離婚

国際離婚とハーグ条約の関係

1 ハーグ条約が批准された背景

ハーグ条約とは(国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)であり、平成26年4月1日に日本においても効力を有するようになりました。日本では、国内では連れ去り(親による子の奪取・誘拐)が違法とはされていない中で、海外に連れ去ったり、海外から日本に連れ去れる場合、その行為は他の親の監護権を侵害する行為として、不法(Wrongful)と評価されます。

  

ハーグ条約の考えは、子が連れ去られると子に有害な影響があるという考えが基礎にあります。この生活環境が変わり、親や友人や社会との関係の断絶されてしまうな度という問題です。

  

また、フォーラムショッピングというのですが、自分にとって有利な国に移動してそこで監護についての裁判をしようという裁判所を自分で選ぶために親が移動することがよくないという考えも背景にあります。日本語では、裁判地狩りなどと言われます。

  

国際結婚をしている方が、離婚を考えるとそれが国際離婚となるわけですが、夫婦がともに日本人でも海外で暮らしていると、国際離婚という範疇になりますし、ハーグ条約が大きく関連してきます。

  

自分の国にもどるために、子を連れて国境を越えると、ハーグ条約では不法な子の連れ去り(removal) となり、また、自分の国に戻っているうちに戻りたくなくなって約束の期間を超えてそこにいると「留置」(retention)ということになり、それもまた不法と判断されます。

  

ハーグ条約では、連れ去りと留置、つまり、

Wrongful Retention

Wronguful Removal

が、一定の条件の下で規制されて、これをした親には、子は元の国に戻すようにという返還命令が出るという仕組みとなっています。

  

日本でもハーグ条約が批准されたのは、国際結婚が増えて離婚後に一方親が他の親の了承なく日本に子を連れてきてしまったり、他国に連れて行ってしまう事案が多く、海外から抗議されたり、海外の日本人にとってもいろいろな問題が発生したからです。DVから逃げて日本にもどる母が守られないという点からの強い反対意見もあったものの、批准されています。条約締結国は非常に多く、先進国のほとんどが批准しています。

  

ハーグ条約については、こちらに網羅的説明があるので参照してください。

  

2 国際離婚にとってのハーグ条約

国境を越えた子の連れ去りは、それまでの生活環境を大きく変えることで子にとっては悪影響があると考えられています。実際、言葉も文化も異なる別の国に子がいきなり移動させられるのは子どもにとって大きな負担です。

  

また、他の親と関係が断絶されてしまいますし、幼稚園・学校なども継続していけなくなり社会生活もゼロからつくりあげることになります。

  

また、現在では子を日本にハーグ条約締結国から連れ去ると、他の親からいつハーグ条約の子の返還申し立てをされるか冷や冷やしながら暮らすということになります。

  

ハーグ条約は、子への悪影響から子を守るためにつくられた条約であり、上記の裁判地狩りを禁止するためでもあるので、元の居住国に子を迅速に返還するための仕組みとなっています。つまり、原則として子を元の国に戻す方向で条約は作られているのです。これは、国内の子の引渡し事件とは全く異なります。

  

国内の家事事件での子の引渡しでは、従前の監護が主にだれによってされていたかに重点があり、家庭裁判所は連れ去りが違法であるかどうか、という認定をしようとはしません。子を元の家に戻すのが子にとってよいのか、という観点で判断をしています。そのため、母が連れ去った事案の多くでは子の引渡しが認められず、その後の親子断絶の契機となってしまっている面があります。

  

しかし、国際的な子の連れ去り・留置では、ハーグ条約の趣旨から子は返還されるのが、子の利益であると考えられているため、それを回避することは非常に難しいのです。これは、ある親によって発生させられた不法な状態(監護権の侵害)については、まずは原状回復させた上で、子がそれまで暮らしていた国の裁判所で、監護権の問題を解決するべきであるという考えが条約の基礎にあるからです。

  

3 国際離婚の事案で外国に子どもを連れ去られてしまった場合どうするか?

子どもが連れ去られてしまったとき、その相手国が、ハーグ条約の締約国であれば、条約に従って子どもの返還を求める申し立てができます。この場合、日本の裁判所ではなく、連れ去られた国で申立てを行う必要があります。よって、通常は、日本の弁護士とともに当該国の弁護士が連携して申し立てをすることとなります。

  

実際に、子の返還が認められるには、「監護権が侵害されて、不法な連れ去りといえる場合)です。よって、すでに、面会交流だけをしている親権を失っている親には、この申立てはできません。しかし、離婚の際の約束で一定の監護権を有しているのであれば(共同監護のような場合)監護権が侵害されたといえることがあるでしょう。そういう意味で、日本から連れ去れた場合では、日本法の観点から、監護権を残された親が有していて、それが侵害されたと言えるのかがポイントとなります。

  

離婚前の両親で別居していたにすぎない場合には、共に親権・監護権を通常、有していますので、他の親の同意がないのに一人の親が日本から外国に子を連れ去った場合には、日本に取り残された一方の親(LBPと言われます。残された親という意味です。)の監護権は侵害されたと評価され、日本に取り残されたLBPは、ハーグ条約により日本への子の返還命令を得るため、申し立てができます。

  

面会交流をしていたのに、子が海外に連れていかれて面会交流ができなくなった場合にも、ハーグ条約では一定の手続きが可能です。面会交流が妨げられていることを理由に他の国の中央当局に、子との面会交流確保のための援助を求めることができるのです。

  

4 外国から日本に子が連れこられている場合、どうするべきか?

日本にすでに帰っている方からの相談もありますし、日本に連れられてしまった方からの相談も当事務所には多くあります。

  

他の親の同意なく、子どもを外国から日本に連れ帰ってきた場合、他の親からハーグ条約に基づき返還の申し立てをされる可能性がかなりあります。そういう場合には、まずは他の親との話合いを続けるべきでしょう。当事務所では和解的解決のために協議をすることもお受けしています。

  

返還の申立てがされると、原則として、子どもは元住んでいた国に返還することになります。それを回避するには、一定の条件を充足していることを主張し立証する必要があり専門的弁護士が必要になります。その審理はきわめて迅速にされ、平均審理期間は申立てから6週間と想定されているため、弁護士にとっても負担は大きい事案です。返還請求をされる不安がある場合、そういった主張や立証が可能なのかを先に検討しておく必要があります。返還請求をされてしまったら、迅速に対応が必要です。DVなどで逃げてきた場合には、元の居住国でのDV保護命令や他の親が逮捕された証拠などを準備する必要があります。

  

不法な連れ去りであったのかは、もとの国での法令によって監護権を誰が有しているか、その監護権が侵害されたのかが、ポイントになります。一定の期間について承諾をもらって日本に帰国しているのであれば、その期間において日本にいることは不法ではありませんので、約束の期間を延ばしたいならきちんと交渉して承諾をもらいましょう。

  

海外では、離婚しても、両親が共同で親権・監護権を有している場合が多いので、離婚したからといって日本に戻ってよいということには、なりません。共同親権・監護権を有している場合には、海外のLBP(取り残された親)は子の返還を求める申し立てができます。

  

仮に、一方の親のみが親権と監護権を有し、他の親には面会交流権が認められている場合には、完全に監護権を有する親が、子を海外から日本へ連れ去っていれば、海外に取り残されたLBPは申し立てができないことになりそうです。

  

しかし、面会交流権のみをもっている親でも共同親権(Legal Custody)を有しているおり、居所指定権を持っていることが多いので、注意が必要です。離婚の判決に細かいことが書いてある場合には、それをよく検討する必要があります。ハーグ条約に基づいて、子の返還を他の親が求めることができるかは、専門的な弁護士でないとよくわからないことも多いのです。

  

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