相続問題に取り組む弁護士が教える遺産分割調停・審判の進め方

相続は遺産分割会議や遺言に基づいて行いますが、話し合いで解決しない場合は、調停を経て遺産分割審判を選択することもできます。遺産分割審判とは何か、どのように進めていくのか、また弁護士に依頼するとどんなメリットがあるのかを説明します。実は結構、利用してしまったほうが早く解決するという場合もあるのです。

1. 相続発生後遺産分割審判に至るまでの流れ

遺産相続の話し合いは、遺産分割協議から始まります。遺産分割協議では、法定相続分参考にしながら、どの財産を誰に継承させるかを決めていきます。遺産分割協議は被相続人が死亡すると開始しますが、すべての相続人の同意がないと成立しないので、相続人を1人も漏らさないように確認しておきましょう。これは相続人たち自ら行いますが、弁護士を代理人として立てることもできます。協議は実際に対面で集まる必要はなく、電話やその他の方法で連絡を取って、相続人全員が合意に達すれば問題ありません。

合意内容に基づいて遺産分割協議書が作成され、それぞれが署名捺印を行います。不動産を売却・賃貸したい場合や、被相続者の凍結されている預金口座から引き出す場合には、遺産分割協議書が必要になります。

遺産分割協議で折り合いがつかなかった場合には、遺産分割審判と遺産分割調停のどちらかの段階に進みます。この2つはどちらも家庭裁判所で手続きを行います。遺産分割調停の申し立てをすることにした場合(通常はこちらとなります。)、申し立てをする人は、当事者全員に申し立てをしたことを知らせておくのがベストです。事前に連絡しておけば、突然の呼び出し通知を拒否する人が出るという事態を防ぐことができ、スムーズに調停が進みます。

調停の場合、申し立てをする所は相手方(複数の場合は、そのうちの1人)の住所地を担当区域とする家庭裁判所です。遺産分割調停では調停委員会が調停を行いますが、複雑なケースでは家庭裁判所調査官もかかわることがあります。

話し合いによって、すべての当事者の合意が得られれば調停が成立します。成立の日には当事者が全員集まり、裁判官が調停事項を読み上げ、全員の同意を確認後、成立となります。この時には原則として相続人全員が出席しますが、出席したくない場合には、弁護士に代理として出席してもらうこともできます。調停が成立すると、裁判所が調停調書を作成します。

遺産分割審判は普通、遺産分割調停の後に行われますが、話し合いでの解決は難しいと思う場合は、直接遺産分割審判の手続きに進むこともできます。遺産分割審判と遺産分割調停の違いは、審判の場合は話し合いではなく、裁判官が一方的に判断するというところです。ただ、遺産分割に加わる人たちのほとんどは親族なので、親族関係がこじれないためにも、遺産分割は話し合いによって決めるのが望ましいと考えられているため、家庭裁判所では遺産分割審判の申し立てがあっても、多くの場合、裁判官の職権でまず調停を行うことが多いです。

さらに調停での話し合いでも、裁判官がいろいろな主張整理をしようとして、争点を明らかにしなるべく和解的解決をしようと努力してくれます。

2. 遺産分割審判の進め方と弁護士に相談するメリット

調停が不成立となると、特別な手続きは必要なく、自動的に遺産分割審判に進みます。不成立になった後、遺産分割審判への移行と最初の期日に関する連絡が当事者に届きます。遺産分割審判では、各当事者が自分の主張とそれを立証する書類や資料を提出します。審判は通常裁判官が一方的に行うものですが、裁判官の判断により、話し合いの場が設置されることもあります。もし、遺産分割審判の途中で話し合いがまとまった場合は、成立調書が作成され、遺産分割審判手続きは終わります。

遺産分割審判は回数の制限はなく、各当事者が主張を言い終わるまで、1~2か月に1回のペースで繰り返し行われます。通常は、期日は1回程度ですが、複雑な争点があれば複数回開催されます。

遺産分割審判でも調停でも手数料がかかり、金額は法律によって決められていますが、鑑定をしない限りはあまり高額ではありません。手数料はとりあえず申立人が支払いますが、最終的な負担をどうするかは裁判官が決めます。

遺産分割審判の審理が終わったら、裁判官が審判書の作成をします。審判書には、裁判官がそれぞれの主張や証拠を考慮して判断した、遺産分割の仕方が記されています。審判書に記されているのは、主文(遺産の分け方が記されている)、理由の要旨、当事者名、審判をした裁判所名です。審判書の作成をもって、審判の成立となります。審判書を書くメリットは、裁判官の判断の内容が明らかになること、当事者が不服申し立てをするかどうかを判断する資料が得られることです。また、不服申し立てを受けた裁判所が、家庭裁判所の審判がふさわしいかどうかを判断する助けにもなります。

審判書が作成された後には告知という手続きが必要になり、これによって審判書が有効になります。告知は審判の席で行われることもありますし、告知の内容が当事者に郵送されるということもあります。この告知の手続きがあるので、当事者が知らないうちに審判の効力が発生していた、という事態を防ぐことができます。

告知を受けて、内容に不満がある場合には不服申し立てができます。これを即時抗告と言いますが、即時抗告をする場合は、遺産分割審判の日から2週間以内に申し立てをする必要があります。

即時抗告は、高等裁判所に対して行います。家庭裁判所の審判官と違う人が審理するので、家庭裁判所で認められなかった内容が、即時抗告審で通ることもあります。不服申し立てを決められた期間内にしなかった場合や不服申し立てが退けられた時に、審判が確定して、審判の内容が有効となります。審判が確定すると、不動産の名義変更や一定の金銭が取得できます。有価証券の名義変更などもできます。

遺産分割審判が確定したら、当事者はそれに沿った対応が求められますが、それを拒否して、不動産の名義変更をしないとか払うべきお金を払わないという態度を取る場合もあります。この場合には、強制執行に進むことができます。これには、直接強制と言って、強制的に債権の内容を実現させる方法と、間接強制といって、警告を発し、心理的な負荷をかけて従わせるという方法があります。さらに、第三者に依頼して債務を履行し、その費用を取り立てる代替執行が選ばれることもあります。

遺産分割審判は自分で対応することもできますが、弁護士に依頼するメリットが大きいです。審判では裁判官は中立なのであなたに対して有利な助言はしてくれませんから、助言をもらえる場がありません。法的な解釈も特に教えてもらえるわけではありません。

遺産分割審判に欠席して期日までに証拠を提出できないと、自分に不利な状態で審判が進んでいってしまいます。ですから、審判には欠席しないほうがいいのですが、事情でどうしても出頭できないということもあります。そのような場合に、弁護士に依頼すれば代わりに出頭してもらうことができます。

遺産分割審判では法律に基づく主張を書面で行う必要がありますから、素人では難しい面がありますが、弁護士に依頼すれば、自分の要望を実現させるのに有効な主張をした文書を作成してもらえます。弁護士は当然、法律に通じているので、重要な点を見落としてしまうことがありません。審判を有利に進める上で必要な大事なことを、貴方の味方として、アドバイスしてもらうこともできます。

ただし、弁護士でも得意分野が違うので、遺産相続関係に力を入れている弁護士を選ぶ必要があります。ホームページの情報などで、遺産相続において経験のある弁護士を探しましょう。遺産相続に力を入れている弁護士は、司法書士や税理士とも連携しています。ホームページを見て確認し、直接問い合わせてみてください。

○専門弁護士と謳っていても、日弁連で専門能力が認定されているという意味ではないので、謳い文句だけで判断しないで相談に行ってみましょう。また、遺産分割審判では付き合いが1~3年と長くなるので、相性のいい、コミュニケーションが取りやすい弁護士を選ぶことも大事です。

当事務所では、遺産分割調停の事件の無料相談をお受けしています。また、遺産分割の弁護士費用も安い設定となっていますので、お問い合わせください。

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