や知識不足から、解決までに家族関係が悪くなったり、精神面でストレスがたまることも少なくありません。
この記事では、遺産分割の基本から、相続人調査や遺産分割協議の進め方、さらには協議がまとまらない場合の調停や審判といった法的解決策まで、誰にでもわかるように簡単に説明します。そして、遺言書の作成や専門家への相談、生前対策といったトラブルを未然に防ぐ秘訣もご紹介。これを読んで、日本での相続・遺産分割がどうやって解決できるのか、わかるようになっています。専門弁護士の説明ですので、貴方の問題を解決するためにぜひ、参考にしてください。
Contents
1. 遺産分割とは?
遺産分割とは、亡くなった方(被相続人)が残した財産(遺産)を、複数の相続人がいる場合に、それぞれにどのように分けるかを決める手続きのことで、遺言がない場合には、これを終わらせないと相続は終わりません。この手続きは、故人の意思を尊重しつつ、残された家族が円満に遺産の問題を解決するのに、重要なものです。
2. 遺産分割の基本を簡単に理解しましょう
遺産分割は、被相続人が亡くなり相続が発生した際に、遺言書がない場合や、遺言書に遺産分割の方法が具体的に指定されていない場合に行われます。相続人全員が参加して、故人の残した相続財産(不動産、預貯金、株式などのプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含む)をどのように分けるかを話し合って、合意を目指していくのです。
この話し合いを通じて、各相続人がどれだけの財産を受け取るか、また、その財産をどのように評価し、公平に分配するかを協議して決定します。相続財産の中には、現金のように簡単に分けられるものもあれば、不動産のように分割が難しいものもあります。そうした多様な財産を、相続人全員が納得できる形で分けることが、遺産分割の基本的な目的となります。遺産が多い場合や、いろいろな種類があると分けることは簡単ではありませんので、ぜひ、弁護士のサポートを借りましょう。
3. 遺産分割でトラブルになりやすいケースはどのようなものか?
遺産分割は、家族間の手続きであり感情的な対立が絡みやすいです。また、これまで相続人が疎遠な関係であった場合には、トラブルになりやすく、協議での解決は困難です。
特に解決が難しいケースをご説明します。
- 特定の財産への思い入れが強い場合:
実家や先祖代々の土地など、特定の相続人が思い入れを持つ財産があり、それを独占したいと主張する場合。
- 相続人同士の貢献度への認識の違い:
生前に被相続人の介護をしていた、家業を手伝っていたなど、特定の相続人が「自分は他の相続人よりも貢献した」と感じ、より多くの財産を求める場合(寄与分)。
- 生前の贈与(特別受益)がある場合:
特定の相続人が被相続人から生前に多額の贈与や援助を受けていたにもかかわらず、その分を考慮せずに遺産分割を主張する場合。
- 連絡が取れない相続人がいる場合:
相続人の中に疎遠な方や行方不明の方がいると、話し合いを進めることができず、手続きが停滞してしまいます。
- 遺産の評価が難しい場合:
未公開株や骨董品、美術品など、客観的な評価が困難な財産が含まれる場合、評価額を巡って意見が対立することがあります。
4. 遺産分割を解決する3つのステップ
遺産分割を円満に進めるためには、手順を踏んで冷静に対応することが重要です。遺産分割を解決するためには、3つのステップがありますので、これらのステップを理解し、適切に進めることで、遺産分割の解決を目指すことができます。
4-1. ステップ1 遺産と相続人の調査
遺産分割を始めるにあたり、まず最初に行うべきことは、故人がどのような財産をどれだけ持っていたのか、そして誰が相続人になるのかを正確に把握することです。この調査が不十分だと、後々の話し合いで新たな財産が発覚したり、相続人が漏れていたりして、協議が中断したりトラブルの原因になったりすることがあります。
具体的には、預貯金、不動産、有価証券、自動車、骨董品などのプラスの財産だけでなく、借金や未払金などのマイナスの財産も全て洗い出します。また、故人の出生から死亡までの戸籍謄本を収集し、法定相続人を正確に特定します。これにより、相続財産の全容と相続権を持つ人たちが明確になり、公平な遺産分割の土台が築かれます。

4-2. ステップ2 遺産分割協議を進める
遺産と相続人の調査が完了したら、次に相続人全員で遺産分割協議を行います。この協議は、相続人全員が参加し、故人の残した財産をどのように分割するかを話し合い、合意形成を目指すものです。話し合いの場では、感情的にならず、それぞれの意見を尊重しながら、公平な分割方法を模索することが大切です。
法定相続分はあくまで目安であり、必ずしもそれに従う必要はありません。相続人それぞれの事情や希望を考慮し、全員が納得できる形で合意に達することが最も重要です。協議がまとまったら、後々のトラブルを防ぐためにも、その内容を記した遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・押印します。この遺産分割協議書は、不動産の登記変更や預貯金の払い戻しなどの手続きに必要となる、非常に重要な書類です。

4-3. ステップ3 協議がまとまらない場合の解決策
相続人全員で遺産分割協議を進めても、意見の対立や感情的なしこりなどから、どうしても合意に至らないケースも少なくありません。そのような場合でも、解決を諦める必要はありません。法的な手続きを通じて、問題の解決を図ることができます。

5. 遺産分割調停とは
遺産分割協議がまとまらない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。遺産分割調停とは、家庭裁判所の調停委員が相続人たちの間に入り、それぞれの意見を聞きながら、話し合いによる合意形成をサポートする手続きです。調停は非公開で行われ、裁判官や調停委員が専門的な知識に基づいてアドバイスを行うため、冷静な話し合いが期待できます。調停が成立すれば、その内容は調停調書として作成され、確定判決と同じ法的効力を持ちます。
6. 遺産分割審判とは
遺産分割調停でも合意に至らなかった場合、自動的に遺産分割審判へと移行します。遺産分割審判とは、家庭裁判所の裁判官が、当事者の主張や提出された証拠に基づいて、遺産分割の方法を決定する手続きです。審判では、法定相続分やこれまでの寄与分、特別受益などを考慮し、裁判官が最終的な判断を下します。審判で下された決定には強制力があり、当事者はその内容に従う必要があります。調停と比較すると、より法的・形式的な手続きであり、納得できない場合でも原則として従わなければなりません。
7. 遺産分割のトラブルを回避する秘訣:遺言書の重要性と作成
遺産分割におけるトラブルを未然に防ぐ上で、最も効果的な手段の一つが遺言書の作成です。遺言書は、ご自身の意思に基づいて、誰にどの財産をどれだけ相続させるかを明確に記すことができる重要な文書です。これにより、法定相続分にとらわれず、特定の相続人に多くの財産を渡したい場合や、相続人以外の方に財産を遺したい場合など、柔軟な財産分配が可能になります。
遺言書には主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の二種類があります。自筆証書遺言は費用を抑えて手軽に作成できる一方で、形式不備で無効になったり、紛失や改ざんのリスクがあったり、家庭裁判所での検認手続きが必要になったりする点に注意が必要です。一方、公正証書遺言は公証役場で公証人が作成に関与するため、形式不備の心配がなく、原本が公証役場に保管されるため紛失や改ざんのリスクも低く、検認も不要です。費用はかかりますし、作成にも時間がかかります。
遺言書では、財産を具体的に特定することが重要です。また、誰にどの財産を相続させるのかを具体的に指定する必要があります。日本では、遺言書には、なぜそのような内容にしたのかという「付言事項」を記載することもできるので、相続人へのメッセージを伝えることができるようになっています。
8. 弁護士の見つけ方
遺産分割のトラブルを回避するためには、適切なタイミングで専門家に相談することが非常に重要です。相続が発生した後、遺産分割協議を始める前や、少しでも相続人間で意見の食い違いが生じ始めたと感じた時点で弁護士に相談することをおすすめします。そうすることで、感情的になる前、問題が複雑化する前に、解決に向けて動くことができます。
遺産分割に関する専門家には、主に弁護士、司法書士、税理士がいます。弁護士は、遺産分割協議がまとまらない場合の交の渉代理や調停・審判手続きの代理、遺留分侵害額請求など、紛争解決のプロフェッショナルです。
司法書士は、不動産の相続登記手続をしてくれます。税理士は、相続税の申告をしてくれます。
紛争解決をするのは弁護士ですが、複数の事務所の無料相談などを活用し、自身の状況を説明して弁護士と会ってみることをお勧めします。その上で、解決の方針を教えてくれるか、経験が豊富か、費用体系が明確か、そして何よりもご自身との相性が良いかを確認するのがよいでしょう。信頼できる弁護士を専門家を見つけることが、遺産分割を早く解決するための大きな一歩となります。
9. 遺産分割の具体的な解決方法をケース別に解説
遺産分割は、相続財産の種類や相続人ごとの状況によって、その解決方法が大きく異なります。ここでは、よくある具体的なケースに焦点を当て、それぞれの解決策を詳しく解説します。

10. 不動産がある場合の遺産分割
相続財産に不動産が含まれる場合、その分割は複雑になりがちです。不動産は現金のように容易に分割できないため、相続人全員が納得する解決策を見つけることが重要となります。
まず、不動産の適切な評価が必要です。相続税評価額(路線価や固定資産税評価額)を用いることもありますが、実際の売却価格とは異なる場合が多いため、相続人全員の合意のもとで不動産鑑定士による評価や、複数の不動産会社による査定を行うことが望ましいでしょう。
不動産の分割方法としては、主に以下の四つが挙げられます。
- 現物分割:
不動産をそのままの形で特定の相続人が取得する方法です。例えば、複数の土地がある場合にそれぞれを相続人が取得したり、一つの建物を共有名義にしたりするケースがこれにあたります。共有名義は将来的なトラブルの原因となることもあるため、慎重な検討が必要です。
- 換価分割:
不動産を売却し、その売却代金を相続人で分け合う方法です。最も公平性が高く、トラブルになりにくい方法の一つとされています。ただし、売却には時間と費用がかかり、売却価格が期待通りにならないリスクもあります。
- 代償分割:
特定の相続人が不動産を取得する代わりに、他の相続人に対して自身の固有財産から金銭を支払う方法です。不動産をどうしても手放したくない相続人がいる場合に有効ですが、代償金を支払う相続人に十分な資力があることが前提となります。
- 共有:
不動産を相続人全員の共有名義にする方法です。この方法は、当面の分割は避けられますが、将来的に売却や修繕が必要になった際に、共有者全員の合意が必要となり、新たなトラブルの火種となる可能性が高いです。できる限り避けるべき分割方法とされています。
上記方法の中から、相続人全員の状況や希望を考慮し、最適な分割方法を選択する必要があります。
11. 預貯金や株式の遺産分割
預貯金や株式といった金融資産は、不動産に比べて分割が比較的容易であると考えられがちですが、それでも注意すべき点があります。
預貯金は、原則として遺産分割協議の対象となります。金融機関は、相続人全員の合意がない限り、被相続人名義の預貯金の払い戻しに応じないことが一般的です。そのため、遺産分割協議が成立するまでは、預貯金が凍結されてしまいます。ただし、相続人の生活費や葬儀費用などに充てるための仮払い制度が設けられており、一定額までは単独で引き出すことが可能です。
株式の場合も、基本的には遺産分割協議の対象となります。株式の評価は、相続開始日の終値や、相続開始日を含む過去数ヶ月間の平均株価を参考にすることが多いです。非上場株式の場合は、より専門的な評価が必要となることがあります。
株式の分割方法としては、以下の選択肢があります。
- 現物分割:株式をそのままの形で相続人ごとに割り振る方法です。複数の銘柄がある場合や、株式数が分割しやすい場合に適しています。
- 換価分割:株式を売却し、その売却代金を相続人で分け合う方法です。最も公平性が高く、トラブルを避けやすい方法です。
- 代償分割:
特定の相続人が株式を取得する代わりに、他の相続人に金銭を支払う方法です。事業承継などで特定の相続人に会社の株式を集中させたい場合に用いられます。
金融機関や証券会社での手続きには、相続人全員の署名・押印が必要な書類や戸籍謄本などの提出も求められます。事前に必要書類を確認し、準備を進めることがスムーズな手続きにつながります。
12. 寄与分や特別受益がある場合の対処
遺産分割においては、特定の相続人が被相続人の財産の維持増加に貢献した「寄与分」や、被相続人から生前に特別な利益を受けた「特別受益」がある場合に、公平な分割を実現するための調整が必要となります。
13. 寄与分とは
寄与分とは、共同相続人の中に、被相続人の事業に関する労務の提供や財産上の給付、被相続人の療養看護などによって、被相続人の財産の維持または増加に特別の貢献をした者がいる場合に、その貢献に応じた財産を相続分に上乗せして取得できる制度です。
これは、相続人の貢献を評価し、公平性を図るための制度です。
寄与分が認められるためには、「特別の貢献」である必要があります。例えば、単なる扶養義務の範囲内の行為では認められません。具体的な金額の算定は難しく、相続人全員の協議で合意に至らない場合は、早めに、家庭裁判所の判断を仰ぎましょう。
14. 特別受益とは
特別受益とは、共同相続人の中に、被相続人から生前に遺贈や贈与(結婚や養子縁組のための贈与、生計の資本としての贈与など)を受けた者がいる場合に、その利益を相続財産に持ち戻して計算し、相続分を調整する制度です。これは、相続人間の公平を図るために設けられています。
例えば、ある相続人である息子が、生前に親から住宅購入資金として多額の贈与を受けていた場合、その贈与額を遺産総額に加算して相続分を計算し、長男の相続分からその分を差し引くという調整が行われます。これは持ち戻しと言われています。この計算は、遺産分割協議において重要な論点となることが多いです。
寄与分や特別受益は、相続人間に感情的な対立を生みやすく、遺産分割協議を難航させる原因です。客観的な証拠に基づいて主張し、冷静に話し合いを進めることが肝要ですので、早めに家庭裁判所を利用して解決しましょう。
15. まとめ
遺産分割は、残された相続人が相続財産を分けて、円満に解決する大切な手続きです。弁護士とともに、適切なステップを踏むことで、多くの場合、短期的な解決が可能になります。問題が生じて長引きそうな場合には、弁護士とともに、家庭裁判所での解決を目指しましょう。






