離婚をする際には多くの場合、何らかの財産分与がなされます。スムーズに金額・方法が決まれば問題ありませんが、財産分与は多くの場合において、夫婦の双方が同意するのに時間がかかります。特に富裕層の離婚ではそうなりますし、熟年離婚では財産が多いのでそうなります。そのため、有利な財産分与を早く成立させるようにするには、早めに専門弁護士に相談しましょう。本記事では早めの解決に役立つ情報を専門弁護士がお伝えします。
Contents
1. 離婚時の財産分与
残念ながら現在の日本では三組のカップルの内の一組は離婚してしまうようです。そのため、離婚は誰にでも起り得る事柄ということがいえます。離婚をする際には覚えておかなければ、後々後悔することもたくさんあります。その内の一つに財産分与という制度・仕組みがあります。
財産分与とは、離婚をする際に夫婦で共有している財産を公平に分け合う制度です。しかし、公平に分け合うとは必ずしも同じ金額が手に入るということではありません。財産分与はそれぞれが貢献した割合に応じて決められます。基本的には夫婦の貢献度は平等で同じであると見なされますので、財産は半分ずつ分けられます。しかし、いろいろな状況下では、もらえる金額が変わってくる、金額が合意できないのが事実です。例えば、夫の収入が特殊技能を基にしたもので通常よりもかなり多い場合などです。他にも、マイナスの財産(借金やローンなど)も考慮に入れられますので、そうした要素を全て踏まえた上で財産分与の割合が決められます。
離婚の原因となった事柄が、例えば夫の不倫であった場合、妻は、自分は被害者なので財産を平等に分け合うのは納得いかないと思うかもしれません。夫婦が話し合って納得できる形で財産分与の割合が決まれば問題ありませんが、基本的に財産分与はどちらかが被害者であるということは考慮に入れられません。そのような場合には別途、慰謝料として金銭的な賠償を請求することになります。
このように、財産分与は法律で定められている制度であり、裁判実務もいろいろあって複雑な内容になっているため、離婚を考えているならば事前に弁護士に相談して、理解して行動することが大切です。勢いで離婚してしまうと、本来は手に入るはずだった財産を得そこなってしまうかもしれず、また、多くを払いすぎるかもしれません。それは新生活を始める上でも大きな影響を及ぼすでしょう。
2. 財産分与の種類
2-1. 清算的財産分与
財産分与の基本となるものが清算的財産分与です。これは、結婚した夫婦が結婚後に共に築いてきた財産を平等に分け合うというものです。清算的財産分与では、お互いの貯金なども平等に分け合うことになります。貯金の名義がたとえ異なっているとしても、結婚後の財産は共有のものとみなされます。
まとめ:
名義は夫でも妻でも関係がない!
婚姻中に形成されたものをわけます。
清算的財産分与は離婚の原因となった事柄などは考慮に入れられず、夫婦の財産を公平に分け合うというものなので、財産を分配する割合に納得がいかないというケースがよく見られます。離婚の際にもめてしまう原因の一つがこの清算的財産分与の取り決めです。そのため、この仕組みをきちんと理解しておくことはスムーズに離婚の手続きを行っていく上で非常に大切です。
2-2. 扶養的財産分与
扶養的財産分与とは、離婚をした際にどちらかの側が生活するのが困難だと認められた時に与えられる財産のことです。通常は生活するのが困難な配偶者に対して、一定の期間にわたり一定の金額を支払うことで合意されます。
扶養的財産分与は夫婦のどちらかが仕事をしていない専業主婦(主夫)だった場合や病気であった場合などに例外的に認められます。そうした事情を持つ人は、離婚した後にすぐに仕事について生計を立てることが難しいため、離婚した後も元配偶者を経済的に支えるために一定の期間生活費が賄われることを意図したもとなっています。そのため、清算的財産分与で十分な額の財産を分け合った場合には扶養的財産分与は、認められません。清算的財産分与で得た財産により、離婚後の生活は、保障されているからです。また、婚姻期間が短いような場合も認められにくく、判決ではほとんど認められていませんが、調停離婚では合意の上、認められることはあります。
2-3. 慰謝料的財産分与
清算的財産分与ではどちらに離婚の原因となった事柄があるか、といったことは考慮されません。そのため、被害者であると感じている側は財産分与の割合に納得がいかないことがあります。そのようなケースで適用できるのが慰謝料的財産分与です。財産分与とは別に、被害者は加害者に対して慰謝料を請求することができますが、慰謝料を請求する代わりに財産分与の範疇で慰謝料分を請求するというのが慰謝料的財産分与の考え方です。
例えば、夫婦のどちらかが不倫をして離婚に至った場合、不倫された側は被害者であると思うかもしれません。清算的財産分与で得られる財産に納得がいかない場合には慰謝料を請求することができます。慰謝料は財産分与とは別に請求することもできますが、夫婦の共有の財産が十分ある場合には「慰謝料分を含んで」財産分与を行うということができます。これは清算的財産分与とは異なる財産分与となるので、分けられて考えられています。
もっとも、慰謝料をすでに別訴訟などでもらっているような場合には、重ねて、同じ事象を対象にして、慰謝料的財産分与が認められることはないでしょう。すでにもらった慰謝料は浮気に関するもので、さらに別に暴力があったような場合には、さらに慰謝料請求が可能ですので、慰謝料的財産分与というものがありえることになります。
3. 財産分与の対象である共有財産に含まれるもの
財産分与で分け合う夫婦の共有の財産には、結婚後に夫婦で共に築いた財産が含まれます。これには、それぞれの名義の預貯金、現金、不動産、保険の解約金、退職金(将来もらうものでも)、株などの有価証券、車や家具などの家財などが含まれます。共有の財産は「居を共にしてから築いた財産」のことを指すため、籍を入れた日付から離婚までの期間にそれぞれが築いた財産を合算したものではないため注意が必要です。
例えば、結婚前から同棲していた場合や離婚前に別居をしていた場合には「同居した期間」が、異なります。そのため、どの時期からどの時期までの財産が夫婦の共有の財産になるのかをきちんと確認しておくことが必要です。
基本的に結婚前にそれぞれが所有していた財産は夫婦の共有の財産には含まれません。そのため、結婚してすぐに離婚をしたとしても、相手の財産が手に入るわけではありません。しかし、結婚したことによって相手のもともとの財産がさらに増加した場合などは、そのことに対する夫婦それぞれの貢献がある場合には、その貢献度が考えられて財産分与の対象となり得ます。
ちなみに借金などのいわばマイナス財産もまた財産分与に含まれます。夫婦で行った借金や住宅の購入のために組んだローンなども平等に分け合うことになります。住宅ローンなどの場合は離婚した後にどちらがその家に住み続けるのかなどが考慮され、住まない方が一定の金額を支払うというように取り決められることが多いようです。財産分与されるマイナスの財産は夫婦で共に行った借金だけが対象になります。しかし、ギャンブルなどの目的のために夫婦のどちらかが一方的に作った借金に関しては財産分与の対象とはなりません。
4. 財産分与の注意点
まず、別居していないと共有財産が増えてしまうということが、普通の方にはわかっていないので気を付けましょう。子どものために同居を10年継続すると、その継続した時期に増えた預貯金とか、ローンの返済額が共有財産となり、財産分与の対象になります。別居しないと、資産はどんどん増えていき、分けるものも増えてしまうのです。
また、ローン返済金額が対象となることもなかなかわかりにくい点なので、覚えておきましょう。住宅ローンが婚姻時5000万円であったが、結婚しているときに返済して同居をやめたときには2800万円になっていたら、2200万円は財産形成であるとされるので、その半分を分与することになります。反対に、不動産の名義人ではない方からしたら、それはもらえる金額になるのです。
財産分与を考える際、さらに重要なことは、離婚後2年以内に行わなければならないということです(2026年からは改正法により5年以内になります)。
財産の分与に関しては離婚する夫婦が直接話し合って決めることができれば問題ありませんが、どうしても合意できないような場合には家庭裁判所で争わなければなりません。しかし、財産分与を家庭裁判所に審議してもらうためには離婚後、この期限内に申請をしなければなりません。
そのため、財産分与に関する話し合い、そして合意は離婚をする前にきちんとしておくことが重要です。離婚後にそのような話し合いをしようとしても、相手と連絡を取ること自体が難しくなってしまって、離婚が成立しているゆえに、真剣に話し合いに応じてもらえないということが起こるからです。
そのような状況になったなら、財産分与に関してお互いが納得できる形になるのは難しいでしょう。さらに一定期間が経過してしまった場合には裁判にも持ち込むことができなくなってしまうため、本来なら得ることができる財産を失ってしまうという結果にもなりかねません。
離婚を考えている場合、離婚して財産分与をしていない場合には早めに弁護士に相談するようにしましょう。当事務所では、複雑な財産分与についての事件を得意としていますので、調査嘱託やその他の立証方法で依頼者に正当な結果をもたらしています。離婚しているが財産分与をしていない方や、子どもの親権問題とともに財産分与についてきいておきたい方は、無料相談ができますので、お気軽にご相談ください。