相続のトラブルにお悩みの方に、ここでは、弁護士とともに遺産分割調停や審判の手続きで問題を解決するときの流れを説明します。
Contents
1. 遺産分割調停、遺産分割審判とは何でしょう?
遺産分割調停は、家事事件手続法で定められた、相続についてのトラブルを話し合いで解決したい方が使える調停手続きです。
ポイント:
遺産分割調停は話し合いの手続きであって、裁判沙汰ではありません。
どうやって進んでいくかというと、弁護士が申し立てをすると調停期日には弁護士だけが行くか、ご本人も同席するかは自由です。
そして、調停の期日は3時間程度で、1人の裁判官と民間から選ばれた2人以上の調停委員(一人は弁護士資格があるのが東京では通常です)が、調停委員会をつくって、話し合いの間に入ってくれます。
こうすると、当事者のお互いの言い分を調停委員会が間に入って、譲歩できるところがないかとか、法律実務にあった主張をしているか、適宜証拠をだして協議をしているのか・・・というようなことを確認しつつ、冷静に、合理的に協議が進むよう指揮をしてくれます。
第三者が間に入ることで冷静な話し合いがしやすくなりますし、指揮者のような人がいるので毎回話を進めていくことが容易になります。
そして、遺産分割調停で話し合いをしてもうまく合意できないとき、家庭裁判所の審判官(裁判官)が遺産分割方法を決定する、これが遺産分割審判です。多くの場合、弁護士がついていれば調停で合理的解決がはかれますが、どうしてもひとつの建物を欲しがっている人が複数いるなどの場合、話し合えないですよね。そうすると、では仕方がないから、裁判所で決めます!となるのです。
ポイント:
裁判官が強制的に結論を出してしまうのが遺産分割調停。
どういう結論になるかわからないので、リスクがあります。
2. どうやって遺産分割調停の申立をするのか?申立の流れ
2-1. 調停から始める理由
遺産分割調停を始めるには家庭裁判所に遺産分割調停または審判を申し立てなければなりません。遺産分割では、先に調停をしなければ審判が利用できないということはないのですが、弁護士がついている事案では、遺産分割審判を申し立てるまえに調停で話し合いをしようとするのが通常です。
その理由は、申し立てをしても裁判所から調停に付される(先に調停で話をしてくださいといわれる)のが通常であるからです。もちろん、当事者の一人が連絡がとれないとかなにか話し合いに支障がある場合は別です。
2-2. どうやって遺産分割調停の申立をするのか
まずは、遺産分割調停の停申立書を作成します。それを、他の相続人の住所地の傍の家庭裁判所に申し立てます。たくさん相続人がいる場合には、申立人にとって便利なところを選びましょう。
でも、たとえば東京の弁護士を使うからという理由などで、東京の家庭裁判所でやろうと当事者が合意できれば、その合意した裁判所での申し立てが可能です。これを合意管轄と言います。
申立書には、印紙を貼る必要があります。相続人の数に 1200円をかけた金額です。それから、呼び出しの手紙を送るための郵便切手を一緒に納めることになりますが、裁判所ごとに郵便切手については決まりがあるので、確認しましょう。申立てに必要な書類を整理して、申立書と一緒に裁判所に提出します。まず、申立書の写しが相手方となる相続人分必要です。
それから亡くなった方つまり「被相続人」の戸籍が必要ですが、これは生まれてから死ぬまでのものなので、転籍した場合、結婚・離婚を何度かしていた場合などには、取り寄せはかなりの量になり複雑でで、除籍謄本とか改製原戸籍謄本などが必要になることが多いです。
当事務所では、司法書士が申立てのサポートを有料でしておりますので、ご相談ください。
2-3. 遺産分割調停に必要な相続に関係する戸籍謄本の集め方や範囲
これは亡くなった方の状況によって異なりますので、詳しく説明します。
戸籍謄本の種類:
戸籍謄本には現状だけを示すものや過去の履歴が記されたものいろいろ種類があります。それを理解して集めましょう。除籍謄本は、今の戸籍ではない(婚姻前のもの等)が過去の届の内容が記録されている記録になります。改製原戸籍謄本は、法によって新たに書き換えされる前の戸籍のことです。
一般的に相続に必要な戸籍謄本:
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本)」
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
このふたつがまず必要です。最初の①は、亡くなった方が生まれたことが記載されている戸籍謄本や除籍謄本などです。結婚したりすると除籍されるので除籍謄本が必要になります。昔の戸籍は法の改正で新たに作られていることがあり、その場合古いものが必要になりますが、これは「改製原戸籍謄本」と言われます。相続人が配偶者と子、配偶者のみ、子のみのような一般的な相続の場合は、これらの戸籍謄本で手続きができます。
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本)とは?
「被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本」というのは、亡くなった人の両親、兄弟姉妹、結婚歴、子どもなどの情報が記載されるものです。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本があると、法定相続人が誰かがわかるのです。
出生から死亡までの戸籍謄本によって新たにわかるのは、婚姻外の子や養子です。それがわかると、法定相続人が増えます。
相続人が生きているとき、その全員の現在の戸籍謄本とは?
相続人全員の現在の戸籍謄本は、法定相続人の生存を確認するために必要です。ただし、亡くなった人の死亡が記載された戸籍謄本に載っている相続人については、改めて取り寄せる必要はありません。
相続人がひとりでも亡くなっている場合
親の死亡時にすでに子が亡くなっている場合、亡くなった子に子がいる場合、その子(孫)が相続人となります。このように飛び越えて相続がされることは「代襲相続」と言われています。
代襲相続の場合
- 亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本
- 代襲相続をする人(亡くなた人の子)全員の現在の戸籍謄本
が必要です。
兄弟姉妹が相続人になる場合
亡くなった人に子がいなくて、両親や祖父母という直系尊属もすでに死亡していると、兄弟姉妹が法定相続人になります。そうすると、直系尊属の死亡を確認して、かつ、異父母の兄弟姉妹がいないかを確認する必要があります。
よって、亡くなった人の両親の出生から死亡までの戸籍謄本
が必要です。
多くの戸籍謄本が必要なケース
子どもの人数が多い場合、全員の現在の戸籍謄本を取り寄せるため、数が多くなります。
結婚とか離婚、養子縁組などが多い方の場合、本籍の変更を伴うことが多く、戸籍謄本の数が増えます。
本籍ごとに請求する市区町村が異なるので、それぞれの役所に交付申請をしなければなりません。
2-4. 戸籍謄本を取り寄せる方法
請求先
実際に戸籍謄本を取り寄せる方法としては、まずは戸籍謄本の請求先ですが、本籍地のある市区町村の役所です。亡くなった人の本籍地がわからない場合、本籍地記載の住民票を取り寄せて知ることができます。生きているときに婚姻などで本籍地が移った人では、以前の本籍地への請求も必要です。謄本の請求は役所の窓口に出向かなくても、郵送でもできます。
戸籍謄本の請求に必要となるもの
市区町村の役所に直接請求する場合
- 戸籍証明等交付申請書
- 印鑑(シャチハタではないもの)
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
*これを代理人が請求する場合、委任状と代理人の本人確認書類が必要です。
なお、弁護士に遺産分割の解決を依頼すると、こういった戸籍謄本は弁護士が集めることができるので、ご本人は何もしなくてかまいません。
郵送の場合(送付するもの)
- 戸籍証明等交付申請書(役所のホームページからダウンロード可、押印して送付)
- 本人確認書類の写し
- 手数料分の定額小為替
- 返信用封筒と切手
- 代理人が請求する場合は、委任状と代理人の本人確認書類の写しも必要
戸籍証明等交付申請書での請求のとき、通数を書く欄があるのですが、必要な戸籍謄本が何通かは、請求する時点でわからないので多めに書いておいて、返信用封筒は大きめのものを用意し、余裕を持った送料分の切手を送っておきましょう。
戸籍謄本の取得費用
戸籍謄本の1通の発行手数料
- 戸籍謄本:450円
- 除籍謄本:750円
- 改製原戸籍謄本:750円
請求先の市区町村の役所に何通分送ればよいかなどを問い合わせることもできます。戸籍謄本の発行手数料は2024年12月においては、上記金額で全国共通です。
2-5. 遺産分割調停に必要な遺産に関する資料
不動産について:
- 不動産登記事項証明書・固定資産評価証明書
- 預金:
- 通帳の写し、あるいは、残高証明書
- 株式等:
- 残高証明(証券会社から出してもらうものです)
<他に必要なもの>
- 事情説明書
- 連絡先の届出書
- 進行に関する照会回答書など
3.遺産分割調停の進行
3-1. 遺産分割調停の流れ
遺産分割調停の申立が済むと、第一回期日の呼出状がすべての相続人に届きます。そこで初めて申し立てを知って、相続人から連絡があることもありますが、慌てないで相続の解決をするために申し立てたこと、電話でも参加できること、弁護士を立てても立てなくてもよいから期日に出頭してほしいと伝えましょう。なお、申し立てた時から貴方に弁護士がついているのであれば、弁護士に連絡をしてくださいと伝えるだけでも構いません。
第一回期日
申立人と申立てを受けた他の共同相続人がそれぞれ別の待合室に行くように言われます。弁護士を立てていたら、期日に行く必要はありません。
そして、申立人と相続人は、順番に調停委員のいる部屋に呼び出され、調停委員からの質問に回答します。弁護士がすでに書面で回答を用意して出している場合には、それを確認するだけになります。遺産の範囲とか、特別受益の有無とか、希望する遺産分割方法など、遺産分割の解決に関連することが質問されます。
自分の意見を伝えると、調停委員が他の人にその内容を伝えるのですが、込み入った財産の問題であれば、弁護士を立てて論理的に争点ごとに主張をまとめないと委員には言いたいことが伝わりにくいでしょう。
調停では、調停委員が話し合いを仲介して手続きが進みますが、調停委員会には裁判官が含まれているので適宜委員は裁判官の考えを聞いて進めていきます。委員会が話し合って進行を決めることを「評議」と呼んでいます。
一回の調停は数時間で終わるので、それぞれに残った問題が宿題となったり、資料を追加提出するように指示があります。
第二回期日以降
そして、残りは次回期日に持ち越されて、調停期日を重ねて遺産分割を解決していきます。調停期日の回数や期間に制限はないものの、東京家裁などでは事件数が多いので、かなり合理的に進められています。不動産鑑定が必要であるような複雑事案では、鑑定に期間がかかることもありますが、6か月でおわるものが二割程度、1年以内で終わるもの過半です。
3-2. 遺産分割調停の調停委員とは?
では、調停の仲介をしてくれる調停委員とはどういった人なのでしょうか?
調停委員は、家庭裁判所に非常勤で所属している人で当事者間の話し合いがスムーズにいくように調停委員会のメンバーになっている人たちのことです。調停が始まると、裁判所は裁判官とともに2人の「調停委員」で調停員会をつくるのが通常です。
調停委員として裁判所から選任される人は以下の人たちです。年齢40年以上70年未満で以下の者の中から、最高裁判所が任命します。
- 弁護士となる資格を有する者
- 民事若しくは家事の紛争の解決に有用な専門的知識経験を有する者
- 社会生活の上で豊富な知識経験を有する者
遺産分割協議の調停委員は、相続財産の調査や、法律上相続人となる人の要件、特別受益の有無・立証方法などについて高度な法律知識が必要であるため、通常の実務では、弁護士が一人は含まれています。
4. 遺産分割調停はどうやったら、言いたいことをきちんと言って、進められるか?
遺産分割調停や遺産分割審判が思うように進まないと、最終的に思いもかけない不利益をうけるかもしれません。というのも、調停がまとまらないと審判で最終的な決定は裁判官がしますが調停で出した資料や作成した中間調書が判断資料になるからです。
その流れは以下のようになります。
遺産分割調停を有意義に進めて、納得できる結果にするため、どんな進め方がよいのかご説明します。
4-1.争点を理解する
まずは、どういうところが相続人間で争いになっているのかポイントを理解します。
相続財産の範囲なのか、特別受益があるかどうかなのか、寄与分があるかなのか、どうやって分けるのがよいのかなのか、不動産や会社の株式の価値なのか・・・いろいろな問題があるかと思いますが、その争点ごとに考えが対立していることを理解します。
4-2.主張すべきことは明確に書面で主張する
争点ごとに、自分の主張を明確に書面で伝えることが、自分の相続遺産を確保するために重要です。また、他の人の意見を聞いて折り合いがつけられるところがあるなら譲歩するのも重要です。それが、遺産分割調停を成立させるカギともなります。
各当事者が自分の主張を書面で明確に伝えることによって、調停委員会は相続人の妥協点を探ることもでき、必要資料を示唆することもできます。後で感情的にしこりになるからと明確な主張をしないと後で不利な結果となり、納得できないことになりかねません。また、後で資料を出せばよいと思っていると意外に審判に早く進んでしまうこともあります。
4-3.円満解決できるかを、検討する
遺産分割調停は話し合いの場ですから、すべての当事者が、自分の主張を通したらまとまりません。譲れる点と譲れない点を明確にすることが大切ですが、そのときそもそも審判になったら自分の主張が通るのかを考える必要があります。相手の寄与分を否定していてもそれなりの証拠があるなら一定金額を認めてしまうほうが、感情的しこりも残りにくいです。
そういった場合重要なのは、過去の審判例を理解することですので、そういうアドバイスをくれる弁護士を立てるのが良いと思います。
調停委員は、誰がどの相続財産をどうして欲しがっているのかも知りたがるので希望を明確に理由とともに調停委員に伝えることも大切です。
4-4. 遺産分割調停の調停委員会への説明を、迅速にきちんとすること
調停がまとまらないと審判になりますが、多くの場合、調停委員会に属していた裁判官が審判を出しますし、調停での主張はすべて審判の資料になります。ですから、自分の主張には合理性があるということを示して、遅滞なく誠実な進め方をして、誠実な相続人であるという心証をもってもらいましょう。
その場合、証拠がないにしても、たとえば特別受益の主張があるなら、その理由を示して主張をしっかりするなど、単に譲歩するのではなく事実は事実と主張することも大事です。経緯は書面にしていくのがよいので、弁護士のサポートを受けて陳述書にするのがよいでしょう。嘘や隠し事をせずに、誠実に相続の問題を法にしたがって誠実に解決したいという姿勢をみせましょう。調停委員から受けた質問には、記憶があいまいならよく考えるべきなので、その場では受け答えしないで後でしっかりと書面で回答をするのもよいでしょう。弁護士のアドバイスに従いましょう。
主張の変遷というのですが、大事なことを後で訂正すると貴方の信頼性の低いものと評価されることもあります。また、証拠は、相手がもっているような場合もありますから、それを出すように書面で依頼をすることも重要です。また、調査嘱託という制度で遺産となる財産を明らかにする方法もあるので、弁護士と相談しましょう。
5.遺産分割調停の終わり方
遺産分割調停の期日では争点を整理していきますが、相続人の意見が一致したら、調停がまとまり、成立します。そうしたら事件は終わって、遺産分割調停の成立調書をつくります。
1つの部屋に相続人全員が集まって、裁判官がその調書にする合意内容を読んで確認します。それで間違いがなければ、その合意内容に従って最終の調停調書が作成され、後日に自宅に送られてきます。これは判決と同じ効果をもっています。調停調書によって、預金を払戻したり、有価証券や不動産の名義変更ができます。誰かがお金を払うという内容であれば、期限に払わない場合には、の強制執行もでき遅延損害金をとることもできます。
6. 遺産分割調停がまとまらないとき
6-1. 遺産分割調停の不成立・取下げ
調停には、相続人を強制的に出席させることはできないので、相続人が調停を欠席すると、調停が不成立となります。そして、審判に移行します。
このとき、話し合いができないからと調停を取下げてしまうことはなるべくやめましょう。そうすると調停はなかったことになって遺産分割の問題は解決しません。
また、裁判官は当事者の主張から職権で「調停に代わる審判」という審判を出すこともあります。これは欠席している人から書面がだされていて意見がわかっているようなとき、異議が出ない可能性が高いような場合に用いられる方法です。
6-2. 調停不成立から、遺産分割審判への移行
遺産分割調停が不成立になると機械的に審判という段階に移ります。遺産分割審判事件の担当部、審判の期日が伝えられます。事件番号は新たになりますが、出してきた資料などは引きつがれます。調停が不成立になった場合は、当然に審判手続きに移行するので、ここではもう話し合いはできず判断を待つしかありません。そして指定された審判期日に家庭裁判所に出頭し、新たな主張をだしたり資料を出したりしますが、これまでに出した資料で十分ということが多いです。
7.遺産分割審判の流れ・進行
7-1. 審判は対立構造
遺産分割審判は、話し合いの手続きではなく、訴訟のように双方がそれぞれ自分の主張と立証をする場であり対立的な手続きです。
審判の期日は裁判所が指定し、自分の主張を法律的にまとめた書面がこれまでに出されているのでそれに追加があればそれを主張書面としてだし、証明するための証拠も追加があれば提出します。
通常は、調停ですでにそういったものは出ていることが多いです。相手の主張に反論をだしたい場合には、反論の書面も出しますが、通常は調停でだしておきます。
東京では特に、調停時から争点ごとに主張をまとめて出すように指示があるので、審判に移行したあとに長く期日が続くことはあまりありません。鑑定などが必要となるとその結果を待っている期間がかかるかもしれませんが、それも調停の時に済ませることが多いです。というのもそういった資料がすべて出てからのほうがそれぞれが譲歩しやすいからです。
弁護士は、争点でのそれぞれの主張や証拠をみて、どう譲歩するべきかのアドバイスをするので、証拠や鑑定結果が出ていないときには、合理的なアドバイスが難しいということもあります。
7-2. 審判に移行してからの和解
審判中に裁判官が証拠をよく見て、何らかの調停案の提案をすることもあり、そういう場合には全員が納得できれば、審判の途中に付調停という手続きをして、調停に戻して調停調書を作成して遺産分割事件が円満に終わることもあります。
8.遺産分割審判への不服申し立てと効果
遺産分割審判で、審判官(裁判官)が審判を出すと書面で審判書が送達されます。
法定相続分によって遺産が分割されることから、不動産を売却しなければ分割できなければ競売を命じられることもあるので、注意しましょう。
審判書の送達後2週間で審判内容が確定しますが、不服であれば即時抗告ができます。だれも即時抗告をしないと審判が確定します。即時抗告は、高等裁判所宛の即時抗告申立書をもとの家庭裁判所に提出して行いますが、期限があります。原審の審判書を受け取ってから14日以内となっていますので忘れないで期限内に抗告状を出しましょう。
高等裁判所は、抗告理由書をみて再度検討し、変更が必要と考えたら、自ら判断するか、家庭裁判所に差し戻しをします。もとの判断が正しいと考え変更が不要と考えると棄却されます。棄却の理由は決定書に、記載されます。
その審判書に従って、相続不動産の登記、名義書き換え、預金の払い戻しなどの相続手続きを進められます。確定証明書が必要になるので、家庭裁判所に申請して発行してもらいましょう。審判書は、判決と同様の効果があり、債務名義でもあるので、執行をすることが可能です。調停と同様に、期限に支払いがされなければ、財産を差し押さえなどができます。
9. 遺産分割調停と審判での、専門弁護士の機能・役割
遺産分割調停では、弁護士が重要な主張を書面にまとめ、証拠を選んで整理して出してくれます。素人には何が証拠になるかわからないので、話し合いができていない場合、専門弁護士をたてるほうが有利に進めるでしょう。
また、機械的に遺産分割審判に移行するので、そこでは素人はルールすらわからないため、右往左往することになるかと思われます。弁護士が相手についていると何を言っているのかわからないものの、裁判官が片方に助け舟を出すということもあまり考えられません。必要な証拠を迅速に提出し、適切に主張をして反論をしてくれる弁護士がいたほうが安心して、調停を成立させたり、審判結果を待つことができるでしょう。
迷っているなら、相続問題に強い弁護士にまずは、相談してみることがよいでしょう。