遺言書の保管はいくつかの方法があり、弁護士に預けることもできることもあります。
トラブルを避けるための方法と、遺言書の正しい開封方法をチェックしてみましょう。
正しいやり方を取らないと、相続の権利を失うことすらあります。
1. 相続弁護士に預けることもできる?遺言書の保管方法とは?
親や配偶者が亡くなった時、いろいろな手続きをすると共に、しなければならないことがあります。それは遺言書の確認です。遺言書には遺産をどのように分割するかが記載されていますので、相続を正しく行うためには遺言書を見つける必要があります。しかし、保管方法によっては、こうした点でトラブルが起こりやすくなってしまうこともあります。そのため、どんな保管方法があるのか、どの方法が相続をスムーズに進めるのに良いのかを知っておくべきです。
より一般的で気軽なのが、自宅に保管するという方法です。自分で遺言書を作って、金庫や机の引き出し、重要な他の書類をしまっている箱などに入れるわけです。この自宅保管のメリットは、やはり手間がかからず、費用もいらないということです。また、きちんと遺言書について家族に伝えておけば、すぐに手に取れるということもメリットとなります。
一方で、自宅保管はデメリットもあります。その代表的なものが、家族に見つけてもらえないリスクがあるということです。どこに保管しているか分からず、まとめて遺品を整理する中で、他の物と紛れてしまって処分されてしまう可能性すらあります。遺言書を作ったということを家族に伝えていないと、そもそも遺言書が存在するのかどうかも分からず、探しもしないという事態も起こり得ます。せっかく作っても遺言書の意味がありません。
自宅に保管していて見つけることができたとしても、他の相続人から、同居していた人が書き換えたのではないかとか、新しい別の遺言書を隠しているのではないかと疑われることもあります。いらぬ相続トラブルを引き起こす可能性もあります。
より確実な保管法としては、法務局に保管してもらうというものがあります。これは2020年7月から始まった制度で、自筆証書遺言でも保管が可能です。本人が遺言書を作った後に法務局に持ち込み、本人確認を済ませた後、保管してもらいます。こうすることで紛失する心配がなくなりますし、書き換えを疑われることもありません。
この制度では、本人が死亡した場合、相続人の誰かが保管されている写しをもらうことができますし、原本を確認することも可能です。そして、法務局は誰かが遺言書を確認した場合、他の相続人にもそのことを通知することになっています。すべての相続人に対して、遺言書が存在していて、相続人がすでにチェックしたということが明らかになるわけです。こうして、漏れなく全ての人に遺言を知ってもらうことができるのがメリットです。
ただし、誰かが死後に請求をしないと、こうした通知はされません。そのため、作成者が法務局に保管してあるということを伝えていないと、高い確率で遺言書の存在に気付かないのです。この手続きを取ったら、必ず誰かに伝えるようにしましょう。
自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言を作った場合は、公証役場に保管されることになります。公証人のサポートで遺言書を作りますので、法的に有効性が高く、紛失や改ざんの心配もありません。また、裁判所での検認をしなくても良いのもメリットです。一方で、作成に手間と費用がかかることがデメリットとなります。さらに、法務局保管と一緒で、相続人にそのことを伝えていないと、存在に気付かないということもあり得ます。
もう一つの確実な方法としては、遺言書作成の後に、弁護士に保管してもらうというやり方があります。作成からサポートしてもらえば、法的に有効な文書にすることができます。また、死亡時に関係する相続人に通知してもらうように取り決めておくこともできて、より確実に遺言の通知が可能です。さらに、第三者に預かってもらったということで、紛失や改ざんについてもトラブルが生じません。もっとも、法務局の利用が可能となった今費用がかかることや、確実に死亡時の連絡ができるように取り決めておかないと意味がないという点のデメリットもあります。
このように、いくつもの保管方法がありますが、トラブルを避けるためには、やはり自宅以外の保管というのが安心です。自筆証書遺言を作成する場合は、法務局保管が良いでしょう。もし、事前に家族に伝えておきたくはないいということであれば、弁護士に死後の連絡も任せておくことで、より柔軟に対応できます。
2. 遺言書の開封方法とは?
死後に相続人が遺言書を発見した場合には、法律によって定められた手順で処理する必要があります。
まず、検認という作業をしないといけません。これは、自分たちだけで勝手に遺言書を開封するのではなく、裁判所で開けるというものです。自分たちだけで開けて確認しても良いとすると、どうしても誰かが抜け駆けしてチェックしたり、書き換えされてしまったりするリスクがあります。そこで、誰も勝手に開封してはならず、必ず裁判所で関係者の立ち合いの下、一緒に確認するということが求められているのです。そして、その場で遺言書が本人のものであることや、内容を全員が確認したということを明確にします。
検認は、自筆証書遺言を自宅で保管していた場合に求められる作業です。公正証書遺言の場合は公証人によって内容が確かめられていますし、公証役場に保管されているので、検認をしなくても有効だと見なされておりこれは省けます。
また、自筆証書遺言であっても、法務局で保管した場合は検認が不要となります。やはり、内容を開示した形で法務局に保管されますので、改ざんの可能性がないからです。こうしたことを考えても、自宅保管は避けた方がよいでしょう。
このように、自宅保管の遺言書を開封する時には裁判所での検認が必須です。もし、これをしないで自分だけの時に開封してしまうと、過料が科せられることになります。このようなペナルティーはありますが、相続人としての権利を失うことはありません。また、開封してしまった遺言書の効力そのものがなくなるわけでもありません。ルール違反により違反者には過料がありますが、それ以上の問題とはならないわけです。
とはいえ、誰かが勝手に一人の時に開けると、他の相続人に書き換えたのではないかという疑念を抱かれる可能性はあります。こうしたことからも、過料を受けないようにというだけでなく、無用なトラブルを避けるという意味からも、検認については確実に実施するようにしましょう。
一方で、誰かが、遺言書を改ざんしたり破り捨ててしまったりという場合には、大きな問題に発展します。
先に開封して遺言書の中身を確認したら、自分に不利な内容だったので、遺産額を増やすように書き換えた、というようなことがこの事例です。また、内容を見て、自分に不利だったために怒って、その場で破いてしまったということもあり得るでしょう。こうした書き換えや破棄の場合、その人は相続人としての権利を失ってしまいます。いくら遺言書でいくらかの財産を遺すと書いてあっても、その行動によってすべての遺産を失ってしまうわけです。他の相続人に知られないように遺言書を隠しておくというのも、同じように相続の権利を失う理由となります。
自宅にある遺言書を見つけたら、必ず他の相続人と一緒に裁判所に行って、検認作業を行いましょう。きちんとした手続きを取らないと、逆に自分に不利になってしまうことも多いので、注意が必要です。