不動産登記

不動産登記とは?

不動産を売り買いするとき、「不動産登記」をすることで、所有者になったことを明らかにしていきますが、一般的には不動産登記にかかわる機会はなく、どういう仕組みなのか正確に知っている人は少ないでしょう。

ここでは、不動産登記について、登記簿に記載されていることや読み方や法的意味をご案内します。不動産に詳しい弁護士松野絵里子が説明します。

1. 不動産登記とは? 登記する内容や目的は?

不動産売買や相続時によく耳にする「不動産登記」という言葉。まずは、“基本のき”から理解を深めていきましょう。

2. 登記とは?

登記(とうき)は行政手続きの仕組みの一種で、土地や建物ごとの所在・面積・所有者・担保の有無(抵当権)等の権利関係を公示したものです。権利義務を公に示すことにより、権利を法的に主張することができます。不動産登記のほか、商業登記や船舶登記、成年後見登記など、さまざまな種類があります。

<出典:法務省>

3. 不動産とは?

不動産は、民法(第86条第1項)で定義されるとおり、土地や土地に定着する建物・橋・石垣といった、動かすことのできない財産を指す言葉です。なお、不動産以外の現金や商品などの資産を動産といいます。不動産は動産よりも価値が大きいことが多く、権利関係も複雑な場合が多いため、不動産登記や契約書の締結なども、慎重に進めなければなりません。

そもそも「不動産登記」とは?

登記とは、権利関係などを公に明らかにするために設けられた制度のことで、商業登記や法人登記、船舶登記などさまざまな種類があります。「不動産登記」も登記の一つで、入手した土地や建物が誰のものなのかをはっきりさせるために行われています。

不動産登記を行うと、法務局が管理する公の帳簿に「どこにある、どのような不動産(土地・建物)なのか」「所有者は誰なのか」「どの金融機関から、いくらお金を借りているのか」といった情報が記録されます。こうした情報は一般に公開されていて、手数料を支払えば誰でも閲覧ができ、登記内容が記載された登記簿謄本(登記事項証明書)の交付を受けることもできます。

4. 登記簿謄本(登記事項証明書)に記載されている内容・権利の種類は?

登記簿謄本(登記事項証明書)は一つの不動産(1筆の土地とか一つの建物)ごとに一つ作成され、「表題部」と「権利部(甲区)」、「権利部(乙区)」の三つに分かれています。


※土地登記簿では、土地の個数を表す単位。1筆(いっぴつ)、2筆(にひつ)と数えます。

5. 登記簿謄本の見方

5-1. どこにどのような不動産があるのか知りたい場合には「表題部」を見よう

表題部に記載されているのは土地・建物に関する情報で、表題部を見ればどこにどのような不動産があるのかがわかるようになっています。

表題部に記載される情報
土地…所在、地番、地目(宅地、畑、雑種地など)、地積(面積)、登記の日付など
建物…所在、家屋番号、建物の種類(居宅、店舗、事務所など)、構造(木造、鉄骨造など)、床面積、登記の日付など

5-2. 不動産の所有者を知りたい場合には「権利部(甲区)」を見よう

権利部(甲区)に記載されているのは所有権に関する情報で、所有者の住所や氏名、不動産を取得した日付や原因(売買、相続など)なども明記されています。

権利部(甲区)を見れば、「Aさんが10年前にBさんから相続した」など、不動産を手に入れるまでの経緯がある程度わかります。また、ローンの支払いが滞るなどして差押えを受けた場合、その内容も権利部(甲区)に記載されます。他人に差押えられている不動産が流通することはそれほど多くありませんが、不動産の購入を検討する際には、念のためチェックしておくといいでしょう。

5-3. その他の権利を確認する場合には「権利部(乙区)」を見よう

権利部(乙区)に記載されているのは、抵当権や地上権、地役権など所有権以外の権利に関する情報です。権利部(乙区)に何らかの権利が登記されていると、不動産を購入しても利用が制限されてしまうことがあります。不動産を購入する前に、どんな権利が登記されているのか確認しておきましょう。

6. 登記簿謄本(登記事項証明書)はオンラインでも取得・閲覧ができる!

登記簿謄本(登記事項証明書)を取得しようと思ったら、以前はその不動産を管轄している登記所(法務局や法務局の支局など)へ出向くか、郵送でやりとりをするしかありませんでした。しかし、今では登記情報がオンライン化されており、法務局の「登記・供託オンライン申請システム」の「かんたん証明書請求」からインターネットで交付の請求をして、最寄りの登記所の窓口か郵送で受け取ることができるようになりました。

また、登記簿謄本の内容を確認するだけなら、「登記情報提供サービス」を利用してインターネットで閲覧できます。公的な証明書には使えませんが、PDFでダウンロードも可能なのでとても便利です。

土地・建物の登記簿謄本(登記事項証明書)の取得費用

区分手数料額
登記事項証明書(謄抄本)
書面請求600円
オンライン請求・送付500円
オンライン請求・窓口交付480円

※1通の枚数が50枚を超える場合には、超える枚数50枚までごとに100円が加算されます

土地・建物の登記簿謄本(登記事項証明書)の閲覧費用(登記情報提供サービスを利用)

提供される情報の種類手数料額
全部事項(不動産・商業法人)情報331円(消費税・地方消費税含む)
所有者事項情報141円(消費税・地方消費税含む)

7. 不動産登記が必要なのはどんなとき?

不動産登記は不動産を取得(購入、相続、新築など)したときだけでなく、登記内容に変更が生じた場合にもしなければなりません。

1. 不動産を取得したとき

不動産を購入、相続するなどして取得した場合には、所有権が自分に移ったことを示すために「所有権の移転登記」をします。また、建物を新築した場合や、まだ登記されていない建物を購入した場合には、表題部を新しくつくる「建物の表題登記」と、権利部の甲区欄を新しくつくる(所有権を初めて登記する)「所有権の保存登記」をします。

2. 住所変更があったときや、結婚などで姓が変わったとき

転勤などで住所変更があったときや、結婚などで姓が変わったときには、登記名義人の「住所・氏名の変更登記」をします。

3. 不動産の所有者が亡くなったときや、不動産を相続したとき

不動産の所有者が亡くなって相続が発生したときには、不動産を相続した人が「所有権の移転登記」をします。

4. 住宅ローンを完済したとき

住宅ローンを払い終わっても、設定されている抵当権を金融機関が抹消してくれるわけではありません。住宅ローンを完済すると、金融機関から住宅ローンの支払いが終わったことを証明する書類が送られてくるため、受け取った書類を使って、不動産に設定されている抵当権を抹消する「抵当権の抹消登記」をしましょう。なお、不動産の購入時に抵当権を設定するのは、不動産を購入した本人ではなく融資をした金融機関です。

5. 建物を取り壊したとき

建物を取り壊したときには「建物の滅失登記」をします。

8. 不動産登記の流れ、期限、いつまでに登記しなければならないの?

8-1. 不動産登記の流れ

不動産登記は司法書士にお願いするのが一般的です。司法書士から言われた書類を用意し、必要事項を記入して手渡せば、ほとんどの手続きが終了します。あとは、登記完了の連絡を待つだけですが、ここでは司法書士がどこで・どのような手続きをしているのか、大まかな流れを紹介したいと思います。

なお、新築の一戸建てを建築・購入した場合には、新たな登記簿を作る「建物の表題登記」が行われます。表題登記は建物図面が必要で、土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。

8-2. 登記の大まかな流れ

1)申請書と必要書類を作成・準備して、不動産がある場所を管轄する法務局に提出する
登記に必要な申請書と書類を準備して、不動産がある場所を管轄する法務局に提出します。不動産の登記には、売買や譲渡、相続などで所有権が移動する際に行う「所有権の移転登記」や、新築の建物を建築・購入した際に行う「建物の表題登記」や「所有権の保存登記」、建物を取り壊した際に行う「建物の滅失登記」などさまざまな種類があり、必要になる書類はそれぞれ違います。

2)登記官が申請内容を確認・審査する

登記の申請書が提出されると、法務局で登記の事務を取り扱っている登記官が内容を確認し、申請した内容に間違いがないか、法律上問題ないか、必要な書類がそろっているのかなどを審査し、必要に応じて現地調査が行われます。

3)登記簿に新しい情報が登記される

登記官による審査の結果、申請内容に問題がなければ登記簿に新しい情報が登記されます。

4)登記識別情報通知書や登記完了証が発行される

売買や譲渡、相続などで、登記簿に新たな所有者の情報が登記されると、登記識別情報通知書が発行されます。登記識別情報通知書は従来の登記済証(権利証)に代わる、12ケタの英数字の組み合わせで構成されている符号で、登記名義人となった申請人に通知されます。不動産の売却時などに必要で、とても重要な書類になるため大切に保管しておきましょう。

また、申請した登記が完了すると、その旨が記載された登記完了証が発行されます。登記完了証は再発行されませんが、登記識別情報通知書のような重要な書類ではありませんので、紛失・処分しても問題ありません

記事監修者 弁護士 松野 絵里子
記事監修者 弁護士 松野 絵里子

記事監修者: 弁護士 松野 絵里子

プロフィールはこちら >>

◆ 海外案件の経験が豊富
━━━━━━━━━━━━
国内最大手での経験を生かし、得意な語学力で複雑な家事事件から英文契約の確認などの企業法務まで経験豊富です。

◆身近で高品質な法律事務所
━━━━━━━━━━━━
高水準の品質の法律サービスを、リーズナブルに提供いたします。

◆依頼者の立場にたち共に最適な解決の道
━━━━━━━━━━━━
依頼者の立場にたち、共に最適な解決を目指して日々研鑽しております。

Home
Mail
相談予約
Search