基本的に配偶者の同意なく別居することは「同居義務違反」として民法に触れる可能性があります。しかし、モラハラやDVなど特別な事情があり一時的に避難する場合はこの限りではありません。同居義務違反といわれないように、話し合ってから別居したり、証拠や記録を集めておく必要があります。
晴れて結婚できた相手であっても、もちろん他人同士なので暮らしているうちに嫌なところ、我慢できないところが出てくるのは当然のことです。些細なことで喧嘩や言い合いになるのであればまだ解決できるかもしれませんがそれでもストレスになります。暴力、モラハラなど大きな問題に発展すれば、その家に一緒に住み続けるのが難しくなりますね。
しかし、夫婦である以上離婚が決まっていないのに勝手に別居をすることは「同居義務違反」に触れる可能性があるので注意が必要です。「自分の人生なんだから好きにしても良いのではないか?」と思われるかもしれませんが、実は勝手な別居が大きな問題へと発展することもあります。別居をお考えの方は、どのような理由、事情であれば問題なく別居が可能なのか知っておくと良いでしょう。
Contents
1. 同居義務とは?違反するとどうなる?
1-1. 同居義務の定義
そもそも同居といえば、夫婦、もしくは友人、家族などが一緒に一つの屋根の下で暮らすことを言います。同じ家の中に住んでいれば「同居」となりますので、シェアハウスなどでも同居という扱いになります。同居を行う人間同士の間で取り交わされるのが同居義務というものなのですが、これが夫婦間にも適用されるということです。結婚時にわざわざ「同居義務を結びます」というような契約がなかったため、このような契約が存在していること、そして有効であること自体知らないという方も多いでしょう。
しかし、結婚し同居した時点でこの同居義務が発生し、「同居した上でお互いが支え合い、助け合って生活する」という決まりとなっているのです。助け合いの具体的な意味としては、夫婦二人ともが最低限の生活を送れるよう、金銭的な援助を行うことや、適切な関係を結び続けることなどが挙げられます。言葉にするとやや難しいですが、いわゆる「不自由なく生活できるように努力すること」が求められるということになります。同居義務とは民法に規定されています。
第752条【同居、協力及び扶助の義務】
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
この条文から、正当な理由なく夫婦の一方が同居義務を守らない場合は、他方は裁判所に同居を求めることはできますが、同居の審判または判決があっても、直接強制も間接強制も許されないとされています。同居は夫婦共同生活の本質的要素であるのですが夫婦の同居は性質上、自発的意思に基づくものでなければ、意味がないからと考えれています。しかし、同居・協力・扶助義務を正当な理由なく拒否すると、悪意の遺棄に該当し、離婚原因となると解されています(民法第770条1項2号)。
条文上明文はないが、婚姻の本質から、夫婦は相互に貞操義務を負う。夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害したものとして不法行為責任を負う(最判昭54.3.30)。
1-2. 同居義務違反の主な事例
夫婦間では必然的に同居義務が生まれるとお伝えしましたが、同居義務違反とみなされてしまう事象は2つあります。
① まずは同居を行うことが義務化されているから、「配偶者の同意なく勝手に別居を始めた」というケースです。よく見られるケースとしては、配偶者に対して感情が爆発してしまったが故に子供を連れて新居を見つけそこで勝手に生活をするというものです。
配偶者の同意なく勝手に家を飛び出し新たな生活を行うということになりますが、一見家に残された方が悪いように感じられます。しかし、同居義務というものがあるため、同居を勝手に放棄したことや、お互いに助け合うという取り決めを破ったことが問題となる可能性があります。また、子が未成年の場合、親権の共同行使の原則に反するという問題があり、これは深刻な問題になります。
一緒に暮らす気力がなくなったり、配偶者の顔も見るのが嫌になったという場合には勝手に別居を始めるのではなく、離婚に向けて協議をしたり、具体的に動いていくことが好ましいでしょう。
② 2つ目のケースは「別居先で不倫相手と同居していた」というものです。ドラマのような展開ですが、別居をしているうちに別の人に心を通わせてしまったというケースは意外と珍しくありません。こういったケースは同居義務違反だけではなく、不貞行為ともみなされるため離婚ができないとか、高額な慰謝料が発生する可能性があります。
1-3. 同居義務違反に対するペナルティ
同居義務違反となる事象は2つほどありますが、もし違反をするとどのようなペナルティがあるのでしょうか。基本的に、同居義務違反となれば、家に残された方が離婚を切り出す事がありえます。勝手に出ていくような相手とは一緒に暮らせないというのが人間の一般的な心理でしょう。しかし、勝手に出ていってしまったとしても、まだ相手に対して気持ちが残っている場合や、子供がいて親権について話がまとまらないといった場合もあります。
もし離婚の話がスムーズに進まないようであれば、弁護士に間に入ってもらい、離婚協議・調停や離婚訴訟を行うといった流れになります。基本的に同居義務違反は「悪意」とみなされるため、十分な離婚事由に該当し、別居が原因で離婚に至る事は決して珍しくありません。離婚を突きつけられるだけであればまだ良いですが、実は同居義務違反は不法行為に該当するため慰謝料請求の対象となる場合もありえます。
勝手に別居しただけであれば、それなりの理由があれば慰謝料請求までいかないことが多いのですが、別居先で愛人と暮らしていたとなると完全な不貞行為となり、高額な慰謝料を請求される可能性がでてきます。
2. 同居義務違反とならないケースは?
2-1. 相手が同居に同意していればOK
別居してしまったら必ず同居義務違反になるのかというと実はそういうわけではありません。違反にならないケースはありますので、これらに当てはまる場合は離婚請求や慰謝料請求を行われる事象とはならないのです。
もし相手が請求してきた場合は「正当な理由での別居」として跳ね返す事が可能です。相手が別居に実質的には同意していた場合です。そもそも同居していた人々の間で別居することを了承していたらまず違反にはあたりません。夫婦の場合、子供の学校や夫、妻の仕事などで相手が単身赴任になることはよくありますが、そういったケースはもちろん夫婦間で話し合いができていることが多いため、違反には当たりません。
2-2. 短期間の別居であればOK
相手に対して少し頭に血が上ってしまい、衝動的に家を飛び出してしまうということは案外少なくないでしょう。例えば、夫婦喧嘩で妻が「探さないでください」と置き手紙をして、実は実家で生活していたというパターンはよくある話です。このように一時的に自宅を離れて別の場所で生活をすることは違反には当たりません。しかし、別居が長く続いてしまったり、全く話し合いに応じないとなると問題です。いくら片方が折れて話し合いをしようと持ちかけても、全く応じないうえ別居状態が続くとなると同居義務違反に当たるでしょう。
そうなれば、相手としては、不法行為による慰謝料請求などを行うことが可能となってきます。夫婦間で喧嘩をして、頭を冷やす程度の別居であれば何も問題はないですが、別居が長引けば長引くほど大きな問題となるでしょう。
2-3. DVやモラハラから逃れる為であればOK(未成年の子がいる場合には共同親権に注意!)
DVやモラハラなどその状態のまま夫婦関係を続けていくのが困難という場合は無断で別居を行ってもそれは、同居すると人格権が侵害されるという場合なので、問題ありません。
その状態のまま共に生活を続けていく事で日常生活が送れない、心身ともに大きな負担が伴うといった問題が出てくる場合は、別居をすることで「避難」が可能です。もちろん同意のもと別居することが一番望ましいですが、そのような行為を行う相手と冷静に話し合い、別居の了承をもらう事は簡単ではないでしょう。
なので、避難するために無断で相手がいない間に家を抜け出し、新居で生活を始めるという人は案外多いです。緊急事態としてシェルターに入居することも可能なので、まずは弁護士や専門機関に相談して具体的な行動に移すのがよいでしょう。
また、DVやモラハラは離婚事由にも該当しますので相手方に離婚請求、ひどい事案なら慰謝料請求を行うことも可能です。もし請求を行うつもりであれば、日頃からそれらを受けていた証拠として逐一記録を取っておく事をおすすめします。どんなに些細な事でも証拠になり得るので、細かな記録を積み重ねて大きな証拠に結びつけましょう。どんな理由であれ、基本的には相手に無断で別居を始める事は望ましくありませんし、離婚や慰謝料請求の原因となります。しかし、DVやモラハラに関しては基本的に受けている側が被害者であるため、通常の同居義務ルールには該当しません。
しかし、未成年の子がいる場合には注意が必要です。子どもがどこに住むかは父母が共同で決めるというルールがあるからです。一方的に判断して、勝手に転校をさせる、住民票を移転してしまうということは、違法な親権行使と判断されることになりえます。それには正当な理由が必要ですが、緊急避難であったというような状況でなければなりません。未成年の子がいる場合、親権争いとなるような場合には、弁護士をいれて別居後の生活について合意形成をするような努力をまずするべきでしょう。その後の親権判断にマイナスにもなりますから、具体的には親権問題に詳しい弁護士に相談することが不可欠です。






