遺産を相続する場合、その相続が発生(亡くなった方の死亡時が相続開始となります。)してから一定の期限内に行う必要がある手続きがあります。
法定相続人の確定など絶対に必要なものから、相続放棄など状況に応じて必要になる手続きまで、それぞれの期限があるので気をつけましょう。
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1. 相続発生後、しないといけない手続があること
被相続人の法定相続人となり、遺産を相続する立場になったときには相続するための手続きがいくつか必要になります。被相続人と生前親しい関係にあった場合、あるいは相続・分割を巡って法定相続人同士で意見の一致が見られない場合など、なかなか手続きをスムーズに進められないものです。ただ手続きには期限があるため、親しい人を失って精神的なショックを受けている場合でも「やるべきことはしっかりやる」ことが求められます。
そうなると「ひとつひとつの手続きはいつまでにやればいいのか?」ですが、これには短期間の間に行う必要があるものと、ある程度時間の余裕がある環境で準備を進めていくことができるものがあります。ですからそれぞれの手続の期限に応じて優先順位を設定し、必要な準備や計画を行っていくことも重要になってくるでしょう。
2. 死亡届
まず、基本中の基本となるのが、被相続人の死亡届を出すことです。これは相続のための手続きというよりも親族(相続人)の義務といえるものですが、これが7日以内。必ず忘れずに提出するようにしましょう。この死亡届のポイントとしては死亡を確認する医師の診断書が必要になること、そして死亡の確認から24時間が経過した以降に火葬の準備を行うことです。
この死亡届をめぐる手続きは、遺産の相続に直接影響することはありませんが、適切な形で行わない、他人に「丸投げ」してしまうようなことをしてしまうといざ遺産相続の際に相続人同士の間で意見の相違が出たときに「亡くなった時の手続きもろくにしなかったくせに遺産だけしっかりもらおうとしているのか」などと批判されてしまう可能性も出てくるので、気をつけましょう。なお、原則として死亡届は親族であれば誰でも可能です。基本的には故人ともっとも近い立場にいた人が行うことになるでしょう。
3. 死亡届を出した後、相続の手続きと具体的な期限について
そして、ここからが本格的な遺産相続と直接関係がある手続き・準備です。最初のステップにして最重要なポイントとなるのが「遺言書の確認」と「法定相続人の確定」そして「遺産の確定」です。これらは被相続人がなくなって1ヶ月くらい経過した頃からはじめられるのが原則です。とくに期限というものはありませんが、後述するように相続放棄などの問題も出てくるのでやはり1~3ヶ月の間に行うのがよいでしょう。
4. 遺言の存在
まず遺言書があるかどうか、確認しましょう。あれば、その内容に基づいて遺産分割が行われることになります。もしない場合、あるいは後述するように、遺言書の内容に問題や異議申し立てがされた場合、法定相続人で話し合いの場が持たれ、遺産分割協議書の作成を行った上での分割相続が行われることになることもあります。もっとも、遺言があれば、それに従って遺産が分けられるのが原則です。
5. 遺言がない場合にするべきこと
そして、誰がなにを相続するのかは、遺言書がなかった場合に決めなければなりません。そこで、遺産分割協議書を作成することになります。これは、法定相続人全員の合意と署名・捺印があってはじめて法的効力をもたせることができます。ですから、もし一人でも法定相続人の資格を持つ人を省いた状態で話し合いが持たれ、協議書を作成してもその参加しなかった人が異議申し立てをして無効になってしまいますし、不動産の登記などもそのような協議書ではできません。預金の払い戻しや株式の名義移転もできません。被相続人の戸籍謄本などでしっかりと法定相続人を理解しておきましょう。前婚の子がいるようなこともありますし、婚外の子がいることもあります。家族状態によっては、確定にかなり時間がかかることもあるので、注意したいところです。
そして、相続人がどんな遺産を残したのか、確定したうえ、遺産分割協議をすることになります。あるいは、遺言書がある場合でも、そこに記載されていない遺産が発覚した場合にはその処遇を巡って相続人同士で協議を行う必要も出てきます。
遺産が多い場合や財産状況によっては確認にかなり時間と手間がかかることもあるのでできるだけ早く行うようにしましょう。この段階で弁護士など専門家に依頼して調査や協議を手伝ってもらうことが多いようです。
6. 遺産をわけるとき気をつけるべき債務(ローン)
遺産相続というとお金や不動産などを相続できるというプラスのイメージが強いものですが、実際にはマイナスの遺産、つまり借金やローンまで相続しなければならないケースも出てきます。遺産を確定した段階で、残した財産よりも抱えた負債のほうが多い、つまり収支がマイナスになるケースも少なくありません。そうなると相続人にとって遺産相続は、厄介な重荷であり、相続放棄が必要です。
そんなとき、相続放棄がよいのか、限定承認がよいのかという選択を考えることも、可能です。これは相続開始、つまり相続の事実があることが判明した段階から3ヶ月以内に行う必要があります。3ヶ月を過ぎてしまうと、被相続人の借金をまるまる抱え込んで、相続しなければならなくなってしまいかねないので、期限には、気をつけましょう。
7. 相続放棄と限定承認
被相続人の遺産の収支がマイナスだったときに選択できる、相続放棄と限定承認の違いも確認しておきましょう。
相続放棄は、その名前の通り「遺産すべての相続を放棄する」方法です。何もかも放棄して何も受け取らないわけです。プラスの財産よりもマイナスの財産が多い場合、相続放棄を選択すれば、一切の財産も義務を受け継がなくなります。相続放棄を受けるためには、亡くなったことを知ったときから3ヵ月以内に、相続放棄をすべきか否かを家庭裁判所へ伝えなければなりません。亡くなった人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で、「相続放棄の申述」という手続をすることになりますが必要です。相続放棄が認められた場合、その相続人は初めから相続人ではなかったとみなされますが、次の順番の方が相続人となります。
一方、限定承認は、相続によって得たプラスの財産を限度として、マイナスの財産も引き継ぐことをいいます。まず、プラスの財産を確定させ、マイナスの財産のほうが少なければ、手元に遺産が残ることになります。マイナスの財産のほうが多い場合、プラスの財産を限度としてマイナスの財産を相続するので、プラスマイナスゼロになる、というわけでリスクがありません。
被相続人の負債が大きいのかわからないようなときに、これは利用します。
限定承認は、被相続人にどれほど多額の借入金があっても、相続人の財産で弁済するという責任を負うことがないので安心です。ですから、相続人にとって有用なのですが、相続人全員の手続きが必要ですし、財産目録の作成や精算手続きが面倒です。弁護士に依頼して手続を進めるのが通常です。期限内(3ヵ月以内)に限定承認の申述を行う必要がありますので、マイナスの財産を含めた遺産の調査について、できるだけそれまでにしっかりと行うことが大切です。あまり普段おつきあいがなかった兄弟姉妹とか従兄弟などの相続では、この選択がありえます。
当事務所では手続のお手伝いをしていますので、ご相談ください。
8. 相続後の手続きの期限について
遺産分割協議書を作成したら、遺産相続はほぼ完了です。あとは相続した後の手続きの期限に気をつけましょう。人によってはこちらの方に頭を悩ませられる可能性もあるからです。
その筆頭が、相続税の申告です。これは相続の手続きの開始から10ヶ月以内に行う必要があります。問題なのは相続税の納税額をどう捻出することができるかです。例えば、数千万円の不動産のみを相続した場合、その価値分の相続税を現金で納税することになりますから、10ヶ月以内に調達できるかという問題がでてくるのです。遺産分割協議を行う際にはこの期限についても意識したうえで話し合っていくことも欠かせないでしょう。「もっとも価値が高い不動産を相続できた!」と喜んでいるといざ相続税の申告が必要になったときに納税額の金額に震え上がる、といったことになりかねません。さらに、不動産を相続した場合は相続登記を10ヶ月以内に行う必要もあるので忘れないようにしましょう。
なお、もし遺産分割において問題があり、一部の法定相続人に認められた最低限の取り分(遺留分といいます)を相続できなかった場合には1年以内に「遺留分侵害額請求」の手続きを行うことで取り戻すことも可能です。相続時に必ず発生する問題というわけではないので必ずしも覚えておく必要はありませんが、頭の片隅に入れておくとよいかもれしません。
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