離婚をする際、ほとんどすべての夫婦にお金の問題が発生します。財産分与はもちろんのこと、離婚時の理由によっては慰謝料を請求されることもあります。問題を大きくしないためにも、正しい知識を持ち、弁護士に相談することが大切です。
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1. 離婚するときに発生するお金の問題とは
離婚をするときには様々な手続きが発生しますが、トラブルになりやすいのがお金の問題と親権です。
お金の問題の中で、もめるのは慰謝料と財産分与です。財産分与とは、夫婦が結婚生活をしていた期間に貯めたお互いの共有の財産を、離婚時に分ける作業のことです。財産とはお金だけでなく、不動産ちや株式なども含まれるため、離婚時にはそういった資産全体を把握する必要があります。
また、慰謝料はすべての夫婦に当てはまるものではありませんが、大きなトラブルに繋がりやすいものです。慰謝料はパートナーのどちらかが浮気などの不貞行為やDVなどを行い、それが原因で離婚する場合に発生します。
2. 財産分与の種類
財産分与は、大きく分けると3種類あります。
1つ目は、清算的財産分与です。一般的に離婚時の財産分与と言えば、この清算的財産分与のことを言っていると考えても問題ありません。前述の通り、結婚生活のなかで夫婦で築き上げた共有の財産を、両者の「貢献の度合い」に応じてお互いに分け合うという方法です。貢献の度合いとなっているのは、一昔前は専業主婦の方が多く、家庭の収入を主に夫が担っていたということから、妻側の財産分与が2~3割ぐらいとされていた時期もあったからです。しかし、現在は、財産分与も2分の1ずつが主流となってきています。
2つ目は扶養的財産分与です。扶養的財産分与は、離婚後、元パートナーの収入が少なかったり、結婚期間中に専業主婦もしくは主夫だったりした場合などに、収入的な面で生活が苦しくなると見込まれる、その相手を扶養目的で行う財産分与です。具体的には、夫婦間で毎月5万円など、一定の金額を生活費として定期的に支払う取り決めを行います。
そして、3つ目が慰謝料的財産分与です。慰謝料的財産分与とは、DVや不倫などの不貞行為でパートナーが離婚の原因を作ったとき、その原因を作った方が慰謝料の意味合いを込めて行う財産分与です。本来、財産分与と慰謝料請求は別物ですが、この2つを区別せずにまとめて追加して行う場合に、慰謝料的財産分与と呼ばれます。
3. 財産分与の対象となるものとならないものについて
前述の通り、夫婦が結婚生活を営んできた期間に築き上げた財産は、たとえ名義人が夫のものでも妻のものでも、共有財産として扱われ、そのすべてが財産分与の対象となります。具体的な例を挙げると、現金(これは互いの預貯金が含まれます)、家やマンションなどの不動産や株式、自動車、そして年金や積立型の生命保険などもその対象となります。将来もらえるはずの退職金等も財産分与の対象になります。これらのプラスとなる財産の他に、借金やローンなどのマイナスの財産も同様に、分与の対象となります。ただし、個人的な目的のために作った借金やローンはその対象とはなりません。
それでは、財産分与の対象とはならないものは何かというと、財産分与の対象外となるものは特有財産と呼ばれるものです。夫婦間で分け合わなければならない財産の対象からは除外されるもので、具体的には、独身時代に自身で貯めた貯金や、自分自身の両親から相続した遺産、結婚時にどちらかが持参した家財、そして別居時してから築いた財産です。
どういうことかというと、例えば、結婚をする前に夫が自分の財産で家を建てた場合、結婚後そこで一緒に暮らしていたとしても、結婚前に建てられたものなので、その家は夫の特有財産であり、財産分与の対象にはなりません。別居してから買った有価証券も対象ではないのです。このように、財産分与の対象を見分けるポイントは、別居時点で、結婚生活中に築いた財産がどのくらいあるかどうかということになります。
4. 離婚をする際に発生する慰謝料とは
離婚時に発生する慰謝料とは、離婚をすることによってパートナーの片方に発生する精神的負担や苦痛に対し、支払われるお金のことを指します。つまり、不法行為で辛い思いをさせてしまったことを慰謝するために、代償としてお金を支払うということです。
この慰謝料はすべての夫婦の離婚時に発生するものではなく、パートナーのどちらかが違法な行動で離婚の原因を作った場合にのみ支払われるものです。そのため、一般的な離婚理由として多数を占める、価値観の相違や性格の不一致などが原因の場合は、双方が相手に慰謝料を請求することはできません。
慰謝料が発生する離婚の原因とは、パートナーの不貞行為や暴力、そして婚姻生活を維持するための不協力などが挙げられます。暴力や婚姻生活への不協力はパートナーに対して慰謝料を請求することができますが、不貞行為の場合は、不貞行為の相手、つまり浮気相手に慰謝料を請求できるようになります。浮気相手に慰謝料を請求した場合はその金額が満額であれば、パートナーへの慰謝料請求はできなくなるので、注意が必要です。
ただし、浮気相手が十分な慰謝料を支払わなかった場合足りない分をパートナーに請求することができます。また、パートナーの不貞行為が発覚して離婚に至った場合であっても、それ以前から性格の不一致などが原因で夫婦関係が破綻していた場合や、婚姻の事実を浮気相手が知らなかった場合は、慰謝料請求が認められないこともあります。訴訟に発展するとこの破綻がいつから起きていたのかが争点になりやすいです。
5. 慰謝料の相場について
慰謝料の金額は、離婚することになった原因や、原因となったパートナーの経済力、そして結婚生活の長さなど、様々な事情を鑑みた上で決定します。傾向としては、離婚の原因となった行為が悪質な場合や、結婚生活の期間が長い場合、そしてパートナーの収入が多い場合などで、慰謝料の金額が大きくなるケースが多いようです。
慰謝料の請求は通常に支払いと求めても払ってもらえない場合、地方裁判所での裁判を通して請求しますが、ここで重要になってくるのは、自分が精神的に損失を受けたという行為の証拠がきちんと揃っているかどうかです。たとえ本当に傷ついていたとしても、その証拠がない限り、裁判で勝つことは難しくなります。感情論ではどうにもならないため、裁判所で有効な証拠やきちんとした主張の組み立てが必要になってくるのです。どの程度の証拠があるかは、専門の弁護士に見てもらうのがよいでしょう。
6. 財産分与や慰謝料の相談は弁護士へ
離婚時に発生する財産分与や慰謝料の問題は、当事者同士だけで話し合いを行うと、こじれてしまうことも少なくありません。場合によっては怪我をさせられたり、大声を出し合ってDV事案として警察が介入することもあります。よって、冷静な話し合いが無理なら、専門的な知識を有していて冷静な判断ができる弁護士の介入が必要になってきます。この介入は他の専門家には許されていません。弁護士は、財産分与や慰謝料に関する知識が豊富であり、初歩的な相談ごとから裁判に至るまで、離婚時に発生する問題をサポートしてくれる専門家です。
特に、慰謝料を請求する際は、証拠集めや裁判時に主張する文言を自分1人の力でなんとかするには相当な労力がかかります。しかし、弁護士に相談すればそういった作業の相談にも乗ってくれるため、精神的負担がかなり軽くなるでしょう。
パートナーの不貞行為や暴力などで傷ついている方は、精神的に不安的な状態になりやすく、正しい判断ができなくなり、相手が悪いにもかかわらず、不利な条件で離婚が成立してしまうことも少なくありません。そういったことを防ぐためにも、離婚をする際は弁護士への相談をすることをおすすめします。