裁判手続・紛争解決手続

差押をされてしまった!?強制執行を止めるには?

はじめに

法人が債権を差し押さえられたり、個人が給料を差し押さえられると、取引先・勤務先などからの信頼を損なったり、ご迷惑をかけ、かつ銀行から融資が受けられなくなるなど、多大な損害を被ってしまいます。

*強制執行とは?

債務者が判決・家事審判などで確定した義務を履行しなかった場合に、債権者が裁判所の助けを借りて、債務者の財産(不動産・預金・債権など)を差し押さえて、債権を回収しようとする手続きのことです。国家が強制的に、債務者の意思に反して、財産を差し押さえることで、債権者に対して満足を得させることを目的としています

そのようなことから、強制執行が行われそうな場合には、一刻も早く停止させる必要があります。ここでは、強制執行の停止させる方法についてみていきましょう。

1. どうすれば、強制執行を停止することができるでしょうか?

強制執行を停止するためには、相手が何を債務名義(債権の存在と範囲を公的機関が作成した文書のことで、これにより強制執行が可能となります)として強制執行しようとしているのかを考えなければなりません。債務名義の種類によって、申立先の裁判所や手続きが変わります。

1-1確定判決や仮執行宣言付判決(確定前の判決に基づいて強制執行できる判決)を債務名義として強制執行の手続きをする場合

裁判所に「異議申立(控訴の申立)」と「強制執行停止の申立」は同時に行い、これらの申立てが受理されたときに、裁判所からの命令により申立てをした裁判所を管轄する法務局に「担保金の供託の申立」を行います。「控訴の申立」は、まず、判決を出した裁判所に行います。ただ、訴訟記録がすでに高裁に送られている場合には、上級裁判所に抗告申立書を申請しなくてはなりません。

※執行文とは?

債務名義に強制執行の効力をもたせるためには、執行文の付与が必要です(ただし、少額勝訴判決や仮執行宣言付支払督促の場合は不要)。

ですから、執行文が付与される前に強制執行停止の申立てをすることが大切です。

1-2. 公正調書や調停調書を債務名義として強制執行の手続きをする場合

執行裁判所(強制執行の手続きを行う裁判所)に「異議申立」と「強制執行停止の申立」を同時に行います。異議申立書を申請しますが、これは、裁判所から送付されるか、裁判所の窓口に取り寄せてもらいます。これらの申立てが受理されたときに、裁判所からの命令により申立てをした裁判所を管轄する法務局に「担保金の供託の申立」を行います。

1-3. 仮執行宣言付支払督促を債務名義として強制執行の手続きをする場合

簡易裁判所に「督促異議申立」(民事訴訟法第404条2項)と「強制執行停止の申立」を同時に行います。相手側が督促の申立てをすると、裁判所から異議申立書が送付されますので、書面に必要事項を記載の上簡易裁判所に送り返します。期限は2週間です。そうすることで、通常の訴訟手続で争うことができます。2週間が経過すると、支払督促は確定し、強制執行されるおそれがありますが、この場合でも、「請求異議の訴え」(民事執行法第35条1項)を提起し、同時に「強制執行停止の申立」をする方法もあります。これらの申立てが受理されたときに、裁判所からの命令により申立てを債務名義として強制執行の手続きをした裁判所を管轄する法務局に「担保金の供託の申立」を行います。

1-4. 少額訴訟の勝訴判決を債務名義として強制執行の手続きをする場合

簡易裁判所に「異議申立」(民事訴訟法第378条1項)と「強制執行停止の申立」を同時に行います。判決書の送達を受けた日から2週間以内です。口頭弁論の終結後、直ちに判決の言い渡しを受けた場合は、そのときに異議申立てをすることも可能です(民事訴訟法第378条1項但書)。異議申立ては書面で行わなければなりません。適法な異議申立てがあると、判決の全てにおいて確定が遮断され、少額訴訟の口頭弁論前の状態に戻り、通常の訴訟手続きによる審理や裁判が行われます(民事訴訟法第379条1項)。

金銭債権に対しては、簡易的で迅速に行える少額訴訟債権執行も選択できます (民事執行法第167条の2)。裁判所書記官が行う執行処分に対して、執行裁判所(裁判所書記官が所属する簡易裁判所)に「執行異議の申立」をすることができます(民事執行法第167条の4第2項)。裁判所書記官の処分により不利益を受けた者は、処分の告知を受けた日(初日不算入)から、1週間以内に申立てなければなりません(民事執行法第167条の5第3項)。仮に、「執行異議の申立」を却下された場合には、「執行抗告」をすることができます(民事執行法第167条の5第7項)。ただし、1週間以内に抗告状を裁判所に提出しなければなりません。執行抗告には執行停止の効力はありません。執行を停止するには、別途、執行停止を命ずる決定が必要です。裁判所は、執行抗告についての裁判の効力が生ずるまでの間、担保を立てさせて、もしくは立てさせないで、執行の停止もしくは執行手続の全部もしくは一部の停止を命じ、また担保を立てさせて、これらの続行を命ずることができます(民事執行法第10条6項)。

2. 不当な強制執行への不服申立て

2-1. 請求異議の訴え(民事執行法第35条)

弁済等が行われ、債務が消滅したにもかかわらず強制執行の手続きが継続している場合には、「請求異議の訴え」を申立てることができます。ただ、申立てたからといって、強制執行は直ちに停止するわけではありません。停止するためには、強制執行停止の申立てをし、裁判所に停止決定命令を出してもらわなければなりません。

2-2. 第三者異議の訴え(民事執行法第38条)

強制執行されたものが債務者のものではなく、第三者のものであった場合には、「第三者異議の訴え」を申立てることができます。ただ、申立てたからといって、強制執行は直ちに停止するわけではありません。停止するためには、強制執行停止の申立てをし、裁判所に停止決定命令を出してもらわなければなりません。

まとめ

強制執行の停止は、債務名義がどのようなものであるか見極める必要があります。また、それぞれの申立てだけでは直ちに停止しないので、強制執行停止の申立てを別途しなければなりません。手続きは適法でありながら、不当な強制執行に対しては、「請求異議の訴え」や「第三者異議の訴え」が有効です。専門的弁護士の助けを借りて、執行を停止する必要があります。

弁護士 松野 絵里子

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