遺産分割協議・調停

遺産をめぐる兄弟姉妹間のトラブル!

遺産相続では、兄弟姉妹間のトラブルが起こりやすいものです。まずは、当事者全員が参加して協議を行い、まとまらない場合には弁護士に相談しましょう。

生前に遺言書を作成しておいてもらえるとトラブル防止につながります。

1. 兄弟姉妹のトラブルが起こりやすい遺産相続

古今東西、遺産相続においては兄弟姉妹による「骨肉の争い」が起こりやすいものです。被相続人が残した遺産が、現金や有価証券などのように人数分でスッキリと分割できるものなら、トラブルが起こるリスクはそれほど大きくないでしょう。

しかし、相続対象となる遺産には、不動産などのように平等に分割できないものもあり、それをどのように分割するかによって、兄弟姉妹間のトラブルが起こりやすくなります。

1. まずは、冷静に、当事者同士の話し合いを

遺産相続では、最初から弁護士を立てて話し合いをしなければいけないわけではありません。まずは相続人が全員一堂に会し、具体的に遺産をどのように分割するかを話し合うことから始めます。この話し合いは、遺産分割協議と呼ばれるもので、話し合いだけで折り合いがつけば、兄弟姉妹でトラブルに発展する可能性は低いでしょう。

この話し合いに弁護士をいれることで冷静に話せることもありますが、かえって相手を怒らせることもあります。まず、このレベルで、介在させる場合には、あくまでも事実の整理をするために依頼をしたというような穏便な方法が良いでしょう。

もっとも、自分は両親とは疎遠にしていて、遺産として何があるかわからないとか、かなり使途不明金があって、横領された金銭がありそう・・・・、とてもではないが話し合いは無理であるということもありえます。

2. 遺言がある場合にはどうなる?

被相続人が遺言を残していた場合には、遺言書に書かれた遺産分割が優先されます。この場合、当事者同士で話し合って誰が何を相続するかという点でまとまっていたとしても、遺言書の内容が優先です。

もしも遺言書に書かれていた内容が、被相続人の「遺留分」に満たない時には、その相続人が遺留分侵害額請求の申し立てをすることができます。そうなると、弁護士を立てて調停とか訴訟が必要となります。

もっとも、請求する権利は法律上の権利なので、そういう権利はないというようなことは言われないので、淡々と請求すれば良いということもいえます。

2. 遺産分割で知っておきたいポイントとは?

遺産分割で遺言書がない場合、相続人が話し合いによって、具体的な遺産分割を決めていきます。その際には、「誰が」「何を」「どのように」相続もしくは分割するのかということを決めていきます。

1. まずは相続人の範囲を把握

相続人とは、法的に故人の遺産を相続する権利を持っている人のことを指します。血縁関係にある遠い親戚とか、家族のように親しくしていた人や介護してくれた人などは、遺言書がない限りは法的な相続権はありません。

民法によって定められている相続人は、範囲が決められています。まず、どのような場合でも相続人となるのは、配偶者です。婚姻期間などに関係なく、法的な配偶者なら常に相続人となります。

出典:東京司法書士会

この図を見てください。

大きなルールとして、覚えることは「配偶者は相続人になる」ということです。

ルール1 配偶者は相続人です

そして、配偶者以外では、第1順位に来るのは故人の子どもです。

ルール2 そして子がいれば、配偶者と子が相続人です。

もしも相続人となるはずの故人の子がすでに他界している場合、その人にさらに子(亡くなった人の孫)がいれば、その人が相続人となります。これは、「代襲相続」と呼ばれています。故人に離婚歴がある場合には、前妻との間に生まれた子供も、第1順位の相続人となります。

ルール3 その子が死亡していたら、孫が相続人です。

第2順位は、直系の尊属です。

直系尊属というのは、故人から見たら親に当たる立場で、父もしくは母、どちらかが存命ならその人が相続人です。両方とも生きているなら、ともに相続人となることができます。

ちなみに、相続人となる両親が離婚していても、相続の点ではマイナスの影響はありません。また、もしも故人に第1順位となる子供、もしくはその子供が相続人となる場合には、直系尊属には相続権はありまルール3 その子が死亡していたら、孫が相続人です。

ルール4 第2順位は亡くなった人の親。亡くなった人に子とか孫がいる場合、第2順位は相続人にならない。

第3順位は、兄弟姉妹。

故人に配偶者も子供、そして孫もおらず、故人の両親もすでに他界している場合には、相続人は故人の兄弟姉妹となります。兄弟姉妹が他界している場合には、その子が代襲相続人として相続権を引き継ぎます。

ルール5 第3順位は亡くなった人の親や子、孫がいない場合に相続人になる。兄弟姉妹。

ルール6 第3順位の兄弟姉妹が死亡していたらその子が相続人になる(代襲相続)。

相続人が、高齢で認知症になっているとか、障害があって判断能力が低い場合には、成年後見人が必要になります。その後見人をつける手続きから、弁護士が申立てをしたりサポートしてくれますので、依頼すると良いでしょう。

ルール7 相続人が認知症や障害で判断能力が低い場合、相続には、成年後見人が必要になります。

2. 分割しなければいけない遺産を把握

誰が遺産相続の権利があるのかを把握したら、次に遺産分割するべき遺産を把握しなければいけません。遺言書などがあれば、遺産がリストアップされていて分かりやすいですし、資産管理をしっかり行ってきた故人なら、所有していた資産が相続人にも分かりやすく整理されているかもしれません。しかし、必ずしもそういうわけではありません。急死されることもあります。

場合によっては、相続人が知らない財産がかなりあるかもしれません。証券口座などを複数持っていることもあります。

そのため、個人が残した遺産を把握するためには、まずは遺産の全容を解明するための調査が必要となります。通常は、これは相続税の申告の際に必要になりますので、相続税の申告はできれば相続人がまとまってすることが望ましいです。

3. 遺産をどのように分割するか?

そうやって、遺産が何かわかった後、どのように分割するかは、兄弟姉妹でトラブルが起こりやすい部分です。

うまく、トラブルを起こさずに話し合いで解決するためには、遺産分割協議には相続人が必ず全員参加して、分割方法について全員が納得する必要があります。通常仲良くしている関係なら、預金は誰がもらってマンションは誰がもらって、不足分はお金で埋め合わせるとか、そういう協議が可能でしょう。でも、1人でも疎遠な人がいて、合意しない場合、調停や審判など法的な方法で解決策を模索しなければいけません。コストはかかりますが、弁護士を立てる必要があるでしょう。ちなみに遺産の分け方については、相続人全員が合意すれば、全員へ平等に分割しなくても、一人が全遺産を相続するという方法も問題はありません。介護をした人がたくさんもらっても良いのです。

3. 法定相続分とは?

遺産分割は、当事者が全員合意していれば、誰が何を相続するかを自由に決めることができます。しかし一人でも合意がなければ、そうした自由な遺産分割はできません。もしも協議による遺産分割に納得できない相続人が家庭裁判所へ調停の申し出をした場合には、民法の規定に基づいて、相続人には、法定相続分が認めらます。

1. 法定相続分は相続人の関係によって異なる

法定相続分は、相続人と故人との関係によって異なります。

例えば相続人が故人の配偶者と子供の場合には、配偶者は遺産の2分の1を相続する権利があり、子供はその数に応じて残りの2分の1を等分しなければいけません。

出典:東京司法書士会

出典:東京司法書士会

もしも、亡くなった人(故人)に、配偶者がいてその親が生きている場合、上記のように、配偶者は3分の2を相続する権利があり、直系尊属(親)は残りの3分の1を等分します。

次には、故人に配偶者がいて子がいなかった場合で親が死亡している場合です。配偶者が全遺産の4分の3を、兄弟姉妹が4分の1を相続して、兄弟姉妹が複数いる場合は、この4分の1を均等に分けることになります。

亡くなった方と父母の一方が異なる場合の兄弟姉妹がいる場合、そのような方は、父母双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1となります。

出典:東京司法書士会

2. 不動産は等分割が難しいので、さて、どうする?

遺産分割の中でも、等分に分けることが難しい不動産は、兄弟姉妹間でトラブルになりやすい傾向があります。万が一揉めてしまった場合には、売却して利益を等分する換価分割という方法や、土地を分割して現物で相続する現物分割という方法、または相続した遺産の価値に合わせて相互に利用権や金銭を支払うことで不公平をなくす代償分割の方法、から選択することになります。

不動産がうまく分けられた場合は、登記は、司法書士に依頼するとストレスなくできます。

1. 遺産相続でトラブルになったら弁護士へ相談しよう

遺産相続は、仲が良かった兄弟姉妹でも、揉めやすいものです。もしも、そもそも疎遠であったりすると、話し合いは不可能に近いです。お互いに配偶者も交えて、感情的になって、当事者同士の解決はとても難しいといえます。

話し合いがまとまらないまま、ダラダラと時間が過ぎてしまうと、せっかく残された家を利用できない問題が出てきたり、家とかアパートを貸したりしている場合には、賃貸収入を分けて申告するということが必要になってきます。

相続においては、相続税の支払期限などもありますから、できるだけ速やかに解決する必要があるでしょう。そのため、当事者間の話し合いで解決できない場合には、早めに弁護士に相談して税務申告とともに、分割も早く解決することがよいでしょう。

4. 兄弟姉妹が揉めないための解決法

自分が亡くなった後に、子供達や兄弟姉妹が遺産分割でトラブルにならないためには、生前対策をしておくのが得策です。生前対策としては、遺言書を作成し、具体的に誰が何をどのように相続するかという点を指定すると良いでしょう。

遺言書を作成する際には、自分にはどんな資産があり、どのぐらいの価値があるかという点も考慮し、できるだけ不公平がない相続を指定することで、残された家族が遺産相続でトラブルになる事態を回避しやすくなります。

遺言書を書くほど資産を持っていないという人や、遺言書なんて仰々しいものは書きたくないという人は、最低でも生前に自分が所有している財産をリストとして作成することをおすすめします。また、生前贈与の状況や、遺産の用途に関して自分の希望を書いておくことも、遺産分割でのトラブルを未然に防ぐことができます。例えば、自宅の相続でトラブルになるなら、売却して売却益を等分して欲しいなど、本人のリクエストがあれば家族もそのように対処しやすくなります。

しかし、遺言は残されるだろう子ども達のほうから、無理矢理作ってもらうことは、できません。あくまでも、本人がトラブルを回避しておくために作ろうと思わなければできません。また、認知症になったご老人には作れませんので、気をつけましょう。