離婚調停

1. 離婚調停とは?

離婚調停は、夫婦の一方が離婚したい場合で、夫婦間で離婚の話し合い(協議)ができないときや、条件について合意できないとき、裁判所に申立てをすることで開始される合意形成のための家庭裁判所での手続きです。離婚するかどうかや、その条件を話し合う手続きです。

離婚調停は、正式には「夫婦関係調整調停」と言います。夫婦関係調整調停は、離婚したくない場合のものもあり、それは円満調停とよばれます。夫婦関係調整調停の中で(離婚)との記載がされるものが、一般に「離婚調停」と呼ばれるものです。法律としては、手続は家事事件手続法が定めています。実際に離婚はどういうときできて、どういう効果があるかは民法が定めています。民法は戦後からほとんど離婚法の改正がないのでとても古い法律です。

2. 調停は誰が指揮をとるのですか?

夫婦関係調整調停は家事調停の一つでして、もめごとについて当事者が話し合って合意を形成して、「紛争を解決する」ための制度です。そして、その指揮は、裁判官と調停委員で構成される「調停委員会」がなすことになっています。しかし、実際に調停期日に行くとわかりますが、裁判官に会えるのは限定的な時間だけです。調停の期日には全く裁判官の顔を見ないこともよくあります。

裁判官は多数の事件を抱えているので、調停の席に出てくることができず、時折、大事な場面で整理のために現れるという感じなのが通常です。調停委員が、公平で中立な立場で、片方から聞き取った事情を相手方に伝えるという方法で話合いを進めるのが、我が国の家事調停の方法です。相手と同席で言い分を言いあうことは、調停ではありません。

家事調停は誰も部外者は入れない「非公開の調停室」で進められますので、訴訟のように公開の法廷で誰もが入れる場では進められません。よって、プライバシーが守られます。調停委員には守秘義務があり、調停期日で聞いたことを調停の場で話合いのために必要な事項を相手方に伝える以外には、聞いたことを公表することはできません。

離婚調停において、調停を申し立てた人は「申立人」、その相手、申し立てられた人は「相手方」と呼ばれます。

3. 離婚調停の流れ(離婚調停はどのように進められ,どのようにして終わるのか)

まず、離婚調停は、夫または妻が、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申立をして始まります。弁護士を使う場合には、この申立書類は弁護士が作ってくれます。必要事項を弁護士に伝えて、委任状や資料を渡せば申し立てをしてもらえます。

離婚調停を申し立てると最初の調停期日が指定され、2から3時間くらいかけて、裁判所の部屋で調停期日が開催されます。そして、協議を続けるために次の期日が繰り返されて、協議がまとまると離婚調停が成立し調停離婚をすることなります。

どうしても条件があわないと「調停は不成立」となりますが、これを不調といいます。もっとも、裁判所が調停を不成立であると宣言する前に、申し立てた方がしびれを切らして取下げることもあります。よって、終わり方は、合意ができて離婚するか、または、調停不成立で終了するか、取下げで終了するという三パターンがあります。

離婚が成立しない場合、申立人が離婚をあきらめない場合、今度は原告となって人事訴訟という訴訟を提起しますが、これが離婚訴訟とか離婚裁判と呼ばれるものです。(例外的に、裁判所が審判をするのが相当と認めた例外的な場合では、不成立とせずに審判をすることがあります。

<流れのまとめ>

離婚調停第1回期日:
  お互いの言い分の聴取

  
第2回からそれ以降(概ね多くて6回程度):
個別論点で合意できるかどうかの確認(互いに財産資料を出してり、監護に関する資料や主張を出しあう)

  
●調停が成立 あるいは 不成立(あるいは取り下げ)

なお、婚姻費用の申立てがある場合、さきに婚姻費用の合意形成をしようとしますので、最初の期日から数回は婚姻費用を優先して協議して先に調停成立させるという運用が多くの家庭裁判所では取られています。

4. 離婚調停の最初の期日はいつになりますか?

概ね、申立てから1ヶ月半後に開始されますが、年末年始・夏休みをまたぐ場合にはもっと先になることもあります。

調停の申立てがなされると、家庭裁判所では調停を行う日を決めるために、申立人の代理人弁護士に電話やFAXで最初の期日がいつなら出られるかを、確認して期日を決めて、それから相手方に呼出状をだします。

5.離婚調停の期日には、何をするのでしょうか?

離婚調停は、裁判官(または「家事調停官」)1名と調停委員2名による三人の調停委員会が主催しますが、通常、調停委員は男女1名ずつとされています。裁判官は、事前打合せをしつつ実際の調停期日の進行は、2名の調停委員に任せるのが実務です。

裁判官は、調停室にいる時間がないため、調停が成立する場面と不成立で終わらせる場面といった手続の最終場面だけしか部屋に来ないこともあります。また、裁判官自ら代理人弁護士などと話をしたいという場面では、裁判官が現れるのを待つように言われて、裁判官と話ができる場面もあります。

調停では、当事者は交代で調停室に入り、1回の調停の時間は概ね約2時間程度です。夫婦は、別々の待合室にて待機しますが、夫婦が顔を合わせないように階を変えるなどの配慮がされています。

時間になると待合室に担当の調停委員が呼びに来られて、調停室に入って話を30分程度して、交代になります。これを2から3回繰り返すのが調停期日の進行です。

夫婦の片方が相手の暴行の危険を訴えていたり、相手を見ると過呼吸になるなどの健康上の問題がある場合には、裁判所に出頭する時間をずらしたり顔を会わせないようにする配慮もされます。

1回の調停の時間は概ね2から3時間ですが、最後の調整などの場合には3時間以上をかけて行うこともあります。30分程度を目安に交代して調停室で話をしこれを2往復程度することが多いですが話の内容などによっては、片方の当事者に長く話を聞くこともあります。

離婚調停の頻度は、1ヶ月〜1ヶ月半に1回程度のペースですが、霞が関の東京家庭裁判所では事件数が多く、毎月の開催はほぼできていません。お盆、4月の裁判官の異動時期、年末年始をはさむと期日の間の期間は23月以上になります。

6. 離婚の合意に至ったときはどうするのか?

離婚条件について当事者で合意ができれば、調停委員と裁判官、裁判所書記官が立ち会い合意内容を確認します。通常、財産分与や養育費の合意がありますので、弁護士がその前に書面のやり取りをしてドラフトを固めておくことが多いです。

この時は、双方が同席してその内容で調停を成立させることに間違いないと内容を裁判官が読み上げて確認し、調停が成立して離婚が成立します。それから、合意内容について裁判所書記官が、調停調書という公文書にします。離婚が成立するのは、離婚を合意した調停成立のときですので、調書はその後に作られることになります。

7. 調停で作られる調書の意味

この離婚についての合意が書かれた「調停調書」は、裁判所における訴訟の確定した判決と同一の効力があります。

そのため、養育費・財産分与など調停で金銭の支払いの合意をした場合は、約束したのに支払いがないときに、差押えができます。また、不動産の名義移転を約束したときは不動産を渡す側の捺印がなくても、もらう側が単独で法務局で名義移転の手続きをとることができます。

8. 離婚調停のために、どんな準備が必要でしょうか?

8-1 申立書の作成のために

まず、弁護士を依頼して申し立てをするかどうかを決める必要があります。

弁護士に依頼をすれば、あなたが離婚したいのであれば離婚できる方向に進めるにはどうしたらよいか、あなたが離婚したくないのであれば、早く不成立とさせるためのアドバイスをしてくれるでしょう。

離婚をするか迷っている方には、出された条件がよい条件なのか、訴訟にして判決をもらうなり、和解を裁判の中でするほうがよいのか・・・・といった多方面のアドバイスを得られるでしょう。財産分与について、どうやって、分けるのか最もスムーズであり公平なのか、どうやったらそれが実現できるか、という点のサポートも受けられます。

しかし、そういったアドバイスをほとんどしない代理人(調停で本人に話させるだけの弁護士)もいますので、どういう弁護士を求めるのか、考える必要があります。また、専門的知識があるか(離婚事件に詳しいか、申し立てをする側もされる側も双方の実務をよく知っているか)という点も重要です。

弁護士がいれば、離婚調停申立書の作成・提出、資料提出も、依頼者と打ち合わせた上で弁護士が行ってくれます。そのため、忙しい方や今後の戦略について自信がない方は専門的弁護士を依頼したほうがよいと思われます。

調停で年金分割請求をするには「年金分割のための情報通知書」を先に手に入れて、離婚調停申立書に添付する必要がありますので、これも入手しましょう。もっとも、通知書は後で提出することも可能です。

弁護士を依頼しない場合には、申立書などの書類と戸籍謄本などの添付書類を用意して記載することになります。

8-2 申立てをする方法

弁護士に依頼するのであれば、弁護士に事情を説明する必要があります。婚姻生活が長いのであれば時系列表を作っておくとよいでしょう。弁護士に説明すると、申立書や付属書類を弁護士が作成し提出します。戸籍謄本などの書類も、弁護士であれば取り寄せができます。

弁護士に依頼しない場合には、あとで不利になることを申立書に記載しないようにして、自分で書式を手に入れて申立書を作成し、戸籍謄本や財産分与の必要資料を用意しなければなりません。そして、親権・養育費・財産分与・慰謝料・面会交流などについて、自分としてはどのような条件で離婚をしたいのかを申立書に記載しなければなりません。

弁護士がいれば、どういう記載がよいのか相談しつつ決めて、すべて弁護士が準備します。

8-3 最初の調停期日の準備

調停期日の流れは上述の通りですが、その期日に行く前にどのようなことを検討しておいたらよいでしょうか?必要な場合には、弁護士から、検討しておいてほしいことや期日での話の仕方についてアドバイスがあるでしょう。複雑な論減があるなら、できれば期日直前に打ち合わせをしておいたほうがよいでしょう。

申し立てる側が知っておくべきことで重要なのは、申立書ではあくまでも自分の希望の条件を書いているにすぎないことです。例えば、自分が親権者になりたいと書いていても、すでに子と別居している場合、親権を得るのは相手が反対すればとても困難です。よって、相手の主張を予想しながらどこか譲歩できるのか、検討しておく必要があります。

たとえば、マンションは売って代金からローン返済をして残りを分けたいが、もともとかなり頭金を自分がだしたので75%は自分がもらいたいというのが希望でも、頭金が特有財産であることの証明ができないなら、50%で分けるというのが「訴訟の実務」になりますので、そこは譲歩しないといけない点であるといえます。

また、相手はマンションがほしいというかもしれない場合、そのときはローンを引き継いでくれれば名義移転をしてあげてもよいのかなども、考えておく必要があります。

調停ではお互いがこうしたいということを言い合いますので、希望が全て通ると考えず譲歩する気持ちを持っていることが大事です。

その譲歩というものの基準は、訴訟になった場合に、裁判官の判断はどうなるのかという点を一定の基準とするべきでしょう。訴訟になったらその主張が通るのであれば、それを維持して、通らないのなら「譲歩する」のが合理的な選択になります。そして、相手にも判例を示してそれを伝えましょう。裁判官も、そのような法的論点では家裁の意見を明らかにしてくれることもありますので、そういった争点は、代理人の弁護士が積極的に証拠と主張を出していくべき「がんばるべき」場面になります。反対に、この見極めを代理人の弁護士なしでするのは、高度の法的知識(判例知識など)が必要なために難しいでしょう。

申立をした方もされた方も、離婚調停がまとまらず終わったとき、その後に訴訟において裁判官が判決で結論を出すことを頭に置いておきましょう。訴訟での結論の方がよいと思えば、離婚調停で合意をする必要がないということになりましょう。もっとも、時間がかかるというデメリット、その間に婚姻費用の支払いがあるというメリットとデメリットについても、きちんと計算する必要がありますね。

9. 調停委員への説明の仕方について

調停委員には、ある程度期日の進め方についてマニュアルがあり、どうして離婚したいのか、したくないのかについて質問されますので、手短にまとめて話しましょう。このとき長い陳述書とか準備書面を準備する代理人もいますが、戦略としては必ずしも良くないので、よく検討してから準備したほうがよいでしょう。というのも、あまりに相手を悪く言って攻めると離婚がまとまりにくいということがあるからです。また、子どもがいる場合、親が喧嘩ばかりしていることそのものが子どもにとってはストレスでもあります。また、責めると「そんなことはない」と相手が躍起になって反論を始めてしまって、到底、離婚条件を話し合える雰囲気ではなくなることもあります。

また、訴訟において相手が調停で出ていた書面をだしてくる可能性があるので、調停では書いていないことを訴訟の準備書面(言い分を書く書面のことです。)で書くと「変遷している」(変わっている!という意味です)と責められて、こちらの主張に真実味がないように見えるデメリットもあります。

また、離婚合意をするために先に謝ってしまうと、調停で離婚が成立しなかったときに「謝罪しているから、有責配偶者の証拠だ!」と相手に証拠として出される可能性もあります。

というわけで、調停での証拠とか主張の出し方は、代理人弁護士と相談して慎重に行うべきでしょう。客観的な売買契約などどうせ訴訟でも提出するようなものは調停で提出してもリスクはほとんどないでしょう。特有財産の立証のための証拠などは、調停段階で提出して相手に見せておくかは、ケースバイケースとなります。

期日に慌てないように、調停委員の質問への準備はしておく必要がありますが、財産分与の計算方法とか養育費根拠などは代理人弁護士が整理整頓して代理で説明することが妥当と思われますので、感情的な部分を依頼者が話すのがよいと思います。

弁護士がついていない場合には、すべて資料など整理しておいて、当事者が調停委員に説明することになります。調停委員によくわかってもらうためには、わかりやすい話ができるように、前もってメモなどを作っておくのがよいでしょう。相手に見せてもよいと思われる資料はコピーを二部取って裁判所に出しましょう。自分のコピーもきちんと取っておく必要があります。

代理人弁護士がいるのであれば、説明するために資料番号を付けてコピーを期日前にだしておいて裁判官にみてもらうことが多いです。

10. 離婚したい場合、いつ離婚調停を申し立てるべきなのか?

離婚したいが相手が同意してくれなさそうで困る、離婚してもらうにはどうしたらいいですか?離婚の話し合いをしたが養育費,慰謝料の金額について払えないと言われた、どうしたらいいですか?

というご質問をよくお受けします。

そういうときまず利用するべきなのが「離婚調停」だと言えます。

調停前置主義

「離婚したい」と思ったときには、まず最初に、夫婦で話し合いをしますよね。この話し合いで離婚の条件を決めて離婚をするのが協議離婚です。(なお、海外ではこれが認められていない場合がほとんどでして離婚について裁判所関与が必要であるという法制度が一般的です。)

夫婦の話し合いがまとまらない場合に、裁判所に離婚する(離婚させる)かどうか、離婚するなら養育費や慰謝料はどうするかを裁判離婚(訴訟離婚)で判断してもらうことになるのですが、いきなり、裁判所に離婚裁判(離婚訴訟)の訴えをすることはできないという法律の定めがあります。先に、裁判所で調停をすませないといけないのです。

「離婚裁判(離婚訴訟)の前に離婚調停をしなければならない」という「調停前置主義」のルールがあるのです。離婚調停をしておけば離婚裁判(離婚訴訟)ができるということでもあります。離婚調停そのものにはあまりデメリットはないので、離婚したいのであればこれを申し立てることは必要なことになります。

メリット

離婚調停前の夫婦間の協議も合意をするためのもので、相手の気持ちを無視して強制することはできません。しかし、離婚調停には大きなパワー(メリット)があります。中立な家庭裁判所の裁判官・調停委員が間に入るということが大きな違いです。法的論点について双方で大きな隔たりがある場合、裁判官が「一般的にこういうふうに考えられている」というような示唆が頂けることで解決が早まることがあります。また、調停委員が双方の話を聞いて譲歩できる方法を示唆してくれることもあります。さらに論点について、「退職金も訴訟になれば分与の対象ですよ」というアドバイスが裁判所からあれば、当事者も納得して財産分与の対象にするのが通常ですから、合理的な条件での離婚がまとまりやすいというメリットがあります。

デメリット

離婚調停のデメリットは、裁判所の日程に合わせた期日でしか協議ができないことでして、東京家裁のような忙しい裁判所では3月の次は5月になるようなこともあります。この点は、双方に弁護士がいて期日と期日の間に考えをやりとりすれば迅速に進められるので対処方法はあります。

また、法的な専門家である裁判官が関与するので、法的には通らない主張が通りにくいということがあります。もっとも、慰謝料1000万円を払うことは通常の裁判実務ではほとんどないものの、本人がそれで離婚しますという合意ができれば調停は成立するので、納得できているのであれば法的には通常認められないような方法でも離婚は成立します。

心理的な効果

離婚したいという希望を実現する話し合いの場として、離婚調停が特に効果的であるといえるのは、心理的な面からです。調停のその後、待っているのは訴訟であるということです。通常、双方は訴訟までしたくないと思っていることが多く、納得できるまで話し合いをしたら、調停で離婚をしたいという気持ちとなることが多いです。

成立時のメリット

離婚調停で合意すると、そこでは「成立調書」を書記官が作成してくれます。作成は無料です。この「調書」は判決と同じ効力をもつので約束の通りの金額を支払ってくれない場合には給料を差し押さえるというような方法が可能となります。これは専門用語では「債務名義」と言われるものです。(当事者が作る離婚協議書は公正証書で作成しないと債務名義になりません。) 。

さらに、離婚調停で決めた合意を守らず養育費を支払わないとか、子どもに面会交流をさせないという場合には、裁判所が間に入って相手方に連絡をしてくれる「履行勧告」を利用することもできます。こうした合意結果の拘束力の強さも離婚調停のメリットです。

11. 離婚調停を申し立てなくてよい場合とは?

離婚調停を申し立てなくてよいのは、以下のような場合でしょう。

(1)冷静に話合いができる

夫婦で離婚について感情的にならないで条件の話し合いができる場合。相手が怖くてできないということがない場合です。

話し合いをして条件はだいたい決まったけれど、細かいところで決まらない場合には、双方が弁護士をつけて協議をまとめるという方法がよろしいでしょう。あと一歩というところであれば、双方に専門家が付くと合理的な結果でまとめられることが有ります。

なお、離婚調停では、代理人である弁護士と自分が調停室に入って調停委員とだけ話をします。よって、相手と直接対決は回避ができますので、怖いという感覚はないでしょう。

(2)双方が離婚したいと考えているとき

双方が、性格の不一致などから同居はもうできないなどわかっていて、離婚は不可欠と思っているのであれば、調停を経ないで協議離婚が適切でしょう。離婚は不可欠だけど子どもの親権でもめているだけ・・・というときも、弁護士をたてて親権問題についてのみ協議をして離婚をすることも可能かもしれません。もっとも、子どもの親権が論点で揉めそうなら、家庭裁判所調査官が関与することになる調停が最も良い選択になりそうです。

(3)離婚の条件が決まりそうなとき

慰謝料は0、養育費は8万円などと条件を決められそうなら、協議離婚が最適です。財産が開示されないので、財産分与だけ揉めてしまうのであれば、離婚だけして弁護士に財産分与のみ依頼するという選択が合理的でしょう。双方が再婚したいようなときには、これがベストの方法になります。

話し合いを2カ月してもまとまりそうもないなら、調停を考えるのがよいでしょう。その際、専門の弁護士に相談して訴訟(とか審判)となったら実際にどういう結論になりそうなのか、その条件はどうか、をよく見極めておくべきでしょう。

自分の主張が合理的であるのなら、調停を申し立ててそこで合理性を説明して離婚をできるよう努力することには、大きな意味があります。また、あなたが浮気(不貞)をし、どうしても離婚したいような場合でも「慰謝料」について合意できれば離婚できることは多いので、あきらめないで調停を申し立てるのがよいでしょう。

調停で離婚をせず、離婚訴訟に進んで高裁まで進むという場合には、離婚までに2年程度は必ずかかりますので、離婚調停で半年くらいで離婚ができることは当事者にとって有意義です。

調停に向かう場合には、財産分与、子の親権などの重要論点がある場合、双方に法律がわかっている弁護士がつくことが、迅速でかつ合理的な解決への早道といえるでしょう。(当事者が無茶な主張をしなくなるので妥当な結論にたどり着くことが多いからです。)

12. 離婚したい場合、同居のままで問題はありませんか?

「離婚調停をする場合,先に別居しておいた方がいいか?」という質問が多いのです、未成年のお子さんがいない場合、別居はしておいたほうが一般的には進めやすいです。別居しないといけないわけではないですので、同居しながら離婚調停をすることも可能ですし現実にそうやって離婚した人もたくさんいます。

しかし、家庭裁判所で離婚調停が進行しているのに、家では同居となると互いに相当のストレスになります。実際、別居されてから申し立てをされる方が多いです。また、離婚したら別居しないといけないので双方が住宅を準備しておく必要もあります。

なお、未成年のお子さんがいる場合には、お子さんを置いていくか、連れていくか、という別の問題があるので、慎重な対応が必要です。親権や面会交流の合意が先にできればこの問題は解決できます。もっとも、弁護士が介在しないとそのような合意は困難でしょう。

別居しないまま、離婚したいと主張するとそもそも「夫婦が破綻していない」という判断がされやすいという点が気になります。破綻については、「別居期間が一定期間以上になるので、すでに関係修復は困難だ」という認定になることが多いため、別居期間がないとそもそも「一緒に暮らしていて、関係が破綻しているとは言えない」という判断になるやすくて訴訟では離婚しにくいかもしれません。

13. 離婚調停申し立てると不利になりますか?申し立てられると不利になりますか?

離婚協議をしないでいきなり離婚調停を申し立てることがいけないことというルールはないですし、調停は話し合いのための場なのでそれで不利になることはありません。

しかし、日本ではまだ「裁判沙汰」という言葉があるので、家事調停を裁判沙汰であると考えて、相手方が感情的になるかもしれません。

あなたが離婚したいと思うのであれば、まずは協議離婚ができそうか、相手に「離婚したい」と切り出してみて様子を見てから、調停を申し立てるのがベストでしょう。あるいは、申し立てをする準備をしつつ、弁護士に協議離婚の申し出をしてもらうという手もあります。

しかし、問題なのは上記の「調停前置主義」、いきなり離婚調停を開始できず調停を経ないといけないという原則があるので、協議がうまくいかないときは、調停を申し立ててから離婚訴訟提起という二段階の手続きになることです。よって、2人の話合いでは難しいとなれば、離婚したい方は、まずは離婚調停を早く申し立てた方がよいでしょう。

では、あなたが離婚したくない場合はどうでしょう?その場合、離婚調停を申し立てられてしまうことは、離婚に一歩近づくので嫌なできごとであるといえます。しかし、申立てをするのを阻止はできないので、仕方がないのです。

離婚をするのは嫌だけれど、離婚の条件が納得できるものならば離婚してあげてもよいというのがあなたの気持ちなら、離婚調停を申し立てられることには、メリットがあります。相手の離婚条件に対して「こんなのは嫌だ。こうしてほしい。」と積極的に主張をする機会ができ、訴訟になる前にどのくらいの条件になりそうなのか、そもそも離婚を拒否できるのか、代理人弁護士の意見も聞いて検討することができるからです。もっとも、手続きに巻き込まれてしまうし、弁護士を雇うには費用が必要なので、それはデメリットでしょう。

通常離婚したい方は、適切な代理人弁護士からアドバイスを受けていれば、自分の方から「離婚したい」と思っている以上早期に離婚を成立させるためには条件を譲歩する用意ができている場合が多くあるのですが、離婚したいのに条件も自分に非常に有利なものを押し付けてくる人も中にはいます。

また、離婚したくない方は、離婚調停では離婚したくないとだけ伝えたら調停は不成立となってしまってその後の離婚訴訟の開始が可能となるので、それが怖くて、譲歩すべきでない点も譲歩して離婚してしまうということもあります。これは避けたいですね。

離婚を申し立てる側はまずは、代理人弁護士と状況分析をして、どこまで譲歩するのか、きちんと検討をして調停に臨む必要がありますし、離婚を申し立てられた方は、調停手続の中であくまでも離婚は拒否して訴訟を提起されることの準備をしておくか、調停において協議を誠実にしてみて相手がある程度譲歩して自分に有利な方向に進められるなら離婚に応じるのかを決めて調停に臨むのが合理的な態度でしょう。こうすると、双方が家事調停を有効に使えます。

もちろん、いろいろ準備して臨んでも、相手の態度が思いがけないものであったり予想外の証拠が出されたりすることもありますので、その期日と期日の間で代理人となっている弁護士と相談して毎回、充実した調停にするべきでしょう。

お互いに代理人の弁護士がいる場合、期日だけではなくてその間にもやりとりをして協議とか交渉を進めて、訴訟以上に効率的に離婚条件がまとめらえることもあります。その場合には、当事者は双方が調停を上手に使ったといえるでしょう。

14. 離婚調停にはどのくらいの期間が必要ですか?

裁判所に行くと長くかかる・・・・という印象があるようですが、実はそんなこともありません。

離婚協議の方が、一方が駄々をこねて全く進まない、財産の資料を出さないまま1年経過するという非常に遅いことがありえます。離婚調停では、毎回、次回までの宿題が双方にありますので、通常は毎回進んでいきます。

若い方で財産がなければ、3回程度の期日で離婚調停が成立することが多いです(これは双方が離婚してもよいと思っている場合です)。若い方の場合、当事者の再婚の可能性も高いので、早く決まる傾向がありますし、財産も預金とか投資信託などだけということが多いので分けるのも簡単なのです。

年齢が上になると、整理しないとならない問題(親の援助による不動産購入、親権争い、財産隠し等)や財産資料がそろうのに時間がかかるため、4回目とか5回目の期日までにやっと資料がでそろってきて、最終の調整をその期日間に弁護士がするというようなものが多いのが経験から言えることです。そうなると、成立するのは5から8回目くらいが多いでしょう。

不成立になる場合には、ある程度交渉をしていたが最終決裂の場合には、最初から10カ月以上経過していることもありますが、そもそも片方が離婚しません、同居再開しましょうという感じなら、3回以内で不成立となるでしょう。

離婚調停申立から、約1ヶ月から1ヶ月半で最初の調停期日がはじまりそれから1ヶ月〜1ヶ月半毎に調停期日が行われていくので、申立てを考えてから4カ月から10カ月で離婚が成立し、終了するパターンがほとんどであろうと思われます。

もっとも、不動産があるような場合、売却をしてお金にして分けようということとなると、その間には調停期日が続くこともあります。

15. 親権に争いがある場合の離婚調停はどう進行しますか?

双方が離婚してもよいが、親権を双方が欲しがっている場合、調停は成立しません。親権を後で決めて、先に離婚だけすることが日本ではできないからです。よって、結果としては、調停は早期に不成立(不調)になってしまいます。そして、典型的には、子と同居していない親から、監護者指定と子の引渡しを求める審判か調停が申し立てられて、離婚までの間子がどちらの親と住むのかの判断を裁判所に求め、親権紛争が本格的に始まります。

一方が親権をあきらめる代わりに面会交流を求めるという気持ちになったり、予定されている法改正を見越して「共同親権」に将来することを合意できたりして、離婚調停が成立する可能性もありましょう。離婚調停を成立させたい子どもと同居している親は、面会交流をスムーズに実施して、相手の親の葛藤を高めないようにすることが今後のためによろしいでしょう。もっとも、面会交流が危険であるような親である場合にはそもそも合意で面会交流をすることはできないでしょうから、その事実は最初から調停で明らかにするべきでしょう。すべて、子の利益を考えて進める必要があります。通常は、調停の期日の間に面会交流を実施しつつ、今後どういう頻度と方法での面会交流がよいか冷静に話し合っていきます。

面会交流については、代理人弁護士がいつからいつまでどこで子を受け渡すか等の詳細を決めて行うことが多いですが、弁護士に手間がかかるのであまり積極的にやってくれない弁護士もいるようです。直接会って子を引き渡すのが困難である場合、支援団体の助けを借りることができます。支援団体は各地のNPOであり、地域によってそういう支援団体がいない場合もあります。

16. 離婚調停はどの程度の期間をかけてどのくらいの割合でまとめるのですか?

統計(平成27年の司法統計年報)では、婚姻関係の調停・審判の事件の終了までの必要な期間が1ヶ月以内は6.4%、1ヶ月超3ヶ月以内が30.8%でした。3ヶ月から6ヶ月のものが、35.8%、6ヶ月超から1年以内が22.1%、1年を超えるものが残りの5%ほどです。

1年以上かかる場合のものはおそらく財産分与の整理に時間がかかっているか、試行面会をするなど子どもの問題に時間がかかっているように推測されます。離婚調停は7から8カ月くらいで終わる人が多いかと思われます。

そして、離婚調停を申し立てた当事者の約半数が調停離婚とか協議離婚の成立で終わっているという統計があるので、離婚調停を申し立てた場合、調停申し立てから8カ月以内に半数が離婚をできているというのが現実の姿ではないでしょうか。