ハーグ条約

ハーグ条約では、DV被害者に対する配慮や支援はあるのでしょうか?

外務省ハーグ条約室では、ハーグ条約に関連して、専門家を職員として採用しており、DV被害者の方に対する適切な対応をしています。当事者の希望に応じて、専門家が対応したり、国内のDV被害者支援団体を紹介したりします。また、在外公館においては、DV等の被害について、御相談に応じた支援の紹介等を行っています。

ただし、ハーグ条約の基本的な考え方は、親権や監護権など子どもに関することは、子どもが生活していた国(常居所地国といいます)の裁判所で決めるべきであるというものです。よって、子どもが育ってきた場所から違う国へと連れてきた親はたとえDV被害者であっても、まずは元の国に子どもを返して、その国で親権や監護権の裁判をするべきであるということなのです。

これによると、親が自分に有利な法律がある国を選んで国をまたいで移動することが防げるからという政策的理由がハーグ条約にはあります。そして、原則として、子どもの連れ去り・留置の時点から1年以内で返還が申し立てられると裁判所は返還を命令します。

ハーグ条約の具体的な手続は、話し合いで解決しなければ、日本でハーグ条約の裁判を残された親が原告となってして、連れ去られた先の国の裁判所が、つれてきた親に対して子の返還を命じるというものです。それでも、連れ去った親が返さない場合は、残された親が、強制執行の手続きを裁判所に申し立てて、強制執行が行われて子が国に戻されます。

しかし、いくつかの例外がありDVの場合には、返還命令がだされないという例外が認められることがありえます。つまり、A国の父親が子どもを返せと言っても、日本人の母親が子についてのDV被害の主張をすることで、返還命令を回避できる場合はあります。

しかし、そのためにはハーグ条約では、「返還により子が心身に害悪を受け、または耐え難い状況に置かれる重大な危険がある場合」である場合のみ返還を回避できることから、連れ去った親にとってはこれを立証しなければなりません。それは非常に難しいのです。重大な危険というのは、子の福祉からその連れ去った親に親権を渡すのが好ましくないというような程度では不足ですので、もっと危険が深刻でなければなりません。連れ去った親が母であり収入がなく、もとの国に戻ってもシェルターに行くしかない、裁判手続きをするにも弁護士を見つけることもできないし費用が払えないというような「親の事情」は主張できません。

よって、子の返還を命じられた場合、子とともにそのDV被害者の親が元の国に戻るのであれば、外務省の支援を受けて、元の国のDV保護施策をよく理解してその国の法的保護を受けていくことになります。

弁護士 松野 絵里子

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