離婚

身に覚えのないDVで保護命令を申立てられた!子どもに会いたい親御さんが弁護士へ相談するのが良い理由

DVから救済するための保護命令は、発令される又は却下されるまでの期間がとても短いです。保護命令を申し立てられた際は、迅速な対応が必要です。保護命令から離婚手続きとなることも考えると、離婚に詳しい弁護士に対応を依頼するのが良いでしょう。

 

喧嘩の時の大きな声が録音されているだけでも保護命令が発令されることはあります。

  

発令されてからの行動も重要ですので、弁護士に相談しましょう。

  

配偶者や交際相手からの身体的な暴力や精神的な暴力に悩まされている人は少なからず存在します。配偶者や同棲している交際相手からの暴力に苦しんでいる人を救済する措置として、裁判所から出される保護命令というのがあります。この保護命令は精神的な暴力に対しても身体的暴力に準ずる内容であれば、申し立てが可能です。配偶者等からの暴力に苦しんでいる人にとって助けになるのが保護命令です。しかし、身に覚えのない保護命令を申し立てられた人にとっては大変困惑する命令です。身に覚えのない保護命令を申し立てられた場合どのように対処すればよいのでしょうか?

    

1 保護命令とは?

保護命令とは、配偶者から身体的暴力を受けた被害者の申し立てによって裁判所が発令します。被害者に近づくことを禁止する接近禁止命令や被害者と暮らす自宅からの退去をするように命じる退去命令により、被害者にさらに危害が加えられることを防ぎます。接近禁止命令の具体的な内容は、対象者への付きまといや対象者の自宅や職場の周辺を徘徊することが禁止されます。そして、被害者(申し立て人)への接近禁止命令が発令されることを条件として、被害者の他に、被害者と同居している子供への接近禁止命令、被害者の親族や職場の人への接近禁止命令、電話等を禁止する命令があります。

  

2 保護命令が発令されるのはどんな場合?

配偶者(事実婚や同棲している交際相手も含みます)から暴力を受けている、または生命や身体に害を加えると脅迫され、今後暴力を受け生命の危機や身体に重大な害が及ぼされる恐れがあると認められる場合に保護命令が発令されます。対象は男性、女性の性別を問いません。さらに、離婚した後でも元配偶者から脅迫や暴力等を受ける恐れがある場合も対象となります。そして、発令された保護命令に違反すると、懲役や罰金刑が科せられます。

  

3 保護命令が発令された際の申し立てた方のメリット

保護命令が発令された時のメリットは、申し立てした側にあるわけですが、第一に加害者の行動を制限するため、身の安全が守られる安心感が得られます。暴力に怯えて過ごす不安と恐怖から解放された毎日が過ごせるというのは、とても安心感が大きいことでしょう。次に、保護命令が出されることで、配偶者のDVが認定される可能性が高くなり、離婚裁判で離婚の要件を立証しやすくなります。

 

離婚後ひとり親で子供を育てる場合には、児童扶養手当の受給資格があります。この手当は、通常別居しただけでは受給資格がなく、離婚がなかなか成立しない場合、離婚成立となるまでの期間は児童扶養手当は受給できないということになります。しかし、保護命令を受けると、離婚前でも児童扶養手当の受給資格を得ることができます。

  

4 保護命令を申し立てられた際のデメリット

保護命令を申し立てられ、発令されると、配偶者に近づいたり、電話をかけたりすることができなくなります。また、自宅からの退去しなければならないこともあります。さらに、配偶者だけでなく、子どもにも会うことが困難となることも多いです。子供の成長をみることが出来ないというのは親としては悲しいことです。このように、行動の自由が制限されるため、精神的にも負担となります。これが、DVを行っておらず、全く身に覚えがない状況で発令されたのであれば、大変大きなストレスとなるでしょう。

  

5 保護命令を申し立てられた時の対応

保護命令は、申し立てる前に、警察や配偶者暴力相談センターに相談し、管轄の地方裁判所に被害者本人が申し立てます。申立人と相手の双方と審尋と呼ばれる面接を行い、事情を聴取し、審議の結果、発令又は却下されるという流れになります。あなたの配偶者が裁判所に保護命令の申し立てをすると、あなた宛てに裁判所から書類が届きます。そこに、審尋期日の日時が記載された書面も同封されています。

  

この審尋期日の無断欠席は厳禁です。保護命令の申し立てが事実無根であるならば尚更です。

  

保護命令は、緊急性が必要であり、身体や命の危険がある恐れがあるという状態で発令される場合もあります。そのため、そもそも被害者が訴えるDVが行われていない場合には、審尋にてしっかり弁明を行うことが大切です。弁明を行わないと、申し立て人の主張と証拠として提出された資料のみで保護命令が発令されることにもなりかねません。保護命令が発令されてしまうと、その後の離婚調停や離婚裁判でも保護命令を申し立てられた人がDVを行っていた人物であるということで、話が進められてしまい、子供の親権や慰謝料の支払い義務等であなたがとても不利な立場になる可能性が高くなります。

  

弁護士をつけた場合、その弁護士の日程に合わせて審尋は変更が可能になることもあります。

  

6 保護命令が発令された後の手続き

保護命令が発令されるか否かは申し立てがあってからかなり早急に決まります。そして、申し立て人から適正な証拠となる資料が提出されると保護命令が発令されるケースが多いようです。保護命令が発令されたことに不服がある場合は、上級の裁判所に不服の申し立てをする即時抗告の手続きをして、命令の有効性を争うことができます。即時抗告の手続きができる期間は1週間と非常に短く、迅速な対応が必要となります。そして、注意しなければいけないこととして、即時抗告の手続きを行って争うことになったとしても、その期間中も一旦発令された保護命令には従う必要があるということです。保護命令に違反すると、刑罰が科せられることになります。また、違反すると、離婚調停や離婚裁判でも保護命令を無視したとマイナスのイメージを持たれてしまい、心証が悪くなり不利な立場となり得ます。

  

発令を回避して、申立人と何らかの示談的合意をすることもひとつの方法です。

  

7 保護命令の有効期間は?

保護命令の有効期間は、接近禁止命令は、6か月です。また、退去命令の有効期間は2か月です。しかし、この期間が終了すると同時に再び保護命令の申し立てが行われる場合があります。再度の申し立ての際もあらためてあなたの言い分を伝える機会があります。保護命令期間中に問題行動はなかったことなどを主張する機会となります。

  

8 保護命令への対応や離婚手続きを弁護士に相談するのが良い理由

保護命令は、DV被害を受けている人の身体や生命を脅かす暴力から守るために発令されるのですが、申し立てられる相手の行動を制限するものでもあるため、訴えや主張だけで発令されるものではなく、法律の定める要件を満たす必要があります。そして、訴えを立証する証拠資料の提出も必要です。

  

申し立てられた人も不服を訴えるためには、DV事実がないことを主張するだけではなく、事実関係を明らかにして、申し立ての際に提出された証拠の矛盾点を指摘することで信用性の有無を争うことになります。これらの準備を短期間で行わなければいけません。

  

また、保護命令の先には離婚調停や離婚裁判があります。何をどうすればよいのか不安である場合は、離婚手続きに詳しい弁護士に相談するのが良いでしょう。

  

夫婦喧嘩の際のちょっとした大きな声が録音されているだけだとか、その際には相手がまず大きな声を出したのでそれにつられて大きな声を出したが、暴力的なことは全くしていない・・・と言った説明を丁寧にすることで、発令を免れることは可能なことも多いです。

  

9 まとめ

保護命令は、配偶者や交際相手からの暴力から身を守るために申し立てるものですが、暴力の事実がないにもかかわらず、離婚交渉を有利に進めるために保護命令を申し立てるケースが少なからずあるようです。そういった不当な申し立てを受けた場合には、矛盾点を指摘して、別の証拠を提出するなど事実と異なる点を主張して保護命令の発令を防ぐことができます。

  

発令により、今度の子どもとの関係が断絶されることもあるので、早めの対応が得策です。一人で悩まず専門の弁護士を頼るのが良いです。