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1. 海外にいる人が日本の調停離婚を利用できるか?
これは、国際裁判管轄があるかという問題をまず検討することになります。
日本の家事事件手続法では、離婚調停(夫婦関係調整調停)の管轄は、調停の相手方住所地を管轄する家庭裁判所に管轄があることになります。ですから、相手が日本に住んでいるのであれば、調停を申し立てることはできます。
相手が日本に住んでいない場合どうするか?なにができるか?
相手が日本に住んでいない場合、調停離婚ができるかが問題になります。まず、双方が日本人であれば(海外赴任中であるような場合)、双方の合意で家庭裁判所を選び、離婚調停を申し立てることができます。
双方の合意ができない場合には、申立をしても出頭がされない可能性が高いので、調停を経ないで離婚訴訟を提起することができる可能性が高いです。これは、離婚訴訟の国際裁判管轄が認められる夫婦の場合です(*)。家事事件手続法257条1項は調停を経てからの提訴をするようにさだめていますが、外国に住む相手が裁判所からの呼び出しに応じて日本の調停にくる可能性がきわめて低い場合、例外的に調停を経ずに訴訟提起が認められるとなっているからです(同条2項但書)。
(*)離婚の国際裁判管轄は、双方が海外に住んでいても妻も夫の日本国籍であれば、認められます。相手が、日本国籍ではなく日本に住んでいない場合も認められる場合があります。それは、夫婦が最後に同居したのが日本である場合です。また、「原告の住所地で離婚裁判をすることが、当事者間の衡平を図り、または適正かつ迅速な審理の実現を確保するために、特別な事情がある場合」に認められることがあります。相手が日本に住んでいないがどこに住んでいるかわからず、行方不明のときはこれに該当するといわれています。
2. 国際離婚の調停の進め方
申立人が海外に滞在している場合、調停にはWEB参加はできませんので、弁護士に調停事件を依頼し、弁護士が代理人として調停に出席することになります。出頭の方法は、裁判所の調停室に行くか、遠方であればWEB期日などが可能です。
当事務所では、海外に住んでいる方の代理人として、日本の調停で離婚を成立させるための事件をお受けしています。その場合、期日に裁判所に申しあげることは概要を書面でだしておいて、それを説明するという形をとっています。また、期日に来日していただいて調停委員に状況を説明し、考えを説明していただくことも多いです。
3. 離婚に向けて合意が成立する場合
調停期日を何度か進めて離婚の合意ができた場合には、最後の期日にはご本人が調停室に来るように手配をしておきます。しかし、それが難しいときには、審判を利用することができます。
離婚は、重要な身分行為なので、代理人弁護士が出頭するだけでは調停の成立ができないため、出頭をしていただけるならして頂き、その期日に、裁判官が調停条項を読み上げ、両当事者のそれを最終的に確認して、調停成立としていました。
しかし、来日が困難であれば、「調停に代わる審判」という手続を利用して、双方が合意している内容を審判として発令する方法がとられています。この方法では、代理人の事務所にその審判が送達され14日間の間に異議をいずれも出さない場合、離婚が成立します。弁護士に委任することで、来日することなく調停離婚が可能です。
4. 調停で離婚が成立しない場合
この場合、通常は日本の国際裁判管轄が認められるケースが多いので、いずれかが提訴をするのが次のステップとなるかと思います。しかし、日本の国際裁判管轄が認められない場合(日本に夫婦で住んだことがないような夫婦の場合)、居住国での提訴をすることになろうかと思います。
日本の国際裁判管轄が認められるときでも、提訴する場所としてどこが良いかは、現地の弁護士に相談して決めるべきでしょう。海外に資産があるような夫婦であれば、財産分与の取り決めの観点から、その国での訴訟のほうが有利であることがありえます。さらに、子が未成年である場合、親権のルールや実務は国ごとに異なりますので、それも現地の法律を理解して、どこで裁判をするべきか検討するのがよいでしょう。