遺言書について

遺言の効力とは?無効な遺言とならないために弁護士のサポートを受けましょう!

  

一口に遺言書と言っても、その作り方によっていくつかの種類があります。

  

その違いを知ると共に、遺言にはどんな効力があるかをチェックしてみましょう。無効な遺言とならないため、いろいろな選択肢を知るために弁護士の助けを得て作成することの重要性も、理解できます。

  

そもそも遺言書にはどんな効力がある?【本文】

遺言書は、故人の家族への想いや願いを記すだけでなく、遺産を遺族でどのように分割するかを指定する文書です。大事な資産の処分の方法を明らかにして残すという重要性が高いものですので、法的に効力を持つ正式な文書とする必要があります。遺言書にはいくつかの種類があり、それぞれに作成方法や効力の違いがありますので、その内容を知るようにしましょう。

  

1つ目として、最も一般的な作成方法として挙げられるのは、自筆証書遺言です。

  

これは、本人が直筆、手書きで遺言の中身を書くというやり方です。このタイプの遺言書には、必ず作成した年月日と本人の氏名、押印が必要となります。自分で書いて、自分の好きなところに保管しておくことができます。自分だけで作成することもでき、特に弁護士などに見てもらう必要もありません。より気軽に作れる文書となりますので、一番多いタイプです。一方で、上記のような条件を満たさないために無効になってしまったり、相続人によって有効ではないと言われてしまったりするリスクが出てくるということも覚えておきましょう。

  

2つ目として、公正証書遺言という種類があります。

  

遺言書の内容は当然、本人が考えるのですが、証人2名立ち会いの下、公証役場で公証人に書式を整えて記載してもらう形で文書を作成し、公証役場に文書を保管してもらいます。遺言書に限らず、公正証書というのは法的な効力が非常に高いので、裁判所に確認を求める必要がなく、公正証書というだけで真正だと見なされます。公正証書遺言にすれば有効性に疑問が付くことはなく、より確実に文書を残せるのがメリットです。また、自筆証書遺言のように、どこに遺言書を保管したか分からないという問題も起こらず、スムーズに相続開始できます。一方で、費用がかかり、公証人に作ってもらうなどの手間と時間がかかります。

  

3つ目として、秘密証書遺言というものがあります。

  

これは、上記の2つのやり方の間を取ったようなやり方です。つまり、遺言書自体は自分で作って署名、捺印し、封筒に文書を入れて封をします。その状態で公証役場に持って行き、遺言書として作られたものであるということを証明してもらいます。内容については秘密を保ちますが、遺言書の存在についての証明を公式に行えるのが特徴です。

  

こうして作った遺言書が法的に正しく作られていれば、いくつもの種類の効力を持ちます。

  

誰を相続人から排除するかを決めることができます。本人に対してひどい虐待をしていたとか、極度の非行を繰り返していたなどの理由で、その人に相続させたくない場合に、遺言書でその旨を明示して相続権を失くすことが可能です。

  

遺産を誰にいくら分割するかの指定をすることもでき、効力も持ちます。これが遺言書の一般的な役割と言えるでしょう。逆に、自分では明確に決めずに、誰かを指定して、第三者に委託して遺産分割の方法を決めてもらうことも可能です。通常、遺産は近親者に分与されますが、遺言書で第三者に遺贈することもでき、法的に有効です。たとえば、ユニセフのような慈善団体に寄付、近くの子ども食堂に寄付するなどもでき、お世話になった人や団体や愛人やその子どもなどに、遺贈するパターンです。

  

遺産に関すること以外にも効力を持ちます。たとえば、残された子どもが未成年で、親権者となる人がいなくなってしまう場合には、後見人として特定の人を指名することが可能です。これにより、その子どもが相続することになる資産についての管理を後見人に委任するということにもなります。同じように、いわゆる内縁の妻との間に子どもがいて認知されていない場合、遺言書の中で認知する旨を示すことが可能です。こうすることで、その子どもも相続人の一人として加えることができます。

  

遺言執行者の指定もできます。遺言の指示に従って、不動産の名義変更をしたり銀行口座から金銭を移したりする場合、その実際の処理をする人を決めるわけです。こうした事務作業を第三者に指定して、正しく相続が実行されるようにするのは、相続人の作業をなくしてあげることができますので、賢い方法と言えるでしょう。

  

遺言が無効になるのはどんなとき?相続弁護士が判例から解説します。

今まで見てきたように、遺言にはいくつものタイプの効力があります。しかし、遺言書に書かれているから、すべての内容が法的に有効かというと、場合によってはそうは言えないこともあります。遺言書そのもの、もしくはその内容が無効とされてしまう場合もあるのです。

  

特に、自筆証書遺言だと、法的文書としての条件をクリアできないために無効となることもあります。たとえば、このタイプは必ず本人が自筆で作らないといけませんが、パソコンで印刷しているケースが見られます。また、印鑑が押されていないとか、日付が書かれていないということもあります。こうしたケースでは、法的な文書としては無効となってしまいます。

  

そして、代筆だと思われる場合にも、自筆証書遺言は無効になる可能性があります。名称からも分かるように、この種の遺言書は本人の直筆でないといけないからです。しかし、文書を見ただけでは、他の人が書いたかどうか確定できないものです。そのため、無効だと判断するためには、筆跡鑑定などの証拠を出す必要が生じる可能性があります。

  

この点、公正証書遺言では、こうした文書自体が無効とされることはほぼありません。もちろん、無効となるケースもあります。たとえば、証人として不適格な人が証人になっていたとか、証人がいないところで遺言書が作られたといったケースです。しかし、この道のプロである公証人がしっかりと手続きを見守って正しく遺言書を作りますので、間違いが生じることはほとんどありませんので、後で無効になることはまずない(認知症が後でわかったような場合は例外です。)といえます。公正証書遺言であれば、少なくとも文書としての有効性を疑う必要はほとんど、ないでしょう。

  

こうした文書自体の不備によって無効になるケースもありますが、その内容で無効となることもあります。たとえば、遺言書に記載されている遺産の分割の仕方が不公平で、そのままでは実行できないという場合が挙げられます。ある程度その遺言書の中身に沿って分割をするものの、相続人同士で話し合って、より公平な形で分割内容を決め直すわけです。

  

特に、遺留分が侵害されている場合には、こうした事例が起こりがちです。実際に、遺言書に特定の分割方法が指定されているとしても、遺留分が侵害されている場合には、遺留分の確保の方が優先されるという判例があります。

  

たとえば、内縁の妻とか愛人に遺産のほとんどを遺贈するという内容の遺言があったとします。法的文書としては正しい方法で作られているので問題はないのですが、近親者がその内容では問題だと感じる可能性が高いです。こうした場合、配偶者や子どもたちには、法的に一定の割合で相続財産を受け取れることが保証されています。いろいろなパターンがあるのですが、多くの場合、その内縁の妻・愛人に遺贈できる分は遺産総額の2分の1までです。残りの2分の1は遺言書に指定されていなくても、配偶者と子どもで分割することになります。

  

このように、遺言書は正しく作成すると共に、その内容もバランスの取れたものとすることが大事です。問題を起こさずスムーズに相続できるような遺言書を作るためには、やはり弁護士のサポートを得るのが一番です。せっかく遺言書を作っても、無効だと言われてしまっては意味がありませんので、法律のプロの助けを得て、有効なものを作りましょう。