離婚

離婚した後に親権・監護権は変更できますか?その要件と弁護士依頼のメリット

離婚後の子供の成長において、親権者や監護者が両親どちらかになるかは多大な影響を及ぼします。監護権を持つ者や親権者に問題がある場合は、家庭裁判所から変更を命じられることもあります。現実に変更を求めたい場合には、弁護士に依頼が必要でしょう。

1. 離婚における監護権と親権の違い

まだ小さい子どもがいる夫婦が離婚するうえで問題になるのは、親権・監護権をどちらが持つのかという点です。「監護権」という言葉は馴染みが無いかもしれませんが、簡単に言うと同居親となる親の権利のことです。

ただし、一般的には親権を持つ人物が監護権も持つものとしますが、親権・監護権がそれぞれ独立して存在しているのは、分けておくこともできます。

親権とは、未成年の子供がいる夫妻の離婚において、必ずどちらかに決めなければならないことと現行法ではなっています。

これが決まらない限りは、離婚そのものができません。

親権は「子供を適切に監護・養育する環境を作り、子供の財産や法律上の代理人となる権利と義務」であり、離婚したら協力関係がなくなるので、一人の親がこれを独占するというのが現行法ですが、改正により共同親権を選ぶことが可能となる予定です。

親権の内容は、「身上監護権」や「財産管理権」等で分かれており、未成年の子供が成人する、あるいは結婚して世帯や家計から独立するまで、親権者はこれらの権利と義務を有します。「身上監護権」がいわゆる子の教育権であり、同居親の権利です。

身上監護権は、「子供を適切に監護・養育する環境づくり」の義務と権利で、身上監護権の中には、子供の財産を管理する権限、子供の財産管理に関する法律的な同意権は含まれていません。

父母の同意によって、親権は父が持つが、子の財産管理は母がするというような取り決めも可能ですし、10歳までは母と暮らすという取り決めもできます。

そして、監護権を持つ人を「監護者」と呼びますが、そういう合意をした場合には監護権の中身もいろいろのものがありえます。たとえば、学校の選択は父がするという合意もできるのです。

また、監護者を決定した後でも、父母の合意があれば変更することも可能です。行政に届け出の必要もありません。しかし、子のために変えなければならない状況においても、父母の合意ができないなら、離婚や親権者の変更と同様、こちらも家庭裁判所での申し立てが必要です。

2. 監護者が決まるポイントとは

2-1 子どもが乳幼児ならば「母性」が優先される傾向がある

母性優先とは、血縁上や生物学的な「母」を指すのではなく、「母性的な役割を果たせる者、母性的に関われる者」を指し、育児や躾、子供の心身の成長に合わせて適切な対応や配慮をできる者が望ましく、里親や父親であっても、監護者の適格はあります。

一般に乳幼児は母が監護を主にしているので、争った場合か監護者は母となることが多いです。

2-2 監護を継続して行える能力・意欲があるか

会社員の父親が監護者に名乗りを上げたとしても、フルタイム勤務・残業や休日出勤が連日発生する、転勤が多いなどの「仕事を優先している暮らし」では、監護権を認められるのは難しいでしょう。子どもにとっても、安定的な養育者が監護者であることが有益でしょう。

もっとも、夫婦でそれぞれ忙しく、離婚してもうまく養育分担をしたいのであれば、海外先進国でされているように監護時間を分担して養育をともにすることも可能です。

別居状態で母親と子供が一緒に暮らしている場合、その期間が長い程、父親が監護権を得られる可能性は減ってしまいます。「別居していて母親の下で生活が安定している」ならば、裁判所側はその安定を重んじるからです。

同様に、母親が後で子供を迎えに行くつもりで1人で出て行った場合も、すでに父の監護の期間が長いと、母親が監護権を得られる可能性は非常に下がります。

夫婦間で監護者を決める場合、双方の経済力の差はあまり重視されません。どちらかが専業主婦・主夫であったとしても、子供が成人するまでの収入の差は「養育費」を払う側によって補われるためです。

裁判所では経済面は二の次という感じがあります。重要視されるのは、「実際的に、それまで子供を監護していたのはどちらか」と言うことと今の監護が問題がないかです。

2-3 子供の意志、兄弟姉妹の意志

法律上は15歳以上とされていますが、実情として10歳程度の子供には「父親と母親、どちらと暮らしたいか」という意見が聞かれています。そして、その意見が優先されるのが普通です。

同時に、兄弟姉妹はなるべく引き離すべきではない、という「兄弟姉妹関係の尊重」もありますので、それも重要視されます。子供たちがいずれも中学生以上であり、自発的に決められる場合は、別れて暮らすことももあります。中学生以上の兄姉と中学生未満の弟妹であれば、兄姉の意志によって、弟妹の行き先が決まるということもありえます。

2-4 面会交流に寛容であるか、寛容性の原則

どれだけ夫婦としてこじれてしまっても、子供にとってはどちらも大切な「親」です。憎しみ合って自分たちは二度と顔を合わせないと取り決めたとしても、監護者がそれを子供にまで強制するのは、子供の精神面に悪影響を与えます。

裁判所は「子供に面会交流を禁じる」親にはあまり監護者としての指定をしたがりません。もっとも、実務的には、今後は交流をする予定ですなどと言う宣言があればこの問題はクリアしてしまっているようです。

面会交流の禁止をすると、「親は会いたくないのだ」等と、子どもが思ってしまうこともありえます。

子どもに「別居親には見捨てられたのだ」という印象を持たせてしまうこともありますし、子どもは何が起きたのかわからないまま別居親にあえないため不安であるという場合もあります。

監護者としては、子供自身の事を思えば、積極的に面会交流を実施するべきです。

元来、協議の上で決められた監護者は、子どもの暮らしの安定のために簡単に変更すべきではない、という原則がありますが、事情変更があれば監護者が変更される事もあります。

3. 離婚後、監護者を変えられたケース

3-1 監護者の監護能力、状況や事情が変わった

離婚前後と比較して、明らかに子供の環境が悪化した場合や子の精神状態が悪く変わった場合、監護者は監護能力を問われます。監護者決定当初は問題なかった経済環境が悪化し、衣食住や教育環境も悪化していたり、子供への虐待が発生したりする状況が認められた場合、監護者は変更される可能性が大いに高くなります。

他にも、育児放棄やギャンブル、新たな恋人との生活で子供を放置している、犯罪に手を染めて服役することになったなどの理由、あるいは監督者が重大な病気にかかってしまったなどのやむを得ないケースでも、監護者は変更されます。

子が健やかに育っているかが変更のポイントになります。

また、子が10歳程度になり、他の親と暮らすことを求めた場合にはそれも尊重されます。  

多くの場合、子の環境悪化は親族や第三者が、もう一方の親に連絡する事でわかることも多いようです。両親同士の話し合いを経ても、現在の監護者が頑なに監護者の変更を認めない場合には、裁判所の審判で決められます。

3-2子供の成長に伴った意思決定

先ほど、10歳程度の子供ならば離婚時に親権者・監護者を選べると記述しました。

しかし、子供の成長、実際の養育環境への順応性や適応性、精神状況や性別を鑑みられた上で、最終的には裁判所がの調査をしてから決めることになります。

4. 弁護士依頼で監護者をを変更できる可能性も

監護者は子供の健やかな成長を見守り、関わっていく義務を有していますので、それは、「親」の役割を象徴するような義務といえます。

しかし、実績の多い弁護士に依頼することで、監護者変更なり親権変更ができそうかは意見を得られますし、助力を得られるでしょう。

相手の監護状況に関する不安があり、親権変更を求めたいのであれば、子の気持ちが重要ですので面会交流を継続的にしておく必要があります。

そのうえで、これまでの経緯や事情変更を丁寧に主張して証明する必要があります。

親として冷静な話し合いがしづらい状況においても、冷静な第三者である代理人弁護士がいれば、話あいで解決が可能です。

子どもは父母の間を自由に行ったり来たりしたいという考えのこともあるので、弁護士が経験値が高い場合にはいろいろな和解的解決をすることも可能です。

その場合には、子どもには手続代理人をつけて、子として、どういう暮らし方がよいか話をするのもよいでしょう。