遺言書について

遺言書が無効になることもある?弁護士に確認して相続問題をストレス少なく解決する方法

   

遺言書は大事な遺産を分割する方法を亡くなった方が生きているときに、指定するものです。

  

そのためには、法的な条件をクリアする必要があり、判断を間違えるとせっかくの遺言が無効となるケースもあります。確実に結果を出すためにも、弁護士の助けを得て、法律面の問題をクリアしていきましょう。

  

遺言が無効になる理由とは?

遺言書は、遺産の分割などを指定するために重要な文書です。単に本人の意思を示すだけでなく、法的にも有効である必要があります。そのため、遺言書を作成する際にも、相続人が遺言書を確認する時にも、法律に合ったやり方を取っているかどうかを考えることが大事です。

  

遺言書が無効になるケースもありますので、まずはそれを押さえておきましょう。

  

そもそも、遺言書としての文書そのものが法的に有効でないことがあります。たとえば、遺言書に日付や作成者の氏名が記載されていないというパターンです。民法の規定では、日付と氏名を記載することを求めています。遺言書に関わらず、重要な文書では誰がいつ書いたかということがとても重要ですので、必ず確認しましょう。ちなみに、正確に「XX年YY月ZZ日」と記さなくても、「孫のAが20歳を迎えた日」といった形で、日付が特定できる記述があれば問題ないとされています。

  

遺言書に押印がなされていない場合も、法的には無効となります。印鑑は、次第に使われていなくなっており、多くの文書で使わなくても良くなっていますが、しかし、遺言書に関しては押印が民法で規定されていますので、有効性に関わる大きなポイントとなります。ただし、押されたのが実印でないといけないということはなく、いわゆる三文判であっても問題ありません。もちろん、文書としての有効性を高めるためにも、できるだけ実印の方が良いでしょう。

  

もう一つ気を付けたいことは、遺言書は自筆で書く、つまりPC・パソコン・スマホで作ってはいけないということです。「自筆証書遺言」という言い方もあるように、公正証書遺言でない限り、自分で作成する遺言書は直筆、手書きでないといけません。印刷したものや代筆によるものは無効となってしまいます。これは、本文を印刷して、署名を本人が直筆でしているとしても同じく無効です。法的文書も含めて、多くの文書でパソコンなどを使って印刷していますので、ついつい同じ感覚で作ってしまいがちです。面倒だと思うこともあるかもしれませんが、自筆であることに意味がある文書ですので、しっかりと、間違えないようにして直筆で作成しましょう。

  

文書としての有効性以外にも、遺言書が無効だとされる理由があります。たとえば、遺言書がいくつか存在する場合です。その場合は、古いものが無効となり、最新の日付の遺言書が有効となって採用されることになります。

  

他にも、本人が誰かから脅迫されたり、だまされたりした状態で書かされた遺言も無効となります。もちろん、これを証明することができる明らかな証拠がないといけません。よく問題になるのが、本人が認知症になっていた、強度の鬱状態であったというようなときです。診療記録がある場合は、こうした状況をあとで立証する証拠となり得ます。

  

上記のようなパターンが当てはまらず、本人が正しい仕方で遺言書を作成したとしても、それが実質的に無効となることもあります。

  

たとえば、相続人や遺言の執行者全員が、遺言書の内容に合意せず、自分たちで協議して遺産分割の方法を変えるという場合を挙げることができます。厳密には遺言書が無効だというわけではないのですが、その内容をそのまま適用しないという意味で、無効にできてしまうわけです。遺産分割の内容に相続人全体が納得できないとか、明らかにすでにない財産が対象であったり、不当・不公平な分割の指定などがなされている時に、こうしたことが起こり得ます。

  

また、相続人の誰かが遺言書を改ざんしてしまったとか、遺言書を破損したというケースでも無効となり得ます。基本的に、遺言書は見つかったらその場で開けるようなことをせずに、裁判所に持ち込んで検認という手続きを踏まないといけないことになっています。裁判所のチェックの下で開封して確認することで、その遺言書が正しいと認めてもらうという意味合いがあります。これを無視して自分だけで開け、内容が不利だからと書き直したり書き加えたりすることは、欠格事由に当たります。遺言書の中身が気に食わないからと破くなどの行為をした場合も、同じように欠格ということになります。たとえ遺言書の中でその人に遺産分与が指定されているとしても、相続の資格を失うので、事実上遺言が無効となってしまうのです。

  

遺言が無効だと思ったらどうする?相続弁護士が解説します。

上記のようなことが起こって遺言が無効だと思ったら、弁護士に相談してみるのがベストです。というのも、本当にそれで遺言書の有効性が失われているかという判断は、細かな点もあって難しいからです。そのため、法律のプロである弁護士に確認してもらった方が良いのです。これを怠って、素人判断で動いても、無駄な時間を過ごすだけということも起こりがちです。

  

それから、裁判所に調停を申し立てるなど司法を使うことも、重要なステップとなります。特に、一部の人が無効だと主張しているものの、他の相続人が有効だと言っている場合には、裁判所に関わってもらうことで確証ができます。これは遺言無効確認調停もしくは訴訟というもので、遺言書そのものに加えて、無効あるいは有効と言う双方の主張と証拠をみて判断がされます。

  

判決の結果、やはり遺言が無効だということになった場合、相続人同士で協議をして分割内容を決めます。遺言書という文書そのものは有効であるものの、内容を変えたいと相続人が思えば皆さんの協議で遺言に従わないことができることは、すでに説明したところです。

  

不当な遺言という点で、特定の相続人に過剰な遺産分与がなされると遺言されている場合は、遺留分がないかの計算を行ってみるのもよいでしょう。

  

遺留分というのは、法的に配偶者や子どもなどの近親者に、最低限の分与割合を決めている制度です。遺言書ではほとんど遺産をもらえないとなっていても、遺留分に関しては、遺言書の内容を覆して確保できるのが特徴です。これも、一種の遺言を無効にする行為です。遺留分については、法律で明確にどのくらいの割合となるかが決まっていますので、遺産総額を計算した後に、自分がもらえる分を確認します。

  

こうした協議を重ねて、相続人全員が納得できた場合は、分割協議書を作って、全員の署名捺印をします。こうして相続内容を決定したら、実際に遺産を分割して、名義変更などを行います。

  

しかし、時には相続人同士の協議だけでは解決できないこともは大変によくあります。特に、文書としての遺言書は有効であるけれど、遺留分があり、内容に納得できない相続人がいるケースです。遺留分が侵害されている人は、多く遺産を受けた人に対して、遺留分侵害額請求という手続きをすることができます。

  

また、遺言が無効なのに、相続人同士で全く分割方法の合意できなかった場合、家庭裁判所に持ち込んで調停をすることになります。第三者である調停委員が仲介してくれて、もう一度関係者で話し合います。そこで合意に至れば良いのですが、そこでも決まらないとなると、裁判所が決めることになります。裁判所が種々の主張や資料、情報を確認した上で、どのように分割するかを決めて審判を出します。これは、高裁まで争えますが、それで最終決定となりますので、それ以上の協議をすることはできません。

  

このようにして、遺言書の有効性に疑問が生じた場合は、法律上の複雑な点が関係してきます。そもそも有効なのか無効なのかの判断をすること、その後の問題解決方法を考えるなど、考えないといけないことはたくさんあります。

  

当事者同士だけで話し合っても、なかなかまとまらないので時間だけが過ぎてしまいます。そのため、相続に通じた弁護士を雇い、早く、円満に解決できるよう、サポートを求めることは有用でしょう。それは、問題を早く解決して精神的な負担を減らすことにもつながりますので、こうした助けを求めることも検討しましょう。