離婚

子どもの親権争い。離婚の親権獲得における弁護士の役割

両親が離婚する際、子が小さいと争点となるのが「どちらが子供の親権を得るか」です。親権の内情や父母それぞれが親権を得る場合のポイントなどを理解し、円満な話し合いでの解決が望めない場合は、早い段階から弁護士の依頼も考えてみる必要があります。

1. 離婚後の親権と子ども

子供の居る夫婦が離婚してしまう際に問題になるのが、別れてしまう二人のうち、どちらが子供を引き取るかという点です。一般的に「子を引き取る側が親権を持つ、親権者となる」という認識がありますが、その「親権」とは具体的にどういった権利なのでしょうか?

定義上、親権とは未成年の子供を独立した社会人として養育、監護(監督保護)する「身上監護権」、子供の財産を管理することを認められている「財産管理権」という権利義務を指しています。夫婦である間は、この親権は両親が共同で保持している事になります。

現在では世界的に、親権を権利ではなく子に対する責任としてとらえるようになっています。日本では親権は戦前からある言葉をそのまま使っているのですが、海外では1980年代以降、いろいろな改正がされており、「親責任」というような用語を使っている先進国が多くなっています。

日本の民法でも親権は子の利益のために行使しなければならないとされており責任の性質は強くなっています。つまり権利と言ってもあくまでも子の利益のために行使するものであるのですが、その権利は、異なる複合的な権利です。

権利については、一つ一つを合意によって、夫婦がそれぞれを個別に持つことも可能ではあります(医療措置決定は父、学校選択は母など)が、そういうことはほとんどされずに、多くの場合、ひとりの親が親権の全てを有することとなっています。もっとも、今後の改正で共同親権が離婚後も可能となるため、多様な合意による親権の在り方が見られてくる可能性が出ております。

さて、子の成長過程で必要な手続きを行う際に、父母で権利をいろいろ分けたり、協議が必要であるとすると、仲の悪い別れた父母が連絡を取り合わなければならないケースが起きてしまうということになりますので、連絡が取れなくなったり、自分のペースで行えなかったりという可能性があります。

よって、親権については今後の子供の成長にも鑑みて、合意形成をする必要があります。

現行法の法律では、離婚によって子がいる夫婦が別れる場合には、父母のどちらかが親権者とならなければ離婚できないものとされています。

例外のケースとして、「未成年の子供がいない」あるいは未成年であってもすでに子が結婚している場合は、父母のどちらかに親権者を決めることなく離婚が可能です。

2. 身上監護権と財産管理権とは何か?

2-1 身上監護権

身上監護権とは、未成年の子どもを監護、教育する権利です。

この権利は、子どもの心身を育成し、適切な生活を送らせるための、親としてのいくつかの義務でもあり権利のみではありません。また、子が自身では行えない法的な手続きを親が代理として行うことも、「身分行為の代理権」として「身上監護権」になります。

「監護・教育権」の他には、子どもが居住する場所を指定できる「居所指定権」、未成年の子どもに労働の許可・制限を出せる「職業許可権」があります。

簡単に言うと、一緒に住んで子どもの躾とかい教育をする権利ですね。

2-2 財産管理権

身上監護権は、子の成長する環境や教育に関する権利・義務ですが、こちらは子どもの財産管理、財産に関する法的手続きの代理等を行える権利です。多くの場合、子ども自身は財産を収入によって作れませんが、祖父母などからの贈与や相続によって得た財産、もしくは子ども自身へ他の親から支払われている養育費を、親権者が管理する権利です。

わかりやすく言うなら、お金について、子どもの代わりに管理する権利とでも言ってもよいと思います。

3. 離婚をした場合の親権はどうなるのか?

3-1 父親が親権を持つケースとはどんなとき?

離婚時には父母で親権を争わないことも多々あります。特に、母親が父と子の関係を尊重できる場合には、母が親権者となり父が子との交流をして養育費を払うという合意をします。

しかし、父親・母親どちらともが親権を主張して対立することもあります。父親と母親で比較した場合、親権争いになった際には、裁判所の判断では母親が親権を得るケースが多く、その理由は、一般的に「その日までの子育てに最も携わってきた親」が選ばれるからです。

もっとも、父母がフルタイムで働いているといずれが主として子育てをしてきたのかは明確ではありませんので、裁判所の判断も難しくなってまいります。しかし、父が働き、母はパートタイマーであったというような場合には、母親側によほどの落ち度がなければ、母親が親権を得ることが多くなります。

裁判所での焦点はあくまで「子育てにどのように関わってきたか」でありますが、子どもの年齢によっては子の意向をかなり重視しますので、仕事と折り合いをつけながらできる限り日々の子育てに携わってきたり、主夫として子育てをしてきたりしていた父親ならば、親権を得られる可能性は通常よりも高まり、子が父と住むことを希望したらなおさらそうなってきます。

そもそも親権紛争をするべきなのか・・・・これを考えてみてもよいでしょう。争えば、自分がまける可能性もありますしそもそも、父母がそれぞれ子にとっては大事なのであるから、争わなくてもよいのでは…とも思えますよね。

今般、やっと、父母で親権者を一人としなくてよいように法改正が予定されていますので、家庭裁判所の調停等を利用して、離婚後も父母で子の養育を担っていくというような合意も可能ですので、裁判所判断を仰ぐよりは、現実に子どもにとって最も良い養育方法を合意できるのがベストでしょう。

どうしても、裁判所判断が必要である場合には、父が、例えば会社員である場合の監督養育能力のアピール方法としては、「祖父母やシッターの手を借り、子育てサポートがある」「自身がフレックスに働ける部署に異動する」など、養育の時間が十分に取れること、資金力等による養育サポートの利用によって、子どもが適切に養育される状況を作れるかどうか、面会交流によって母親との関係をきちんと構築できるかがポイントになります。

3-2 母親が親権を持つケースとは?

子どもがまだ乳幼児であるケースでは、親権争いでは母親がかなり今でも有利でしょう。これは「母性優先の原則」、幼い子は子の福祉の観点において、父親より母親と暮らした方が望ましい、という原則がまだ家庭裁判所の考えとしてあるからです。

しかし、その原則も、父親の子育て参加が根付きつつある昨今においては絶対ではありません。この原則によらず、直近の時期に「子供の面倒を見ていたのがどちらか」に焦点があてられるようになってきています。その点で、母親でも子をおいて家を出てしまった場合には、その状況を放置すると不利になりますので、早めの司法手続きが重要になります。

特に、子が新たな場所になじんでしまうと今更、住む場所を変えるのは、子にとって負担が大きいという判断がありえるのです。

離婚前に別居をしていた場合、例えば母親が出ていく際に子どもを連れ出していると、親権は母親が取れることが多く、逆に母親が一人で出て行った際には親権が取りにくいことが一般的ですが、それは、子を連れ去らないと勝てないという「連れ去り勝ち」ということよりも、判断をする直近の時期の子の養育を誰がしていたのかを家庭裁判所が重視すること、成長のための環境変化を子のためにマイナス要因とする傾向がある(環境変化は子の負担であると考える傾向がある)ことによります。

育児に長く携わってきた母親が親権を取れないケースでは、母親側の原因があることも多く、不倫により今はその相手男性と住んでいるとか、子への虐待や育児放棄をしていたり、精神疾患等で育児ができない状況などがあります。

また、ある程度子が大きくて、子ども自身が父親と暮らすことを望んでいるケースでは、母親が親権を得ることは難しくなります。

母親が親権を取りたいという意向がある場合でも、父母で今後の子の育て方として中長期的にどのような育て方がよいのか、冷静に話し合えることがベストです。上記の通り、父母で親権者を一人としなくてよいように法改正が予定されていますので、家庭裁判所の調停等を利用して、離婚後も父母で子の養育を分担できないのか、法改正の後は親権を共同にすることを前提として、冷静に話し合いができないか、探ってみることが大切であろうと思われます。

できるなら、子の奪い合いよりも、子をどうやって父母の互いのパワーを使って育てるのか、未来志向になりたいものです。

裁判所判断を仰ぐには時間もかかりますので、子にストレスを与えないように、現実に子どもにとって最も良い養育方法を考えて、父母で合意できるのがベストであり、そういったことに理解のある弁護士選びが重要でしょう。

子どもは親が争うのこそ、悲しいと思っているのですから・・・・。

3-3 それ以外のケース

父母がどちらも親権を望まない場合には、離婚そのものが不成立となります。

もっとも、親が親権を持つにふさわしくない状況であると福祉の見地から判断されると、家庭裁判所によって「未成年後見人」が任命されます。これまで子どもを育ててきた祖父母とか叔父叔母といった親族が選ばれることがあります。そういった人が見つからない場合は児童養護施設といった第三者が選ばれる事もあります。

また、子ども自身が親権者を選ぶというまれな場合もあります。それは「子どもの手続き代理人制度」を使う方法です。

調停に参加する子ども自分の意志を、弁護士のサポートによって表明するというものです。子どもの意志を尊重することが適切な場合で、親が能力的に大きな差が無いような場合、この制度によって親権者が決まることもありえます。

今後は、共同親権のもとでどのような監護方法がよいかを決める場合に、「子どもの手続き代理人制度」を使って子どもの本音を聞き出すという方法が用いられるということも可能かと思われます。これは、父母がこの制度を利用することに賛同しないと使えないというのが現実なので、父母が子の意向をきちんと知るために費用負担をする場合に、利用ができるでしょう。

4. 親権を得るには弁護士が必須ですか?

4-1 専門性のある弁護士なら心強いサポートが得られ和解的解決が可能です

父母双方で親権を争う際、争いが続くなら、審判・訴訟になる可能性もあります。話し合いの初期段階から親権に詳しい弁護士に依頼をしておくと、早い段階から話し合いがまとまりやすいでしょう。また、今後の見通しや争点について、アドバイスやサポートが得られます。

特に、離婚における親権問題は、当事者間がヒートアップしてしまう事が多く、第三者のストッパーとしても冷静な弁護士の存在は心強いものとなります。子どもの視点も持った弁護士なら尚更心強いでしょう。父母が冷静に話し合いが行えれば、調停で合意内容を調書にするだけで済むことも多く、手続き中にも子にストレスを与えないことが可能です。

父母として、子どもに何が起きたのか、説明をするにも、弁護士のサポートがあったほうがよいでしょう。また、適宜、心のケアをする専門家にも相談をすることが望ましいです。

4-2 手続きや親権獲得に優位となる書面でのサポート

審判・調停、訴訟になった場合、様々な手続きにおいて、自己が有利になるような主張をするための書面の作成や証拠提出など、様々な事務作業が必要になります。特に、親権争いでは、わからないことばかりでしょうから、個人が自分で対処するのは困難でしょう。

話し合いの初期から弁護士に依頼しておけば、そもそも相手の考えも理解でき、争点を予期しての行動ができますし、最終判断において不利な行動をとらない工夫もできます。必要な書面は作ってもらえますし、提出も弁護士がします。相手との交渉も一切を弁護士がします。法律の専門家である弁護士は、依頼者本人が気づきにくいような親権を得るための長所、突くべき相手の短所を法律上の観点から見つけて主張することもできます。

弁護士は立場上、依頼者の代理人としても動きますが、専門的な弁護士なら子どもの視点も忘れません。

また、緊張や委縮してしまう依頼者であれば、調停期日に同席する弁護士が適宜サポートすることでうまく期日を使うことが出来ます。希望や意見をうまく効率的に伝えることができます。家庭裁判所での調停の場合、本人たちには感情的な対立が避けられない場合でも、代理人である弁護士がそれぞれの立場を理解して冷静に解決策を考えることで、より適切な解決方法が見つかり、迅速な解決になることもあります。

なお、親権紛争は争いその物をなくすことが最善の解決策です。それには、和解的解決をできるような努力をしてくれる弁護士が必要です。また、親権者を誰にするのか、法改正後の共同親権を利用する解決を考えるのか、という点を適切にさばける技能がある弁護士が有用です。さらに、子が親との関係を構築できるように、今後の面会交流ルールを明確にしかつ離婚してからの親子のストレスを最小とするような「合意形成」を迅速にしてくれる経験値のある弁護士がベストでしょう。