財産分与

離婚時の不動産の財産分与 弁護士の役割とは?

離婚の際に問題となる財産分与のなかでも、不動産をどのように分けるかという点は非常に大きな争点です。不動産は高額なことがおおく、アパートローンや住宅ロンーがある場合が少なくなく、解決のために長期化することもあります。

本記事では、不動産の財産分与を進めるうえで押さえておきたい基礎知識と、具体的な手順、よくあるトラブル事例、そして弁護士に相談するメリット・役割について幅広くご説明いたします。

1. 不動産の財産分与とは

離婚時の財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して形成・維持してきた財産を、公平に分けるための手続きです。

1-1. 夫婦共有財産か

そもそも財産分与は夫婦の共有財産をわける制度なので、共有財産ではない不動産は対象になりません。

婚姻後に購入・取得した財産は、名義のいかんにかかわらず、夫婦共有財産とみなされることが通常です。しかし、相続や贈与によって取得した不動産は、共有財産ではなく、個人の特有財産となるため、財産分与の対象外となります。

1-2. 不動産登記の確認

登記名義が片方になっていても、実質的に夫婦が協力して得た財産であれば共有財産と認められます。登記をまずは確認してみましょう。仮にあなたが8割の持ち分をもっていても8割があなたのものになるのではありません。

2. 不動産の財産分与で考慮すべきポイント

2-1. 名義と登記の確認

まずは不動産の登記簿謄本を取り寄せ、単独名義 なのか 共有名義 なのかを確認しましょう。登記簿には所有権の持分や抵当権の設定状況が記載されており、住宅ローンの有無も把握できます。

  • 単独名義:婚姻後の取得であれば共有財産とみなされるのが原則。

共有名義:これも婚姻後の取得であれば持分割合に関係なく、共有財産となります。実際の出資割合とは関係がなく、財産分与では分与の対象になります。

2-2. 客観的な評価額の算出方法

不動産の財産分与においては、不動産の評価額 をどうするかは、かなり争点になっています。評価額で争ってしまうと交渉が難航しやすく、結果的に感情的な対立を招くことも珍しくありません。以下のような具体的なステップで客観的な評価額を導き出すとよいでしょう。

  1. 固定資産税評価証明書の取得
    市区町村役場で固定資産税評価証明書を取得し、目安となる評価額を確認します。
  2. 複数の不動産会社に無料査定を依頼
    1社だけでなく2~3社に査定を依頼し、査定額にぶれがないか比較検討します。
    • 仲介での売却想定額(仲介査定)
    • 直接買い取り想定額(買い取り査定)
      といった複数の観点から査定を出してもらうと、より実態に近い価格が把握できます。
  3. 高額な物件など、さらに正確を期したい場合は不動産鑑定士に依頼することも考えられます。しかし、不動産鑑定士による鑑定評価は費用がかかりますし、それでも争いが負わないこともあるので、双方が納得した不動産鑑定士に依頼して費用を折半するのがよいでしょう。そういった合意は弁護士が仲介して合意書として、明確にするのがよいでしょう。

このように、多角的な方法で査定を行い、その結果を総合的に踏まえて「妥当な評価額」を導くことが望ましいです。最低限、複数社の不動産会社の査定を取り寄せて比較するだけでも、評価額に対する納得度が高まり、その後の協議がスムーズに進むことが期待できます。マンションであれば、ネットで過去の取引の金額が開示されているものもあるので、それが参考になるでしょう。

2-3. 住宅ローンの残債務

不動産に住宅ローンが残っている場合、離婚後にローン返済をどのように負担するかという問題は避けて通れません。以下のような解決方法がありえます。

  • 名義人が不動産を持ち続けて支払を継続する
  • 売却して残債を一括清算してその代金を財産分与の対象とする(換価分割)
  • 名義変更をして債務も引き受ける:これにはローンを貸した銀行の承認が必要となりますし、登記上の名義変更も必要ですので、弁護士が仲介して進める必要があるでしょう。

住宅ローンの残債務処理の方法は、不動産を欲しい方がローンも払うというのが原則になりますが、金融機関との折衝が難航することもあり、金融機関を変えて借り換えを考えるべきこともありますので、慎重に方法を検討しましょう。

2-4. 不動産の具体的な財産分与の方法

不動産の離婚時の財産分与の方法として、次の3つの代表的な方法があります。

  1. 現物分割:不動産そのものをどちらか一方が取得する
  2. 代償分割:不動産を一方が購入して代金を他方に支払う(持分の譲渡などをする。)
  3. 換価分割:不動産を売却し、売却代金を夫婦で分け合う

これらを選択するにあたっては、将来の居住予定や生活設計、資金計画なども考慮に入れる必要があります。とりわけお子様がいらっしゃる場合には、学区や生活環境をどう維持するかという観点も重要となるでしょう。

子が18歳になるまで不動産を維持して、その後で夫婦で不動産を売って代金を分けるという合意を家庭裁判所においてするような場合もありますが、確実に将来に不動産を売れるように売るためのルールも明確にする必要があります。この方法では、子が移転をしなくてよい、学校を転校しなくてよいという利点があり、子がいる夫婦はよく過去でも検討しており、合意にいたった夫婦もかなりいます。18歳になるまでではなくて、5年間したら売るというような合意もあり得ます。

3. よくある離婚時の不動産の財産分与のトラブル例

1) 不動産評価額の対立

  • 「不動産会社Aの査定では○○万円だが、Bの査定では大幅に低い(あるいは高い)。どれを採用すればいいのかわからない」といった状況で喧嘩状態になり、話し合いが平行線になる。

2) 住宅ローン返済を巡る深刻な対立

  • 離婚後、ローン名義人ではない側が「家に住んでいるのだからローンの一部を負担すべきだ」と主張する一方、居住しない側は「もう住んでいないのだから負担しない」と対立し、支払いが滞るリスクが起きてしまう。

3) 登記変更の放置

  • 離婚協議で財産分与の内容は決まったものの、登記の移転手続きを後回しにしてしまって、後に不動産の登記がうまくできず紛争が勃発する。

4) ご実家や親族からの資金援助を受けているケース

  • 「頭金を実家から出してもらった」「リフォーム費用を親族が負担した」などの場合、特有財産の部分があるのではないかという紛争が起きて、解決できない。

5) 住宅ローンの名義変更不可・売却不可

夫婦で合意して「ローン名義を妻に変更しよう」としたが、金融機関の審査に通らず断念せざるを得なくなる。または、市場価格が下落していて売却してもローンが完済できない「オーバーローン状態」であり、売ってもローン完済ができなくて財産分与の解決ができないため、離婚もできない。

4. 不動産の財産分与の解決を弁護士に依頼するメリット

不動産に関する手続きといえば「司法書士に依頼する」と考える方もいらっしゃるかもしれません。確かに、司法書士 は不動産登記の専門家として、名義変更の手続きに強みを持っています。

しかし、離婚に伴う不動産の財産分与 では、単なる登記手続きだけでなく、評価額の合意・交渉・ローン問題の解決方法の提案・離婚協議書の作成・将来の紛争防止に向けた法的アドバイス、子どもの居住場所の確保といった包括的な視点が必要となります。

  • 交渉代理権:司法書士は法律上、原則として「依頼者の代理人となって交渉する」ことが認められていません。一方、弁護士は交渉や訴訟を依頼者に代わって行うことができます。
  • 法的紛争への対応:万が一、離婚協議が決裂した際や、財産分与をめぐって離婚ができなくて離婚訴訟を提起することが必要となった場合、弁護士であれば代理人として法廷に立ち、依頼者の利益を守る活動が可能です。
  • 複雑な問題解決力:不動産評価やローンの名義変更はもちろん、子どもの親権や監護権に関する問題、税金問題や将来の相続問題(将来的に誰が不動産の相続人になるか)についてのアドバイスも可能です。離婚にまつわる、財産・親権と言った問題を多角的に網羅的に整理し、一括解決策をご提示できます。

つまり、離婚と不動産が絡むケースでは、単なる不動産の登記上の名義変更手続きを超えた網羅的で建設的な解決が求められるため、離婚訴訟に精通した総合的にサポートできる専門的な離婚・不動産弁護士にご相談いただくことが賢明と言えるのです。

5. 離婚訴訟に精通して不動産にも詳しい弁護士に依頼するメリット(まとめ)

(1) 適切かつ客観的な評価・交渉

不動産鑑定士や不動産会社など複数の情報源から得た査定結果を精査し、法的根拠を踏まえながら交渉を行う能力があります。親権紛争も絡んでしまう感情的になりがちな離婚協議の場において、専門的で冷静な視点を維持し、合理的な解決を図ることが可能です。

(2) ローン・金融機関対応へのスムーズな助言

住宅ローンの名義変更可否、売却時の金融機関との折衝も代理人としてできますので、法的視点と実務的視点の両面からアドバイスを行い、依頼者のご要望に即した形で問題を整理します。

(3) 離婚協議書・調停調書・公正証書の作成サポート

せっかく合意に至っても、内容を明文化しなければ後々トラブルにつながりやすくなります。弁護士が関与することで、財産分与の内容、代償金の額や支払方法、登記変更の期日などを明確に定めた書面を作成し、債務名義と言える証書の実現までスムーズに進められます。調停調書になると債務名義という執行が可能な書面ができますので、調停の利用も検討することが重要です。

(4) 将来にわたる安心と心理的負担の軽減が可能で親権問題の解決もスムーズ

弁護士が窓口となり交渉を進めることで、親権紛争による感情的対立を和らげ、双方が冷静に将来設計を描きやすくなります。双方と子どもの離婚後の生活再建に集中できるよう、法的なサポートを包括的に提供いたします。

6. まとめ:早期相談で円滑な財産分与を

不動産を含む財産分与は、高額な資産や住宅ローン、評価額の算定方法、子の居住場所の確保など多くの要素が絡み合います。トラブルを回避するためには、以下のステップをおすすめします。

  1. 不動産の登記情報と住宅ローンの状況を、正確に把握する
  2. 複数の不動産会社から査定を取り寄せるか、ネットの情報を収集し客観的な評価額を算出して冷静に話す
  3. 早い段階で弁護士に相談し、最善策を検討する
  4. 話し合いの内容を適切な離婚協議書で明確化する

スムーズな財産分与を実現するためには、時間をかけて複数の専門家の意見を取り入れつつ、弁護士のサポートのもと将来的なリスクにも備えた協議を行うことが非常に重要です。

離婚時の不動産の財産分割にお悩みの方へ

東京ジェイ法律事務所では、離婚問題や財産分与に精通した弁護士が、不動産をめぐる複雑な事情、子どもの監護権、住宅ローンの問題解決にも丁寧に対応し、依頼者の皆さまの権利と将来設計を守るためのサポートを提供しております。

弁護士しかカバーできない、離婚交渉や将来の離婚訴訟対応を含めた包括的な早期解決のためのリーガルサービス をご提供しております。無料相談が可能ですので、安心してご相談ください。

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