相続手続

遺産相続で揉めてる時、相続税申告はどうする?

遺産分割(相続)で揉めてる場合でも、相続税の納付期限は待ってくれません。相続税申告書だけなら相続人がそれぞれ別々に申告できますが、遺産分割協議書の作成が難しい場合や、解決できずに調停となる場合には、税理士だけでなく、弁護士へも相談しましょう。

1. 相続税は誰が納めるのか?

遺産相続をしたら、相続資産の額に合わせて相続税の納付義務が発生します。どんな場合に、誰が相続税を支払わなければいけないのでしょうか?

1-1. 相続税は相続人の義務

相続税は、遺産を相続した人に納付義務があります。一般的には法定相続人に義務が発生しますが、必ずしも法定相続人だけではなく、遺言書によって遺産を相続した人は、相続した資産価値に合わせて相続税を納めなければいけません。

相続税はまた、遺産相続だけではなく、故人が亡くなる3年前に贈与を受けていた生前贈与に対してもかかります。ただし、生前贈与を受けた人でも、相続が発生した際に法定相続人とならない場合や相続放棄した場合には、相続税の課税対象にはなりません。

1-2. 基礎控除によって相続税が免除されることも

相続税には、基礎控除額があります。これは、相続人の数によって異なります。相続する資産価値がこの金額を超えない場合には、相続税そのものがかかりません。相続する資産に不動産が入っていると、基礎控除額を超えてしまうことが少なくありませんが、不動産がない場合には、基礎控除範囲内に相続資産額が収まるケースはたくさんあります。

1-3. 相続税はいつ納付する?

相続税が発生したら、相続の開始を知った日の次の日から10カ月以内に、相続税申告と納付をしなければいけません。遺産相続がスムーズに進んだ場合には、ある程度の期間的な余裕はあるでしょう。しかし、相続で揉めてしまうと、10カ月はあっという間に過ぎてしまいます。揉めたからと言って相続税の納付を待ってもらえるわけではないため、揉めた場合でも期間内にしっかり払えるように、税理士や弁護士に相談して対策を講じることをおすすめします。

2. 遺産分割で揉めている場合の相続税申告

相続税の申告については、基本的には1つの申告書に相続人全員が押印して税務署へ提出します。しかし、必ずしも相続人全員が共同作業をしなければいけないというルールはありません。遺産分割で揉めた場合には、それぞれの相続人が個別に相続税申告することも可能です。

2-1. 一つの申告書に相続員全員の押印を集める対策方法

遺産分割で揉めている最中には、親族でもお互いに顔を合わせたくないものです。相続人が直接顔を合わせなくても、もしも税理士がそれぞれの相続人へ申告書の押印を求めて足を運ぶことができるなら、最終的には1枚の申告書に相続人全員の押印をして、相続税申告ができます。

また、税理士が各相続人の元へ足を運ぶ以外にも、相続人が個別に税理士の元へ足を運び、相続に関する説明を受けた上で押印をするという方法も可能です。

どちらの場合にも、税理士にとってはそれぞれの相続人と契約が必要ですから、時間や手間がかかります。そのため、1時間当たりいくらというオプション料金が発生することが多いです。相続人個別に押印を求める際には、それぞれの相続人に対して請求をしてもらうこともできるので、まずは税理士に相談してみましょう。

2-2. 相続人が異なる税理士に依頼する場合にはどうする?

全ての相続人が1人の税理士を共有するケースもあれば、個別で異なる税理士に依頼したいということもあるでしょう。その場合には、相続人ごとに個別に相続税申告するしかないでしょう。この方法だと、他の相続人と足並みをそろえる必要はないため、自身の相続税申告の準備が整ったら、速やかに申告できるというメリットがあります。それに、他の相続人が期限内に申告できなくても、自身はペナルティを負わないという点も魅力です。

ただし、相続人がそれぞれ個別に相続税申告する場合、取得する財産や相続税の計算については、計算して申告しなければいけません。その際には、それぞれの相続人の間でそういった計算の不一致が起こることがあるため、注意が必要です。そうなると、税務署では申告内容を統一させなければいけないため、必ず税務調査を行うことになるでしょう。

税務調査が入ると、さらに精神的なストレスや負担が大きくなってしまいます。そうしたトラブルを避けるためには、遺産分割で揉めた場合でも、相続税申告書の内容は、相続人を通して一致させておく必要があります。

3. 揉めている最中でも税理士と契約できる?

遺産分割で揉めている最中でも、相続人が共同で、ある税理士と契約することは可能です。でも、相続人が全員協力しながら相続税申告しなければいけないというルールがないため、それぞれの相続人ごとに異なる税理士と契約して、それぞれに相続税納付の手続きを始めても、法的に問題はありませんし、申告を受け付けてもらえます。

本来であれば、遺産分割はできていないけれど、税務申告は一人の税理士に依頼するのが税務調査を回避するという意味でよいので、弁護士を介在させて一人の税理士に申告を依頼することがベストかと思います。

3-1. 小規模宅地等の特例はどうなる?

遺産相続においては、小規模宅地等の特例等、特例適用を受けるために、相続人全員の署名捺印が必要となる書類もあります。この特例に関しては、必ずしも相続人全員が一堂に会して署名捺印を行う必要はなく、電話でも合意が取れればOKというルールになっています。相続で揉めているからと言って、特例の適用を受けられないということはありません。

3-2. 遺産分割協議はどうする?

遺産相続では、相続人が全員集まったうえで、遺産分割協議という話し合いを行わなければいけません。この時、相続人が1人でも欠けていると、残念ながらその遺産分割協議は無効となります。親族だけが法定相続人の場合には、後から相続人の存在を知ることはあまりないでしょう。しかし、例えば後から故人が認知した隠し子がいたことを知った場合などには、新たな相続人の存在を知る前に、すでに遺産分割協議が終了している可能性もあります。その場合でも、相続人が1人でも欠けている遺産分割協議は無効となってしまうため、残念ながらやり直しとなります。

遺産分割に合意したら、最終的に遺産分割協議書を作成しなければいけません。相続税申告においては、それぞれの相続人が別々に申告することが認められていますが、遺産分割協議書は1枚の協議書に相続人全員の署名と捺印が必要です。

もしも相続人同士で顔を合わせるのが嫌な時には交渉をしてもらっていた弁護士に依頼して、他の相続人から署名捺印を集めてもらうことができます。ただし、遺産分割の協議内容に相続人全員が納得していることが前提ですし、税理士は遺産分割の交渉を依頼することはできません。

4. 揉めたために遺産分割協議がまとまらなかった…相続税はどうする?

遺産分割協議の話し合いが揉めてまとまらないと、遺産分割協議書を作成することができません。その場合でも、相続税の納付期限は迫ってきますし、揉めているという理由で、納付が免除されたり、待ってもらったりすることはできません。

もしも遺産分割協議で揉めて協議書の作成が難しい場合には、税理士に申告期限後3年以内の分割見込書を作成してもらい、相続税申告書と一緒に提出することになります。また、話し合いでは決着がつかずに調停となる場合には、税理士では調停の代理を務めることができないので弁護士に依頼する必要があります。

遺産相続で揉めてしまうことは、決して珍しいことではありません。遺産が多ければそう簡単に分けられません。

揉めたままの状態でも、相続税の納付を期限内にきちんと行う方法があります。ですから、まずは、弁護士に相談して、紛争解決の交渉とか調停申立を依頼しつつ、紛争があってもまとめて相続税の申告をしてくれる税理士に依頼して、なるべく調停で早く調整成立をさせることがベストでしょう。

記事監修者 弁護士 松野 絵里子
記事監修者 弁護士 松野 絵里子

記事監修者: 弁護士 松野 絵里子

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