準確定申告とは、故人が生前に受けた所得に対する確定申告を、相続人が行うという手続きです。相続人全員の同意が必要となるので、まとめてできるかが重要です。
Contents
1. 準確定申告とは?
遺産相続と大きな関係がある準確定申告とは、どのような確定申告なのでしょうか?
1-1. 準確定申告は故人の確定申告
確定申告とは、1月1日から12月31日までに得た所得を計算し、納付するべき税金を税務署に申告する作業のことです。確定申告の期間は、申告対象期間の翌2月16日から3月15日までと決められているため、この期間内に、前年度の所得や経費などの必要書類をすべてまとめて申告しなければいけません。
しかし、亡くなってしまった人は、税務署に足を運んで申告をすることはできません。その場合、相続人が故人に代わって確定申告を行います。これを、準確定申告を呼びます。基本的に、申告手続きは通常の確定申告と同じなので、あえて弁護士や税理士に依頼する必要はありません。
1-2. 準確定申告は誰が必要?
被相続人が亡くなったからと言って、必ずしも準確定申告が必要になるというわけではありません。準確定申告が必要なのは、亡くなる前に一定額以上の所得を得ていた自営業の人や個人事業主、また、一定額以上の高給があった会社員などが対象となります。
年金生活をしていた高齢者でも、準確定申告が必要になるケースはあります。それは、公的年金などの収入や株の利益など年金以外の所得が該当し、それぞれに申告が必要なラインが設けられています。
さらに、アパートやマンション経営をしていて不動産所得があった故人も準確定申告が必要となりますし、生前に不動産や株式を売却して現金化していた場合にも、その譲渡益に対して税金がかかるため、準確定申告をしなければいけません。
生命保険や損害保険による所得に関してでも、準確定申告を行う必要があります。これは、一時金も場合でも満期金でも同じで、貯蓄タイプの生命保険に加入していた高齢者の場合には注意が必要です。
2. 準確定申告すると必ず還付されるの?
準確定申告では、高い確率で税金還付を受けることができます。還付金は、納めるべき税金と、実際に収めた税金の金額によって計算されるため、準確定申告なら必ずいくら還付されるという線引きはできません。しかし、給与や年金から源泉徴収されていた人や、生前にかかった医療費で医療費控除を受ける場合、また住宅ローンの控除やふるさと納税などによる控除も、通常の確定申告と同じように適用対象となります。
3. 通常の確定申告vs準確定申告、何が違う?
通常の準確定申告と故人の代理で相続人が行う準確定申告とでは、さまざまな点が異なります。
3-1. 申告期間は相続開始から4か月間
通常の確定申告では、1月1日から12月31日までの所得を、翌年の2月16日から3月15日の限られた期間内に申告しなければいけません。しかし、準確定申告の場合はこの期間まで待つわけではなく、被相続人からの相続を知ってから4カ月以内に行わなければいけません。申告のために与えられた準備期間はわずか4カ月間と短いのですが、準備ができないからという理由で期限を延ばしてもらうことは、残念ながらできません。
3-2. 給与や年金所得はすべて相続財産
故人が生前に受け取っていた給与や年金は、全て所得税の課税対象となるだけでなく、相続財産という扱いになります。死亡日の数日前に支給された年金なども全て、準確定申告が必要な所得となるので注意してください。
3-3. 所得控除は月割りされない
給与や年金などの所得を受けていた人は、通常の確定申告でも準確定申告でも、所得控除を受けることができます。これは、基礎控除や扶養控除などにも共通します。ただし、基礎控除や扶養控除に関しては、年間で決まっている定額が控除となりますが、所得控除に関しては定額ではなく、死亡日までの金額が計算されて差し引かれることになります。この点は通常の確定申告と大きく異なる点ですし、所得控除の特徴と言えます。
3-4. 死亡する年よりも前の確定申告も可能
生前に寝たきりの状態が続いていた故人の中には、死亡した年だけでなく、前年度の確定申告もできていないというケースは珍しくありません。親族などが代理で申告できれば良かったのかもしれませんが、遠方で離れて暮らしていると、なかなかそうした部分に気づけないことはあるものです。
もしも準確定申告をする際に、死亡した年の確定申告だけでなく、それよりも以前の確定申告をされていない場合には、過去にさかのぼって確定申告することになります。ただし、既に納付した税金の還付に関しては、過去5年間のものまでとなっており、5年以上経過した還付金を請求することはできません。
4. 準確定申告の注意点
準確定申告で、注意しなければいけない点は次の通りです。
4-1. 相続放棄する人は準確定申告はしないこと
準確定申告は、被相続人の所得申告を相続人が行うというルールが決められています。そのため、もしも相続放棄を検討しているなら、準確定申告を行うことは避けたほうが良いでしょう。とりあえず準確定申告を行った上で相続放棄の手続きをしようとしても、準確定申告をしたことで、相続を単純承認したと見なされてしまう可能性があります。そうすると、後から相続放棄の手続きをしても、認められなくなってしまうかもしれません。
4-2. 死亡日の後に支払った医療費は控除対象外
故人にかかった医療費は、準確定申告でも医療費控除を適用することができます。しかし、これは死亡日よりも前に支払った金額のみが対象となります。故人が利用した医療費でも、死亡した後に相続人が支払った医療費の部分については、残念ながら医療費控除の対象外となってしまうので、注意してください。
もしも相続人と故人が生計を一つにしていた場合には、死亡日よりも後に支払った故人のための医療費を、相続人の医療費として通常の確定申告で申告することができます。しかし、生計を一つにしていない別居の相続人の場合には、残念ながら相続人の医療費として申告できません。
死亡日の後に支払った医療費は、相続財産から債務として差し引くことができます。金額が大きい場合には、ぜひこの控除を利用することを検討しましょう。
5. 準確定申告に必要な書類
準確定申告は、相続人が行います。法定相続人が複数いる場合には1人が代表して行うこともできます。しかし、相続人全員の合意があることを示す付表を提出しなければいけません。
では、準確定申告では、どんな書類が必要となるのかをみてみましょう。
5-1. 確定申告書
準確定申告でも、通常の確定申告と同じ申告書を使用します。準確定申告の場合には、確定申告書と書かれた部分に「準」と手書きで追加すればOKです。
5-2. 付表
上記した通り、相続人が2人以上いる場合には、相続人全員が共同で準確定申告をしていることを示すための付表が必要です。税務署が準備しているフォーマットに相続人が必要事項を記入しても良いですし、マイナンバーなど個人情報を他の相続人に知られたくない場合には、別々に作成して提出してもOKです。
5-3. 添付書類
通常の確定申告と同様に、所得や控除を示すための添付書類も、申告書に合わせて提出しましょう。源泉徴収票を始め、保険の控除証明書や医療費控除のための明細書、相続人の本人確認ができる身分証明書やマイナンバーも必要です。また、相続人の代表1人が還付を受ける際には、他の相続人から委任状を取る必要があります。