家督相続とは?家督相続を主張された場合の対処法を弁護士が解説

旧民法で定められていた家督相続は現行の民法にはないものですが、今でも相続登記の際に家督相続が適用されるケースがあります。それ以外でも家督相続を主張される場合があるので、家督相続の意味と、それを主張された時の対処法を弁護士が解説します。

1. 家督相続とは何か

家督相続(かとくそうぞく)とは旧民法による遺産相続方法で、被相続人が亡くなった場合、原則としてその長男が全ての遺産を相続するように定めていました。この家督相続は現行の民法とは異なり、被相続人が生きている間にも適用されることがありました。

旧民法において、戸主の存命中に相続が開始されるケースの1つは、戸主の隠居です。隠居とは、戸主が生きている間に一家の代表者としての立場を降りて、その立場を新しい戸主へ譲ることです。戸主権という大きな責任をゆだねた後は、隠居としてのんびりとした生活を送ることが多かったようです。

戸主が存命中に相続が行われたもう1つのケースは、女戸主の入夫婚姻です。女戸主というのは、例えば亡くなった戸主の第一順位の家督相続人が長女だけであった場合、その人が家督相続人として戸主になります。この人が後に結婚し、結婚相手の男性が女戸主の家に入った場合、入夫婚姻となり、その男性が戸主となって家督相続が開始されます。家督相続が行われる別のケースは、離婚した場合や婿入り、国籍を失った場合などでした。

前戸主は家督相続を行った後に、新たな財産を取得することもできました。そして、前戸主が亡くなった場合、家督相続人に移されなかった財産や前戸主が家督相続の開始後に取得した財産は、遺産相続として扱われました。

古い除籍謄本で「昭和10年A月B日に△△さんが家督相続した」という記録があり、長男が家督相続すると記載されていれば、他の兄弟の捺印なども不要で、長男が自分名義で相続登記できました。取扱いが難しくなるのは、除籍謄本に戸主の財産を誰が家督相続したかが書かれていないケースです。この場合は、旧民法の相続順位によると、第1順位は子供や孫、ひ孫などの直系卑属です。直系卑属が複数いる場合、子と孫がいれば子が優先、親等が同じ者の間では男子が優先などの決まりがありました。

第1順位がいない場合には、被相続人が家督相続人を指定します。第1順位、第2順位がいない場合は第3順位になり、配偶者、兄弟、姉妹といった順番になります。第1順位から第3順位がいない場合は直系尊属が相続人となり、親等の近い順、同じ親等であれば男子が優先です。最後の第5順位は、親族会により、家督相続の対象を他人からでも選べるというものです。

2. 家督相続を主張された場合の弁護士からのアドバイス

家督相続はすでに廃止された制度ですが、相続登記の際に、家督相続が適用される場合があります。被相続人が死亡して相続人が不動産を受け継ぐ場合は、相続登記によって名義を変更する必要がありますが、名義変更をせず、相続登記もしていないことがあります。登記をしなくても法的に罰せられることはなかったので、そのままになっているというケースが多々あるのです。

自分の代になって相続登記をしようとしたとき、登記している先祖が亡くなったのが旧民法の施行範囲(明治31年7月16~昭和22年5月2日)であれば、家督相続を適用できます。亡くなったのが現行民法の施行後なら、遺産分割協議書を作成して遺産を分割するので、他の相続者も遺産を受け継ぐことができます。

家督相続制度は廃止されたものの、今でも自営業者や地主などの相続では、家督相続で財産を受け継ぎたいと主張する人もいます。自分は長男だからというそれだけの理由で、家督相続を主張する場合もあります。相手が感情的になっていると、こちらも冷静さを保つのが難しくなりますが、なるべく落ち着いて対処するようにしましょう。

話し合いの目的は問題の解決であって、相手を非難することではないという点を忘れないようにします。話し合いの席で家督相続を主張された場合は、まず、誰の遺産であるかを明確に訴えることです。亡くなった親が残してくれたものですし、現行の法制度でどうなっているのかという観点から説得してみましょう。

また、家督相続は旧民法の制度で、現在では限られた条件下でしか適用されないことを伝え、現行の民法の法定相続人の相続分について説明することがよいでしょう。現行の民法では、相続の第1順位は子供や孫などの直系卑属、第2順位が父母または祖父母などの直系尊属、第3順位は兄弟姉妹です。被相続人に子供がいない場合は父母か祖父母のいずれか、父母が亡くなっているときには祖父母が相続することになります。

相続分は、配偶者のみの場合は配偶者が全部、配偶者と子供の場合は、配偶者が2分の1で子供が2分の1です。もし、子供が複数いれば人数分で割ります。配偶者と父母、祖父母であれば、配偶者が3分の2で父母・祖父母が3分の1です。配偶者と兄弟姉妹という場合であれば、配偶者が4分の3を相続し、残りの4分の1を兄弟姉妹が相続することになります。相続人が子供だけであることもありますが、その場合は、子供がすべてを相続し複数の時は人数で割ります。

子供たちで分けるという場合、人数で均等割というのは受け入れられないという人がでるかもしれません。たとえば、亡くなった親の面倒を自分1人でずっとみてきたといった場合です。ここで考慮できるのが、民法の「寄与分」です。これは、被相続人に対する貢献度を遺産分割の割合に反映させることができるというものです。寄与分が認められれば、他の相続人より財産を受け継ぐことが可能になるので、長男の主張も考慮に値すると言えます。ただし、寄与分を認められるのに必要な「特別な寄与」があったと主張するには、要件を満たさないといけません。

要件

1つは被相続人から対価を受け取っていないこと

もう1つは被相続人と相続人の関係(夫婦や親子)の通常の程度を超える行為であること

特に、この2番目の要件で、本人の認識と法律上の判断とにずれが生じることがあります。本人としては、食事や入浴の介助や病院の送り迎えをずっとしていたことが「特別の寄与」に当たると考えるかもしれませんが、同居している親子であれば、その程度のことなら法的に見て当然のことと言われる可能性が高いです。ですから、同居している親子であっても普通はそこまではしないというレベルのサポートでないと、なかなか認められません。たとえば、自分の仕事を辞めて家業に無償で携わったとか、仕事を辞めて長期にわたり親の介護をしたといったことです。親の借金を弁済したという場合も「特別の寄与」と認定されることがあります。

寄与分が認められるにはこの他にもいろいろな要件があるので、ハードルはかなり高いと言えます。ですから、長男が特別な寄与をしてきたと主張したとしても、法的に認められるとは限らないということです。

こうした話し合いをしても解決しない場合は、遺産分割調停や遺産分割審判などの方法があること、また、それにはデメリットがあることを伝えることができます。たとえば、弁護士に依頼する必要がある、諸費用がかかり、解決まで時間がかかる、調停や審判になっても長男が勝てる確率は低いことなどです。もし不動産を勝手に相続登記したとしても、遺留分侵害請求ができる旨も伝えます。このような話し合いを続けていけば、納得してもらえることが多いもののどうしても自分の主張を曲げない人もいます。時間をかけて丁寧に説明したのに話し合いがうまくいかない場合は、相続税の申告の問題があるので、迅速な解決が必要ですので、遺産分割調停や審判で解決するしか方法がないでしょうし、その方が早いでしょう。

当事務所では、遺産分割調停の事件の無料相談をお受けしています。また、遺産分割の弁護士費用も安い設定となっていますので、お問い合わせください。

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