出展:大阪家庭裁判所 家事第3部 遺産分割係
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1. 申立てについて
申立人は,調停申立てに必要な書類を揃えたり,相手方に送る申立書類等を準備したりする必要がありますが,申立人,相手方どちらであっても手続において有利になったり,不利になったりすることはありません。
調停の申立先となる家庭裁判所(管轄裁判所)は,相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定めた家庭裁判所となりますが,相手方が複数いて管轄裁判所が複数ある場合,どの家庭裁判所に申し立てるかは,申立人に選択していただくことになります。 ただ,相続人の中でも特に意見が対立している方や,折り合いがつかない方と調停手続を通じて話し合うことが紛争の解決につながると考えると,その方の住所地を管轄する裁判所に申立てをすることが,結果として,スムーズに調停手続を進めることにつながると考えられます。
最初から審判の申立てをすることも可能ですが,審判の申立てをしても,裁判所の判断で,審判に先立って調停を行う(調停に付す)ことがあります(家事事件手続法274条1項)。 調停に付された場合,その調停手続が行われるのは,審判を申し立てた家庭裁判所ではなく,調停の管轄裁判所(相手方の住所地を管轄する裁判所)となることがあります。
相手方に対して,初回の調停期日をお知らせする際に,ご意向をお伺いする照会書を送りますので,事情があり,出席が難しい場合でも裁判所宛てに書面などでご意向をお伝えいただくことも可能です。 当事者全員の出席が困難で調停が成立しない場合や,意向がはっきりしない不出頭当事者や欠席しがちな当事者がいる場合等において,当事者双方のために様々な事情を考慮して,審判の形で一定の解決を示すことが相当だと判断した場合には,「調停に代わる審判」という形で結論が示されることもあります。
相続分譲渡証書もしくは相続分放棄証書(譲渡人もしくは放棄をする者の署名及び実印の押印のあるもの)及び印鑑登録証明書の写しを添付して,提出してください(原本は調停期日内で確認をさせていただきます。)。申立前に上記の書類が揃っている方については,調停の当事者に含めずに申し立てることができる場合があります。 ※不動産の登記の状態などによっては,調停に参加してもらう必要がある場合があります。
まずは,「成年後見手続」が必要です。成年後見手続によって選任された成年後見人等が調停に参加することになります。 成年後見手続については,その対象となる方の住所地を管轄する家庭裁判所の成年後見担当部署にお問い合わせください。
未成年者の親権者等が法定代理人として調停に参加することになりますが,親権者も同じく相続人である場合は,未成年者と法定代理人の利害が対立するため,未成年者の「特別代理人」の選任の申立てをする必要があります。親権者等自身は相続人ではないが,相続人である複数の未成年者の親権者等となっている場合にも,「特別代理人」選任申立てが必要です。 特別代理人の選任の手続については,未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所の担当部署にお問い合わせください。
被相続人が存命中や死亡後に,他の相続人が引き出した預貯金に関しては,原則,遺産分割調停の遺産の対象とはなりません。ただし,相続人全員が合意をすれば,「調停・審判」で扱うことができます。もし相続人全員で合意ができなければ,別途,民事訴訟で争うこととなります。 なお,令和元年7月1日以降に死亡した被相続人については,被相続人の死後に,被相続人名義の口座からの無断引き出しなど,遺産に属する財産が処分された場合であっても,その処分をした相続人以外の相続人が合意すれば,現存する遺産とみなして遺産分割の対象とすることができます。
遺産分割調停は,まだ分けられずに残っている遺産について,分割協議を進めて手続ですので,「遺産分割調停」で取り扱うことはできません。家事調停の手続を利用して話合いをされたい場合は,「遺産分割後の紛争調整調停」を利用することができます。
2. 調停の参加について
調停はあくまでも話合いの手続ですので,調停期日に出席しない当事者に対して不利益が課されるわけではありません。また,欠席した当事者を強制的に出席させるような制度はありません。 当事者が調停期日に出席しないこと等から,裁判所が合意する見込みがないと判断した場合には,調停は不成立となり,審判手続に移行します(新たに審判の申立てをする必要はありません)。 当事者全員の出席が困難で調停が成立しない場合や,意向がはっきりしない不出頭当事者や欠席しがちな当事者がいる場合等において,当事者双方のために様々な事情を考慮して,審判の形で一定の解決を示すことが相当だと判断した場合には,「調停に代わる審判」という形で結論が示されることもあります。
調停期日にどうしても出席できない事情があり,弁護士以外の方を代理人とすることを希望する場合には,裁判所の許可を得れば,代理人となることができます(家事事件手続法第22条1項)。許可を受けた代理人は,本人に代わって調停期日に参加することができます。 申請をする場合は,代理人許可申請書を当該事件の係属している家庭裁判所に,申請書を提出する必要があります。 申請書に必要事項を記入し,申請者の署名及び実印を押印のうえ,印鑑証明書(原本)を添付して提出してください。なお,申請には手数料500円(収入印紙)が必要です。後日,裁判所から結果をお知らせします。 ※なお,申請をしても裁判官の判断により許可されない場合があります。
調停手続は,非公開の手続ですので,原則当事者以外の方は,家族であっても期日には立ち会うことはできません。 例外的に,当事者以外の方であっても手続代理人の許可を受けた場合等には,期日に立ち会うことができます。代理人許可の手続については,Q11 を参照してください。 なお,障害等を理由に,付き添いなどの配慮を必要とされる場合には,あらかじめ担当書記官に直接ご相談ください。
遠方に居住している,病気や怪我,その他の理由によって期日に出席することが困難な場合は,裁判所の判断により,電話会議システム等を利用して期日に参加できる場合があります。申立ての際又は担当書記官にご相談ください。
3. 申立資料の収集について
被相続人にどのような遺産があるのかについては,相続人ご自身で必要な資料を集めてください。裁判所が調査をして遺産を探すことは原則しませんので,相続人の立場としてご自身で金融機関などに残高照会を行っていただくことになります。どうしても取得ができなかった場合は,その旨を申立ての際に裁判所に提出する書類に記載してください。
基本的には,「共同相続人の立場」で取得できます。相手方の本籍地や住所地の市町村役場の窓口で「家庭裁判所の遺産分割調停(又は審判)の申立手続で裁判所に提出するために必要である。」ということを伝えた上で,取得のために必要な手続を確認してください。 市町村役場の判断によっては,上記取得目的を伝えても取得ができないケースがあります。その場合は,その市町村役場の窓口で,取得のために何が必要かを確認していただいた上で,調停(又は審判)申立ての際に,そのことがわかるように,事情を記載した書面を添えてください。 (参考 戸籍法10条の2第1項,住民基本台帳法12条の3第1項―第3者請求)