離婚の手続き

離婚したいと思っているけど、離婚に踏み出せないとき、どうしたらよいのか?

1. はじめに:

離婚したいけど踏み出せないという方多いと思います。特に、相手がとても応じてくれそうもない、相手に経済力がないから無理そうだ、子どもがまだ小さいから可哀そうだ・・・などなど悩みは深刻です。

弁護士松野絵里子がそういった場合の対応について、子どもの共同養育の方法にも触れて、解説します。

2. 離婚したいと感じる理由

太宰治は、「家族は諸悪の根源」とまで書いています。

そうは言っても、家族こそが人間の幸せの根源だと思っている人も多いでしょう。

実際には、家族には良い面と悪い面があり、また誰を家族とするのかは現代社会では自分で選ぶことができる状態にあるのではないでしょうか。

現在では多くの人が恋愛結婚をしますが、交際していたときと実際の暮らしでは全く様相が異なりますし、子供が生まれれば関係性もかわってきます。

<離婚したい人のいろいろな悩み>

  • 好きだったはずの人だけど、どうしてなのか、嫌になった。
  • 計算もあって総合判断で結婚したけれど、やはりもともとあまり好きではないので、相手が嫌になった。相手に性的魅力を感じないのでセックスレスが悲しい、あるいは、相手の性的嗜好に合わせられない。
  • 自分が外で頑張って働いているのに、優しくしてくれない。家が心のよりどころではないのでこのまま結婚していたくない。
  • 自分も働いているのに、家事を分担してくれないなど、理解がない。自分だけで精いっぱいで余裕がない相手と一緒にいたくない。
  • 自分の稼ぎだけに、相手は興味があるように見えて、自分はATMではないと叫びたい、心の交流ができない。
  • 相手の子どもの育て方が許せないし、子どもの育て方の話もできない。このままでは子どもが可哀そう。

いろいろな理由で「離婚したい」と思うことはあるでしょう。

離婚したいという理由はいろいろありますが、多くの人は踏みとどまっていることが多いでしょう。

当事務所に離婚したいのでどういう準備をしたらよいかというご相談に来られる人も、現実には離婚をあきらめるという決断をする方もいます。反対に、もっと早くアクションを起こしたらよかったといって、離婚に向けて動き出す方もたくさんいます。

3. 離婚する、しない、という決断を人はどうやってするのか?

離婚しよう、やはりやめようという「決断の分岐点」は何なのでしょうか?それについて、ここで、考えてみたいと思います。

3-1. 子どもがいるので離婚はしないほうがよい

離婚すると、日本の単独親権下では、親権者は母となることが多いです。もっとも、女性も長時間労働の方が多く、祖父母の協力で働いていることもあるので、現実に親権紛争になるとどういう結論になるか、わかりません。

また、日本には別居の際に子供と親の関係について間に入って決めてくれるシステムがあまり確立しておらず親権紛争をしたくない(もっともそういうシステムもないわけではないので、個別にご相談ください。)ということが理由になることは多いと思います。

子どものために我慢すれば何とかなるなら・・・と、なるべく夜遅くまで働いて朝もコンビニのご飯ですました子が大学に入るのを待っていましたという男性もいました。離婚まで10年以上そうやってお暮らしとは驚きましたが、離婚弁護士としてはそういう事案も珍しくはないのです。

また、相手に子をゆだねることがそもそも心配でできないというようなケースもあります。例えば、お母さんが精神的に不安定で子を精神的に虐待しているような場合です。

3-2. 離婚すると経済的につらくなるから離婚しないという決断

これは専業主婦の方に多い理由ですが、共働きでもたとえば養育費と自分の給与でやっていけるかわからない、または、養育費をたくさん払うことになるので離婚できない、という場合もあります。

現実には、養育費支払いで暮らしができなくなるということはほとんどないと思われますが、離婚するまで、マンションは不動産のローンを払い続けて別居するというのが男性側につらいというケースが多く、離婚して養育費だけになると、経済的には男性は楽になることが多いです。

3-3. 先が見えないから離婚できないという人

これは、どうやったらいつ離婚で着るのか、日本法では別居が一定期間あれば離婚できるという明文がないため、離婚したいといってもいつできるかわからず、再婚することができるかわからなくて不安という理由で離婚に踏み切れないというケースですね。

しかし、法的には「有責配偶者」という非常に限られたケースの場合以外、別居の年数が数年以上になれば、弁護士がつけば調停離婚できていることが多く、いつ離婚できるかわからない不安はあるでしょうが、ずっとできないというケースはほぼ無いように思われます。もっとも、別居しているのかがはっきりしないパターンが最も不利になるといえます。これについては、後で説明します。

4. 「私のような状況で、こんな理由で、離婚ができますか?」という質問

相手が嫌だとか、心の交流ができないからとか、性的にはもう好きではなくなった・・・・こんな理由で離婚ができるか、というお悩みをもっている方も多いでしょう。

これは法的には「民法の定める離婚事由があるか?」という問題になります。

さすがに「顔が嫌いです」というような理由では裁判所も離婚を認めてはくれません。(もっとも顔が嫌いすぎて、関係が悪化していき、破綻となることはあるでしょう。)

しかし、多くの方が「性格の不一致」で、離婚を実現できています。「一緒にいて不幸なカップル」であれば、最終的には、経緯は色々ですが、離婚は可能であるといえるでしょう。

5. 協議離婚なら夫婦の合意が必要!

調停離婚でもそうですが、調停という裁判所の手続きを経ることで、お互いが今後について冷静に考えることができます。

調停段階では、お互いに代理人弁護士がつくことが東京では一般的であり、今後の手続等について詳しくなり、冷静に「夫婦がうまくいっていないという問題」に双方が向き合えるということが背景にあるとおもいます。

当事務所で離婚調停を経て、最終的に離婚をできていないケースは財産分与が複雑である場合、親権でもめてしまうというような場合で、それ以外ではかなり稀です。

協議の中でやり直してみるという結論を取る方もいますが、それは一つの解決を見つけたということになりますよネ。

別居して様子をみることにするという選択をする人もいます。子どものために、別居しながら子育てパートナーになってみるというような選択の選ぶ方もいます。

6. 離婚はしたいけれど子どもと離れたくない場合、どうしたらよいのか?

子どもがいるから離婚できない・・・・という方は多いでしょう。子どもにとって親の仲がよくないことは確かに不幸なことです。

ですので、子供のために二人が折り合えるのであれば、努力はしてみたほうよいでしょう。でも、それができないということもありますよね。

子どもにとっても、互いに悪口を言いあう親のもとで暮らすのはもっともつらいことです。離婚より長期的には悪影響があると言われています。

では、子どもとの関係を離婚しても維持するにはどうしたらよいでしょう?

6-1. 自分が監護権・親権を取得する

貴方が親権を取得できれば、最終的に子と住むのはあなたになります。

今、貴方が主たる監護者(めんどうを一番している親)であれば、監護権を取得し、離婚時には親権を取得できる可能性は高いです。

また、相手が子に暴力をふるっていたり、子が10歳以上であなたとの暮らしを望んでいるような場合も、監護権を取得し、離婚時には親権を取得できる可能性は高いでしょう。

6-2. 親権争いをしないで、相手と話あって共同養育的な合意を目指せるか?

親権とは別にある「監護権」というものがあり、子と一緒にすむ方を親権者と異なる親にする場合に、監護権と親権をわけるという選択肢があります。しかし、多くの場合で監護権が問題になるのは、離婚前の別居の段階です。親権を決めるまでいずれが子と一緒に住んで子の毎日の養育をするかという点で争いがあって深刻になると、監護者が裁判所によって一方に指定されることがあるのです。

そういったレベルになってしまうと夫婦の紛争の度合いはとても高くなるので、なるべく避けたいですよね。それを避けるには、離婚時に監護をどうするのか、子をどう育てていくのか、夫婦がよく考えて合意をしておくことがお勧めです。

親権争いをしないように、母が子どもと同居するが、父は毎週の塾の送り迎えをして、週末は隔週で父と母の担当の週を分けるようなルールを決めるのです。これは言うは易し、でして、離婚時の仲の悪い夫婦ではなかなか、当事者のみではルールを作れません。また、そういう協議中にこじれて、いずれが子を連れ去ってしまって別居が始まり、激しい監護権争い(親権争い)となって、子の奪い合いが始まることも、よくあります。ですので、こういった話し合いにおいては、養育ルールを決めることの経験がある弁護士のサポートを得ることが有用です。また、このような解決方法を望むのであれば、裁判所の家事調停を使って、互いに代理人弁護士をたてて進めるのが最も安定的にできる方法でしょう。

6-3. 面会交流について合意する方法

たとえば、母がこれまで家にいて子の世話をしていたので、母が監護権も親権もすべてほしいという場合、これが日本では最も多いのですが、そういう場合、父の方は面会交流を合意しておいて、子どもとの交流を維持するという方法があります。

日本の民法は、単独親権制度を維持している、先進国ではかなり古いタイプの親権制度を維持しています。しかし、この民法も改正されたので、令和7年春からは離婚しても親権を共同親権のママとすることも可能となります。

面会交流についても、先進国に比べて権利としての地位が不明確で、民法で明文化されたのも平成24年頃と遅く、面会交流の権利は子どもの権利としてもまだ確立していない面があります。しかし、家庭裁判所の調停できめた面会交流は、家庭裁判所もそれを守ることを重視していますので、きちんと家庭裁判所で面会交流(親子交流)の方法をしっかり決めておけば、また、決めた時点でそれが子どものためになることを父母が理解していれば、子との交流を十分に維持できる可能性はかなり高いです。

たとえば、第二週の土日と第四週の土日を一泊で子とすごすというような決め方もできます。この調停条項の作り方について工夫しておくと、仮に守ってもらえないときに執行できることもありますし、何よりも、「現実にできる方法」かを、裁判所で検証しながら条項をつくることができますので、裁判所の調停でつくることがベストです。

面会交流(親子交流)は、子が健全に成長していくために重要な権利であると、日本の家庭裁判所も考えていますが、審判ではなかなか宿泊付きの面会を認めてもらうことが難しいのが現状です。しかし、当事務所では審判での宿泊面会交流の実現の経験が多数あります。

6-4. 子どもの共同養育についての当事務所の経験

また、当初から円満解決を目指して夫婦で歩み寄れるよう迅速に調停を進めるように工夫をしており、離婚時に充実した面会交流の合意ができた過去の事案もたくさん経験しています。子のことを親二人が誠実に考え、自分たちの争いとは別に、子が父母を失わないような離婚後の暮らしを実現するように努めています。

終わりに(離婚するという決断をするには・・・)

離婚そのものは現実には大きなストレスです。

仮に、お互いが離婚したくても、子どもの親権をどうするのか、養育費は誰がいくら払うのか、財産分与はどうするのか・・・いろいろ決めないといけません。

頑張って、結婚生活を守っていくほうがよいこともあるでしょう。選択するのはあなた自身です。

離婚する前にとりあえず、別居してみるという選択もありますし、マリッジカウンセルを使ってみるという選択もできます。お子さんがいるのであれば、自分も変われないのか、相手に自分の気持ちをわかって相手にも変わってもらえないのか、問題をリストアップして整理して考えてみてはどうでしょう。

人間は幸福になりたくて家族を形成します。

憲法で幸福追求権は人権として認められていますので、離婚した方が幸せであるという確信があるのであれば、離婚に向かって進んでいくしかないでしょう。

そして、「実際に離婚すること」は法的には可能なのです。

ですので、「離婚したい自分」を責めるのは、まず、やめましょう。

ポイント :

離婚したい自分を責めないで、自分の心の声を聴くこと!

そういう自分の気持ちとも向き合う方が現実的だ、そういう気持ちをネガティブに考えるのは、やめたほうがよいと、離婚の専門的弁護士としては、思います。

一度好きになって結婚したのに、相手が嫌になったこと、これについては確かに「不甲斐ない」し、人生の落伍者に感じるかもしれませんが、好きになるときの自分の感情も、時間とともに変わります。双方の人生観も、時間とともに変わって一緒にいられなくなることは、夫婦でもカップルでも共同経営者でもあります。人間は変わっていくし、だからこそ人間であるわけで、変わった関係性や自分、離婚したいという思いの自分については大事にして、向き合ってみればよいでしょう。

そして、未成年の子がいるのであれば、そのとき、子どもの心のケアや経済面についてはしっかりと考えましょう。離婚したいけれど、「今は離婚をあきらめる」というのも一つの大事な決断ですし、離婚して子どもの養育パートナーとして子どもへの責任を果たすというような決断もまた、立派なものです。

いろいろあるけど、離婚したい、先に進みたいという場合、弁護士のサポートを得て、協議離婚・調停離婚・子どもの養育ルールの作成(親子交流の合意)に向けて、行動をしてみてください。

現実には、財産分与や養育費等の決めごとも離婚には必要ですので、専門的なアドバイスを受けつつ、進むことをお勧めします。

当事務所では、共同養育ルールの作成や相手が応じそうもない場合の離婚の事案などについて、1時間の無料法律相談をお受けしています。ご相談されたい方は、お問合せ、ご予約下さい。

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